見出し画像

【オススメ本】川口加奈『14歳でおっちゃんと出会ってから15年考え続けてやっと見つけた「働く意味」』

川口加奈『14歳でおっちゃんと出会ってから15年考え続けてやっと見つけた「働く意味」』ダイヤモンド社、2020。

川口本表紙

1週間前くらいに出版社されたHomedoor理事長の川口さんによる自叙伝であり、団体紹介本であり、ホームレス問題への問題提起本。

川口さんとは10年くらい前にイベントでご一緒したことが一度だけある。しかし、その時はここまで詳しくお話を聞けなかったので、中学時代の炊き出しボランティアから始まり、親御さんに内緒でビジネスプランコンテストに応募していた話、10代でNPOを立ち上げるも初期メンバーと離散してしまった話、一方、人の紹介で現在の信頼ビジネスパートナーと出会えたお話、行政や企業との交渉で苦労し話、多様化(若年化含む)するホームレスの話、何より覚悟を決めサブスク資金集め制度を取り入れ「アンドハウス」を創設し、おっちゃんたちの仕事と幸せを創造していくお話など、初めて知るお話ばかりであった。本当に目から鱗というか、この行動力と継続力に脱帽、という印象である。

帯にある「1回失敗したら終わり。それっておかしくない?」という問題意識。そして、サポートしてくれる大人から言われた「ニーズの代弁者たれ」「先輩から学べ」「頭がちぎれるほど考えろ」という助言。これらを自分に向けるだけであれば理解できる。しかし、川口さんはそのベクトルを「自分のこと」ではなく、路上で生活する「自分ごとのように他人事(おっちゃんたち)」に向け続けた。このある種の飛躍というか、接続力こそが川口さんが様々なメディアなどから注目され、様々な賞を受賞し続ける理由なのだろう。

したがって、タイトルにある「働く意味」というのも、「自分(川口さん)にとっての働く意味」でもあるだろうが、圧倒的な部分は「おっちゃんたちにとっての働く意味」なのだろう。

しかし、これだけ真面目かつ大変な取組みなのだが、川口さんはどこかでそれを楽しみながら考え続け、実践を続けるいる節がある。例えば、本の中で「おっちゃんたち」から1日7回もケーキをもらうエピソードや差し入れでもらったカップラーメンにはまるエピソードが出てくる。また、看板作りや事務所の引越しなど、何度もおっちゃんたちが彼女を手伝うエピソードが出てくる。これなどはまさに「支援する側と支援される側」という関係性から、「共に問題意識を共有し、喜びも共有する仲間」のような関係性、すなわちマッキーバのいうアソシエーション、テンニースでいうゲゼルシャフトに近い「共創コミュニティ」が出きている。その結果が年間700件を超える相談、1000人の寄付者、という数字なのであろう。

働くの語源は「ハタハタ(周り)を楽させる」である。しかし、今日IT化や働き方改革だけでなく、コロナもあいまって、この「ハタハタ」を実感できる瞬間、感覚が減っている。その意味で川口さんを筆頭にHomedoorの皆さんはまさにこの原点の重要性を社会に改めて知らしめるために活動をしているとも言えるのかもしれない。また、よくも悪くも働くことを真剣に考え始めるのが遅い日本では、就活生こそこのHomedoorの活動(仕事)から我々が学ぶことが多い気がする。

そういえば私の母校の図書館に「Learn to live, Live to learn」というスローガンがあった。この本を読み、ここで言うLearnはworkにも置き換えられる、あるいは組み込むべきとつくづくと思った次第。

川口さん始めHomedooaの活動は、これから第2章に突入していくのだろう。そして、その舞台はきっと大阪だけで留まらないだろう。その第2章がまた活字化される日を楽しみにしつつ、こうした発信含め今自分にできることも考え続けたい。

最後に良い意味でHomedoorが解散できる日=問題解決される日が1日でも早く訪れることを祈っている。

(参考1)川口加奈(かわぐち・かな)さんプロフィール
1991年、大阪府生まれ。14歳でホームレス問題に出合い、ホームレス襲撃事件の解決を目指し、炊き出しやワークショップなどの活動を開始。17歳で米国ボランティア親善大使に選ばれ、ワシントンD.C.での国際会議に参加する。高校卒業後は、ホームレス問題の研究が進む大阪市立大学経済学部に進学。19歳のとき、路上から脱出したいと思ったら誰もが脱出できる「選択肢」がある社会を目指してHomedoor(ホームドア)を設立し、ホームレスの人の7割が得意とする自転車修理技術を活かしたシェアサイクルHUBchari(ハブチャリ)事業を開始。また2018年からは18部屋の個室型宿泊施設「アンドセンター」の運営を開始する。これまでに生活困窮者ら計2000名以上に就労支援や生活支援を提供している。世界経済フォーラム(通称・ダボス会議)のGlobal Shapersや日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」、フォーブス誌による日本を変える30歳未満の30人「30 UNDER 30 JAPAN」、青年版国民栄誉賞とされる日本青年会議所主催の「第31回 人間力大賞グランプリ・内閣総理大臣奨励賞」など、受賞多数。

(参考2)本の詳細

https://diamond.jp/category/s-homedoor

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?