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離れて住む友へ

一昨日の暖かさから一転、朝から雨模様の東京である。気温が下がる頃にはまた雪になるとかならないとか。先日の大雪には一瞬アガったが、子供の頃のようにずっと喜んではいられない。それでも冬生まれの私は雪は好きであるが、雨は昔からずっと苦手だ。

雨が降ると思い出す人がいる。
昔アルバイト先で一緒に働いていたタイ人の女の子だ。
女の子といっても私よりも年上だったと思う。15年程前に出会ったときには彼女は留学生であったのと、小柄な背丈からどうも“女の子”という印象がある。本名はとても長くて日本人には難しいからと、私たちはニックネームで呼んでいた。

当時、外資系のレストランが日本に進出するというので、オープニングスタッフとして私はアルバイトとして入社した。少し経ってから彼女も入ってきた。そのレストランでは外国人スタッフも沢山いて、新店舗と言うことですったもんだありながらも皆仲良く、楽しく働いていた。明るくて真面目でユーモアたっぷりな彼女ともすぐに仲良くなった。

確か雑談の中で私が雨が嫌いだ、というような事を言ったのだと思う。すると次に雨が降った日の朝に彼女からメールが届いた。

「おはよう、kana、今日は雨ですね。
kanaは雨が嫌いだからがっかりしているかもしれないけど、大丈夫、kanaなら良い日にできますよ。今日も1日頑張りましょう!」

日本人同士ではあまりしないメールの内容に少し驚きつつも、彼女の優しさに感動し、励まされたのである。私は更に彼女のことが好きになった。

それから雨が降るたびにこのような内容のメールを送ってくれた。しかし、それは長くは続かなかった。彼女は留学生。卒業と共に国へ帰ってしまったのだ。今ほど簡単に外国に住む友人と連絡が取れる時代ではなかった。涙の別れをしたあとも、何度か彼女はカードや誕生日プレゼントを送ってくれた。しかし住所の解読が難しく私から送ることが出来なかった。

見る専門のSNSでかろうじて繋がってはいるが、もうしばらく連絡はとっていない。彼女の元気そうな笑顔の写真があげられるのを見ては一方的に安心したり元気を貰ったりしている。

行ってみたい国は、と聞かれれば彼女と出会ってから必ずタイと答えている。彼女が生まれ育った街へ行き、そしてまた彼女に会いたい。

雨が降ると彼女の事を思い出す。


明日誕生日のあなたへ
元気ですか?思えば私はあなたから与えて貰うばかりで何も返せていません。
今日は雨だけど、あなたを思い出して元気を貰っています。
Happy Birthday
そちらの天気はいかがですか?

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