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【オススメ本】藻谷浩介・寺本英仁『東京脱出論』ブックマン、2020

「デフレの正体」や「里山資本主義」のベストセラーで著名な藻谷浩介氏と「A級グルメ」「耕すシェフ」の仕掛け人としてNHKのプロフェッショナルに紹介された邑南市職員の寺本英仁氏による対談本。対談もオンラインで行われたというのがまさに現代的であった。

タイトルにもある通り、此度の新型コロナウィルスでいかに東京など過密都市が危険か、ということを都市に住む藻谷氏と地方に住む寺本氏がお互いの立場で論じている。結論はシンプルでこれを機会に価値観を見直し、東京を脱出しましょう、というもの。

対談ものなので、目次を見てもらえればなんとなく議論の筋も見えてくると思われる。

【目次】

プロローグ 寺本英仁

第1章 ロックダウンで見えてきた、「都市」対「地方」

 都道府県単位で考えると、間違える

 日本はどこも医療崩壊はしていない

 中国に厳しく、欧米に甘い日本人

 人の恐怖は共同主観

 ロックダウンに意味はあるのか?

 本当に困っている人から助けていく


第2章 自給自足、物々交換、恩送り
   ―─これから生き残る町とは?

 本当は田舎に行きたい東京人

 地方が〝夕張化〟しないためには?

 ふるさと納税と給付金

 人口1万人の町だからできること

 縦割り行政とエゴに走る民間企業

 都会暮らしは、家賃の奴隷

 インバウンドは復活するのか?


第3章 「東京にしかないもの」とは何ですか?

 上京に憧れなくなった若者たち

 会社に行く必要、ありますか?

 それでも都会人にこだわる人のメンタリティ

 地方移住時代のターニングポイントとは?


第4章 リミットは50代! 東京を脱出するために

 間違いだらけの人生トレードオフ!?

 人間の思い込みは100年続く

 人は、畑と友人があれば生きていける

 6回表でゲームオーバーにならないために

 とりあえず、ちょっと田舎に住んでみる

エピローグ 藻谷浩介

(目次ここまで)

ちなみに私が印象に残ったのは下記のくだりであった。

・人間が(は)共同主観でのみで動く、「皆が怖がるものだけを怖がる」(p.78)

・これからはドイツやスイスみたいに地域内でお金を回せる田舎と、日本の多くがそうであるように回せない田舎とで、差がついてくる(p.112)

・「総論」を語っていても分からない、現場からしか分からない(中略)。確かに余計な合併をして酷いことになっている事例はいくらでもあります。合併しなかったことで独自路線を貫けた成功例も多いです。ですが、合併を生かしている町だってある(p.134)

・人は一人で最大100人しか掌握できない(p.144)

・(藻谷氏)田舎では土木行政だとか施設バラマキだとかいろいろあるのですが、都会では「家主政治」と一言で総括できます(p.151)

・東京に「住む」というのと、「たまに遊びに行く」、能登では、リスクに大きな違いがあります(p.168)

・都会は自由で、いろいろあって魅力的だというけれでも、疫病や災害からは自由ではありません。そんな東京に住まないと絶対に手に入らないものって何かありますか?(p,173)

・藻谷浩介が感じる在宅のメリット:①体力消耗を招く定時出勤が不要、②無用に同じ場にいる時間をカット、③組織内評価は無用、顧客の評価が全て(p.179)。

・「会議は黙って座っている人が8割」という現実に意味がないという認識が少しは出ているのではないか(p.181)

・社会が変わらないのは、お受験教育に問題があり(p.185)

・地方に移住した普通の人に必要なのは、特定の職業スキルではなく、なんでもトライして勉強する精神(p.191)

・田舎を「過疎」だというのは過密の東京からの偏見で、田舎こそ「適疎」だった(p.212)

・あなたが自分を変えらエバ、それはあなたにとって明確な変化(p.241)

以上である。

そういえば、寺本氏の処女作であり前著は「ビレッジプライド」であった。まさにこの誇りも気づく人は気づいていたが、コロナによる田園回帰(あるいは注目)の動きにより、さらに加速度化して、国民全体に広がった気がする。

一方で、リーマンショックや東日本大震災の際も喉元過ぎれば、、でこの動きは足踏みをした歴史がある。

まさに藻谷氏が述べているように、「自分を変える」人が、日本人の1%でも出てくれば、その1%が変われない日本を変えていくのだろう。

その1%とは数字で示せば、100万人強。100万といえば昔のミリオンセラーの基準であり、日本にいま20ある政令指定都市=ミニ東京の数である。確かにこれくらいの数字が動けば世の中は確実に変化するだろう。

いち早く地方に移住し、ビレッジプライドに火がついた私としても、この「適疎の見(つめ)直し」こそが本当の地方創生の本丸だと感じている。ぜひ本書を片手にお一人お一人(自分の中のもう一人の自分も含めて)で問い続けほしいテーマである。

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