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【オススメ本】熊谷俊人『公務員ってなんだ?』ワニブックス新書、2012


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文献的には少し古いですが、内容的には現在に通底する話ばかりで興味深く読ませてもらいました。

まずタイトルが「市長とはなんだ?」ではなく、「公務員ってなんだ?」というのが良いですね。

行政経験者(千葉では副市長経験者)ではなく民間出身初の首長ということもあって、相当の驚きの連続があったことがこの本の主題に繋がっているかと。


目次は以下の通りです。

第1章 公務員は本当に無能なのか?―特殊な世界が生み出す市民とのズレ(そもそも「公務員」とはなんなのか?、公務員批判を拡大させた石肩上がりの終えん ほか)
第2章 市長と公務員の役割―私が決断した市政改革の幕開け(『脱・財政危機宣言』、“ハコモノ行政”の見直し ほか)
第3章 求められる公務員の意識改革―私と職員の向き合い方(公務員の意識の本質的な問題、民間とは違うという甘え ほか)
第4章 市民にも求められる意識改革―自分の街をもっとワクワクする街にしませんか?(燃えるごみを3分の1減らす真の目的、行政は市民のアドバイザー ほか)


内容は、中身は単純な公務員バッシングではなく、公務員の特性を浮かび上がらせた上で、「強大な権限を持ち市民の代表たる首長」と「代表性はないが市長の思い次第でプラスにもマイナスにも力を発揮できる補助機関(公務員)」、そして「そのオーナーであり、ユーザーでもある市民」がどうすればお互いを分かり合えるか、という視点で書かれており、公務員や市民の立場から読んでも納得の一冊になっていました(行政は市民のアドバイザーというところはあまり共感できませんでしたが)。

そのことが分かり、私が印象に残った箇所を少し引用(言及)してみます。

・公務員は誤解されやすい立場である(p.14)。

・民間企業とは究極的に違うと最初に感じたことは、「公務員はユーザーを選べない」ということです(p.24)。

・これまで誰もやってこなかったから誰かがやらなきゃいけないことを自分がやる、というのが私の哲学(p.73)。

・職員は優秀ですから、少し説明すると(中略)理解してくれました。(しかし、)1%のリスクを怖がって、99%の喜びを捨てるのは得策ではありません。クレームをゼロにすることが公務員にとっての最大の仕事では困ります。リスクを恐れずに行動しなければ、危機的状態に陥った(中略)市の財政を改善することは不可能なのですから(p.95)。

・私は職員たちに「あなたたちの業務が効率化するのと同じかそれ以上に市民の時間を奪わな異様」と言っています。つまり「市民に時間を返すことが重要」ということです(p.105)。

・市役所は「市」民の「役」に立つ「所」になるべきなのです。(中略)便利なサービスの導入なのでは絶対に必要なのです(p.117)。

・なぜ市役所の職員は「それはできません」と言えないのでしょうか。(中略)職員が「できない」理由を説明したところで、納得いただけるケースはおよそ半数程度。残りの半数の方からは納得していただけないだけでなく、「やっぱ行政はダメだな」という評判を下されます。(中略)しかし、これではいつまで経っても行政と市民に信頼関係は生まれませんし、何より市民がユーザー感覚になってしまいます。(中略)しっかり市民と向き合い、行政なりの考えを説明することで、自分たちと同じ立場に経ってもらうことを目指すべきです(p.120〜121)。

・私は対話だけでなく、ゲーブルテレビの「テレビ市長室」や、市政だよりの市長メッセージ、ブログ、ツイッタ、フェイスブックなども駆使して情報は身を積極的に行なっています。なぜなら職員たちではどうしても情報発信に限界があるからです。職員に能力がないというわけではなく、簡単に申し上げれば、何かあった場合、責任を取ることがでkないので「大事なことは発信しにくい」。(中略)しかし、こうしたツールは個人が前面に出てこそ魅力が出てくる媒体ばかりです。

・私は基本的に情報はオープンにする人間ですが、異なる立場の人と信頼関係に基づいて交渉してお互い痛み分けのような結論に持っていく話ははオープンにしてはダメだと考えています(p.134)。

・いくら肩書きがスゴくても、現場に出ていなければ、細かい事情はわかりません。(中略)だとしたら、最初から現場を知っている人間も交えて議論をして、その場で結論を出した方がよっぽど効率的です(p.158)。

・職員を使えば使うほど結果的には高くつくので、市民が「自分たちでできることにいかに職員を使わないか」というのが実は重要(p.170)。

・地方分権をつく詰めていくと「住民自治」になります。これまでは行政に任せていたことも、自分たちで決めなくてもならなくなるかもしれない(p.192)。

・私には夢がありますいつの日か、子どもたちの「なりたい職業」の第一に「市長」がくることです(p.211)。


最初は最年少市長として、その後は行革の先進事例のリーダーとして、そして最近のコロナ禍においては学校の一斉休講の時の発信にも注目をされた熊谷市長さんですが、やはり一番長けているのは、SNSやブログ、そして出版も含む「発信力」だと思います。(参考)https://www.kumagai-chiba.jp

というのも、災害大国であるわが国では、いつ緊急モードになるか分からなく、デマ情報やフェイクニュースなども出回りがちな中(コロナでもそうでした)、やはり「ファクトは何なのか」「行政が何を考えているのか」をいち早く市民に届け、沈静化はもとより、市民を安心させられるのは首長に他ならないためです。そのためにはやはり日常の発信とコミュニケーションも必要不可欠でしょう(選挙の時だけSNSを頑張る方もいますが、これはあまり良い例とは言えません)。

また、このことは日常モードでは「このまちに生まれてよかった」「このまちに住み続けたい」「この市長がいることが誇り」といういわゆるシビックプライドにも繋がりますし、関係人口や観光人口から見れば「移住したい」「一度(また)訪れてみたい」という感情にも繋がることでしょう。すなわち「PR(promotion)のPR化(Public Relations)」ですね。

私の住む京都府でも与謝野の山添町長や京丹後の中山市長、綾部の山崎市長、長岡京の中小路市長、亀岡の桂川市長、京田辺の上村市長、和束町の堀町長などの発信に長けた首長がおられます。

ぜひ年齢や性別、しがらみや行政経験に関係なく、市民の鏡たるPR型の首長を選びたいものです。


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