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【オススメ本】清水克彦『2025年大学入試大改革-求められる「学力」をどう身につけるか-』平凡社、2024



2025年から入試が大きく変わります。とりわけ大学共通入学テストにおいては、「情報Ⅰ」が追加されるだけでなく、数学では「数学C」が復活、「地歴・公民」の科目再編、国語の試験時間延長など、名称が変わった数年前とは段違いの変化が起きます。

加えて、総合型選抜や学校推薦型選抜、前期後期試験の内容のあり方もどんどんと変わっています。また、今後もずっと変わりゆくでしょう。

背景にあるのが新学習指導要領で謳われる「学力の3要素」。すなわち、①知識・技能、②思考力・判断力・表現力、③学びに向かう力・人間性。この3つの力を問うために、入試が変わるというロジックになっています。

そして、そうした新しい入試に対応するために、本書で著者が提案するのが、「はみがきよし」という考え方。ここに共感しました。具体的には、

は:話す。親子間での対話時間を増やす
み:見る。親子で色々なものを見に行く。
が:書く。まとまった文章を書かせてみる。
き:聞く。相手の話にきちんと耳を傾けさせる
よ:読む。親子で新聞や書籍を読む。
し:調べる。日々の会話の中で出た疑問は書籍やインターネットで調べる習慣をつける

一言で言えば、これは「家族×学校×地域探究による学びの習慣化」と言えるかもしれません。

もとより、こうした学習習慣は、高校に入ってからでは正直遅いと思われます(しかし、やらないよりはマシだが)。

できれば小学生の時分からこの「はみがきよし」を実践することが重要であしょう。かつ、こうした「学びの習慣」は入試はもとより、よりよい人生を生き抜くためにも相当役立つと思われます。

あと本書のもう一つの楽しみ方は、さまざまな大学のさまざまな問題が紹介されていることです。
正解はありませんが、みなさんも受験生に戻った気分でぜひ頭の体操をしてみてください。

・(キングス・クロスの駅の写真を見て)あなたの感じるところを800字以内で書きなさい(順天堂大学医学部)。
・あなたにはずっと想い続けているA君がいます。自分以外は誰もそのことを知りません。ある日友人からAくんのことが好きだから応援してほしいと言われました。あなたならどうしますか?(愛知医科大学)
・じゃんけんの選択肢『グー』『チョキ』『パー』に、『キュー』という選択肢も加えた新いゲームを考案しなさい。回答は新ゲームの目的およびルールを説明するともに、新ゲームの魅力あるいは難点も含めて、601字以上1000字以内で論じなさい(早稲田大学スポーツ科学部)。
・被害者と加害者の実名報道の是非を、犯罪事件に関する報道の意義と関係を明確化にした上で、論じてください(東京大学法学部)
・小学校の教科担任制は賛成か反対か、議論してください(千葉大学教育学部)。
・自治体の住民参加に関して、より良い住民参加の方法を考えてください(香川大学法学部)。
・日本の首都機能移転について、候補地と理由を話し合いなさい(日本大学危機管理学部)
・国家が婚姻を法的に制度化することについて意見を述べなさい(中京大学法学部)。
・労働人口が減少する日本における外国人受け入れについて論じなさい(麗澤大学外国語学部)
・現代社会の問題点と、その問題を解決するための方法を述べてください(某国立大学)。
・反抗的な患者がいるとします。あなたはどのように対処しますか(某国立大学)。
・教育に関するニュースを挙げ、それに対するあなたの考えを聞かせてください(某国立大学)。
・この地域の最大の問題は何だと思いますが。その理由も教えてください(某国立大学)。

最後に目次と著書のプロフィールを貼っておきます。

興味がある方はどうぞ。

(目次)
はじめに
第一章 大学入試改革で問われる学力
「赤い風船」が投げかけること/英語の試験で出題文が日本語の衝撃
文部科学省が目指す「学力の三要素」/ハイパー・メリトクラシーの時代
など
本音のコラム(1) 「話せて書ければ人生は安泰」

第二章 共通テストで問われる新たな学力
国語で出る「実用的な文章」/地歴は「探求」がカギ
「公共」で試されるのは時事問題の理解度/データサイエンス時代を先取りする数学など
本音のコラム(2) 「難関私大志望者の共テ利用は不利」

第三章 難関を目指すなら総合型選抜入試
総合型選抜入試とは何か/総合型選抜入試のメリットは「下剋上」
一般入試合格組より成績が良い/早慶は大学からが一番入りやすい
など
本音のコラム(3)「難関大学は専門塾が大嫌い」

第四章 高学歴を手に入れさせる方法
どのルートで山頂を目指すか/大学付属校は「銅メダル」狙いと同じ
大学の定員管理厳格化の緩和/地方の高校生に大学入試はハンディ
など
本音のコラム(4) 「高学歴が欲しいなら大学院へ」

第五章 家庭力で差がつく大学入試
植えつけたいのは「自己肯定感」/子どものありのままを受容する
「あれもこれも」から「あれかこれか」の子育て/家庭で身につけたい五つの能力など
「本音のコラム(5) 「子どもに持たせる二つの武器」

第六章 親が変われば子どもは変わる
経済格差より意識格差が問題/親は「自分ファースト」を貫く
子どもを「コンサマトリー化」しない/親こそ失敗を恐れないなど
本音のコラム(6) 「『学歴不問』というウソ」
おわりに

(清水克彦氏 プロフィール)
愛媛県今治市生まれ。政治・教育ジャーナリスト。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。文化放送入社後、政治記者、米国留学を経てキャスター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。大妻女子大学や東京経営短期大学などで非常勤講師、総合型選抜入試専門予備校で講師を務める。『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP文庫)、『中学受験──合格するパパの技術』(朝日新書)、『子どもの才能を伸ばすママとパパの習慣』(講談社)、『2020年からの大学入試 「これからの学力」は親にしか伸ばせない』(青春出版社)、『台湾有事──米中衝突というリスク』(平凡社新書)ほか著書多数。公式ホームページ http://k-shimizu.com/

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