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【オススメ本】豊重哲郎『地域再生~行政に頼らない「むら」おこし~」出版企画あさんてさーな、2004


300人に満たない集落に、年間5000人以上の視察が訪れ、地方創生という言葉が隆盛の時代には石破元地方創生担当大臣や小泉元政務官が1泊2日で訪れるむら、やねだん。

また韓国にはやねだんに影響を受けた経営者がやねだんという居酒屋もオープンさせ、グローバルにも名を轟かす。

それでは、その0から1を仕掛けたリーダー豊重哲郎さんという自治公民館長はどんな人物で、どんな思いで、この村おこしを仕掛け続けているのか。

そんなことを一人称の語りで収録した貴重な一冊である。

最大のメッセージはサブタイトルにある「行政に頼らない村おこし」にあるわけだが、そこに至るプロセスには数々の名言や名思考、名センスがあ流のは耳目が一致するところであろう。

したがって、その全てを紹介したいところであるが、ここでは1点だけ「リーダーシップ」について書かれているところだけ抜粋したい。

 社会は常に回っている。今日の世界の出来事はすでに過去である。
 過去の歴史を重んじ、現在進行形の活動に満足することなく、未来への展望のポリシーを自ら創出することのできる後継者を育成するのが、私の最大の夢であり責任である。
 後継者育成ほど難しいものはないだろう。だから面白い。
 リーダーはまずは心得ておかなければならないことがある。それは、絶対条件を明確にし、己の胸のうちに秘めるだけの執念と価値観を、常に持続しなければならないということである。
 私のリーダー像(絶対条件)
一、重き使命感と実践力
一、百戦錬磨の根性と万人に通用する判断力(調整役)
一、リーダーは魔法使いではない
一、メディアは最高の友(聞き上手)
一、笑顔を基本に汗と涙と感動
一、地域活動の頂点は小・中学校である。
一、パートナー(仲間)とブレーン(頭脳)
一、リーダーよ、覚悟しろ

(p.198〜199)

非常に平易な言葉で仰っているが、いずれも言うは易く、行うは難しいことばかりである。

私の印象としては、鹿児島だけに

「命もいらぬ、名誉もいらぬ、官位や肩書きも、金もいらぬ、という人は、始末に困るものである。だが、このような始末に困る人物でなければ、困難を共にして国家の命運を分けるような大きな仕事を、一緒に成し遂げることはできない。しかしながら、そういった人物は、なかなか普通の人の目では見抜くことはできないものである。真に道理を行う人、正しく生きるという覚悟のある人物でなければ、そのような精神を得ることはできない」

との遺訓を残した西郷どんこと西郷隆盛が、もし平成〜令和期に村おこしをしたらこんな感じの村担っていたのでは?と思わず感じてしまった次第である。

最後にこの本は著者豊重さんにとってもう一つ特別な意味があって出版されたことについても一言触れておきたい。

実はこの本は2003年に豊重さんの体に大腸がんが見つかり、最悪の場合、余命5〜6年と宣告されて、執筆されたものである。

すなわち、これまでのやねだんの実践をリーダーとしてまとめるという意味だけでなく、次代や後進に「やねだんのフィロソフィー」を伝えたいと言う一心で書かれれている。そのため、文章一つひとつに言霊が入っており、言葉が重いのである。

幸い手術が成功し、その後約20年の目覚ましい活躍は解説が要らないと思うが、そのような過去があり、今があると言うこともやねだんを語る上では押さえてぜひおきたいポイントである。


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