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妄想軍事評論 「旧日本海軍 戦艦〈長門型・伊勢型・扶桑型〉=考察 近代化改装を考える 」 〜 杉岡宗春

『始めに』
 旧日本海軍は 《長門・陸奥・伊勢・日向・扶桑・山城、と金剛型4隻》この10隻の 旧式戦艦 を〈貴重〉な〈資材・予算・時間(労力)〉を投入して、数次に渡る=大・小の近代化改装を行なった。その事の是非を考察したい。
 軍縮条約で、新戦艦の建造が出来なくなったので−手持ちの戦艦を「アップデート(近代化改装)」するのは、一見 理に適っている様に思われるが−−。果たして、それが正解か? 史実通り−改装で能力アップする としても、軍縮条約の最短期限である「1936(昭和11年)12月31日」迄に改装を完了しなければ成らない=新たに、海軍工廠・造船所で「大型艦」を建造する為に。 ※条約を脱退しなければ=その限りでは無い。更に言えば、ロンドン軍縮条約を結ばなければ−昭和9年前後には=金剛型代替新戦艦が誕生していた。その結果は−−日本が建艦競争に負け、日米戦争が避けられた可能性が高い。日本と日本国民の為には、はたして=何れが正解か−−。
 ではロンドン軍縮条約締結(1930−昭和5年)の前提で、それを踏まえ−−−前ジュットランド(ユトランド)型=ユトランド沖海戦の戦訓で−水平・弾火薬庫防御の不備が指摘された−金剛型と扶桑型は、どうする?大規模改装が正解か−代替戦艦建造迄そのままで、新戦艦建造に合わせ−解体して資材に供する選択肢も有るが−−更に、長門・伊勢型 はどう改装するか?

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 金剛型は別稿で考察したので、
 《扶桑型戦艦》を。 
 まず 主砲換装 は、誰もが「夢想」するが=例えば−45口径35.6cm連装砲を、三連装砲に纏める・長門型と同じ−41cm連装 4基 8門 に換装等=実際にも行われなかった様に−−現実的では無い。それなら新造した方が 賢明だろう。で主砲は、仰角アップ等=史実通りに改装。他に、揚弾能力を向上させ−発射速度を高める、軽量徹甲弾使用で−初速を高める=等の改良も行うのが ベストだろう。
 次に 副砲。 史実は、仰角を(20度から)30度にアップしたのみだが−−①扶桑型の15.2cm砲を 伊勢型と同じ14cm砲 に換装。  軽量砲弾(装薬量は変えず)で 高初速化 する=900m/s以上に & 出来れば、発射速度も速める ②駆逐艦用の 50口径12.7cm砲 に換装=威力は低下するが、確実に 初速&発射速度を速められる。更に、単装砲では無く−砲塔ケースメイト等の改造が必要になるが「連装砲」とする改装を上策としたい。※舷側の副砲は、敵駆逐艦・魚雷艇・雷撃機 撃退専用と割り切る。
 ついで 機関。少しでも 高出力 の機関を搭載し、速力を高めたい(日本海軍は戦艦の標準速力を25ノットに設定していたようだが)。近未来の欧米列強の新型戦艦に負けない様に=改装の時点(昭和5~11年−1930~1936年)でも、近未来の戦艦の高速化は予測不可能では無いと考える。 で、扶桑型は、艦中央部の3・4番主砲塔が邪魔をして高出力機関を搭載しづらいが、駆逐艦用なら搭載可能だろう。その場合−特型駆逐艦用を2セット=ボイラー8基・蒸気タービン4基=10万馬力を搭載。これで「27ノット程度」は出せると考える。駆逐艦用機関の耐久性・信頼性に関しては、扶桑型(に限らず=旧式戦艦)の耐用年数を考えれば=15年程度−保てば充分−なので問題無しと考える。更に、思い切って−3・4番主砲塔を撤去(何方か1基撤去でも搭載可能か?)。大改装と同時期建造の−重巡洋艦妙高・高雄型の機関(13万馬力)を搭載すれば「29ノット程度」は可能で−金剛型に準じる「高速戦艦」と成る。砲塔撤去で空いたスペースに「航空艤装−カタパルト・水上機駐機台(格納庫)と高角砲(副砲)等の増備、駐機台下に駆逐艦用の旋回式魚雷発射管の装備も出来る」※主砲門減を補う−なら「50口径35.6cm砲を開発して搭載(砲弾は45口径用を流用)」という案も。
 船体防御(装甲)は、史実では=弾火薬庫・機関室の防御鋼板追加、バルジ等−水中防御改善等で=抜本的改善は成されなかった。旧式戦艦としての欠陥に抜本的対策を、手間・費用をかけて施すか−−「(主に)高速戦艦化+α だけに留める(僕はこれを推す)」か、思い切って=何もせず、新戦艦建造資材に(解体して)供する事も選択肢の1つ−とすべき。 
 次に《伊勢型戦艦》
 扶桑型同様−主砲換装は現実的では無いので「45口径35.6cm連装砲6基」はそのままで、改良は扶桑型同様。もし、やるとしたら「50口径長砲身化(これは扶桑型にも言える)」か扶桑型考察 同様「3・4番(両方or片方)砲塔撤去、大出力機関換装=高速戦艦化 及び 航空艤装等強化」。現実的には「揚弾能力向上、軽量砲弾による高初速化」が妥当。
 副砲は、元々14cm砲なので−史実どおり、仰角アップ。扶桑型考察同様−50口径12.7cm砲に改装も選択肢。
 船体は、史実同様=弾火薬庫始め、各部に防御甲鈑の追加・機関部側面に数層の縦壁とバルジに重油を充填して水中防御を強化。
 最後に《長門型戦艦》
 主砲は、そのままで「軽量砲弾で高初速化」が現実的。やるとしたら「長砲身−50口径41cm砲の開発装備」妄想するなら「ドイツ−戦艦ビスマルク級の38cm砲の導入」「45口径のまま、連装・三連装背負式に4基10門装備」=まッ独38cm砲装備は金がかかるので=現実的では無い。10門装備は、費用対効果で微妙か。
 副砲・高角砲は、扶桑・伊勢型考察と同様の改装で良いと考える。
 機関は、長門型は大出力機関の搭載スペースは有ったとする説も有るが−−無かった=を前提として−−長門型戦艦の大改装時期は=昭和9~11(1934~1936)年にかけてであるので、駆逐艦用機関の流用も−特型駆逐艦(吹雪型)最終型=ボイラーに空気予熱器を取付け−缶を4基から3基に減らしたタイプ=のモノが間に合う。これを2セット=10万馬力で「速力27ノット程度」この缶を8基使用すれば=妙高・高雄型重巡洋艦の13万馬力タービンを使え=「速力29ノット程度」が可能。※いやしくも−戦艦が、駆逐艦ごときの機関を「使えるか!」などと言う「間違ったプライド」を持つ事は「百害有って一利無し」当時の高級軍人官僚は言いそうだが−−。
 船体は、史実どおりに=弾火薬庫防御・水雷防御等の−若干の向上で良いだろう=元々の設計が良いので、本格的に手を加えるのなら−繰返しになるが−新型戦艦建造に注力する方が得策。ただ、もう一つ 手間はかかるが=僕は−長門型の「後檣を3番砲塔背後に移し、航空艤装(カタパルト・駐機場)を煙突との間に設置=つまり逆に」する事を勧める=主砲発射の爆風の影響を少なくする為に。

 最後に、第二次大戦(大東亜戦争)前に保有していた「10隻(現役9隻、練習艦1隻=比叡)」を 大改装(アップデート)するとしても「高速戦艦化を第一とし」それ以上(最新装備に更新、弾火薬庫・水雷等の防御力向上etc)は 予算・労力・期間 の許す限り行うとしても、あまり手間をかける事は得策とは思えない−−やはり「新型戦艦建造に、全力を注ぐべき−その上で、余った力は旧式戦艦群のアップデートに」と考える。

                 杉岡 宗春
 
 
 
 

 

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