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【オススメ本】今村寛『対話」で変える公務員の仕事 自治体職員の「対話力」が未来を拓く』公職研、2021

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ふくおかSIMの発案者であり、福岡市の財政畑を経験された今村寛氏による自治体対話本。

前著『自治体の“台所”事情 “財政が厳しい”ってどういうこと?』の中でも対話の重要性を強調されていたが、今回はその主と従を入れ替えたような中身でした。

目次は以下の通り。

(目次)序章 この本を書いたわけ

第1章 自治体職員には「対話」が必要
 1 自治体職員の仕事、このままでいい?
 2 自治体職員の職場、このままでいい?
 3 うまくいかないのは「対話」が足りないから
 4 財政課長がなぜ「対話」に目覚めたのか
 5 オフサイトミーティング「明日晴れるかな」
 6 「財政出前講座」はじめの一歩
 7 「対話」への道の原点
 8 市役所には「対話」が足りない

第2章 自治体職員の仕事は「対話」で変わる
 1 仕事で「対話」をどう生かす
 2 ワールドカフェとの出会い
 3 すべて「対話」が変えてくれた
 4 いろいろな「対話」をやってみた
 5 「対話」の場づくりが職場を育てる
 6 「対話」がくれた言葉の力
 7 話す×聴く=認めあう
 8 ファシリテーションって面白い
 9 まずは「対話」をはじめてみよう
 《対話こぼれ話1》全国に広まった「公務員と語る 公務員を語る」

第3章 知っておきたい「対話」のコツ
 1 「対話」の場を支えるもの
 2 個人商店と常連客
 3 それぞれの立場を越えて
 4 参加者が口を開きやすい場をつくる
 5 議論と「対話」と雑談と
 6 愚痴からはじまるエトセトラ
 7 「許す」のが「対話」の奥義
 8 なぜ「許す」ことが難しいのか
 9 許しあうために守るべきこと
 10 「対話」は手段か目的か
 11 快楽のツボを知れ
 《対話こぼれ話2》SNSがつないだ〝友達〟の輪

第4章 「対話」の鍵を握るのは
 1 対立を「対話」で乗り越える
 2 情報共有なき「対話」
 3 立場の鎧を脱ぐ
 4 「対話」の場をつくりたい
 5 議論の前に「対話」をおく意味
 6 「対話」の鍵を握るのは
 7 自治体がつくる「対話」の場
 8 「対話」が拓く自治体の未来

第5章 自治体職員にもとめられる「対話」とは
 1 職員同士で「対話」ができない
 2 たらいまわしはなぜ起こる
 3 適切な分担と連携
 4 自治体職員は「対話」が苦手
 5 自治体が市民とわかりあえない理由
 6 経済への理解は「対話」の土壌
 7 自治体職員と議会との「対話」
 8 自治体職員と政治
 9 自治体職員にとって「対話」とは

終章 この本を手にとっていただいた皆さんへ

(目次、ここまで)

私が印象に残ったのは下記の記述です。

・「秘訣は「すべての人が適任者」という考え方をベースにした「居心地の良さ」です」(p.64)

・「対話は、自分自身の立場の鎧を脱ぎ、心を開いて自分の思いを語ることとと、先入観を持たず否定も断定もしないで相手の思いを聴くことから成り立っています」(p.80)

・「語るは開く、聴くは許すともとらえられます。開くは自分の持っている情報や内心を開示すること。許すは相手の立場、見解をありのまま受け入れること」(p.80)

・「まずは自分自身が対話の楽しさに触れ、その心地のよさにも魅了され、この快楽を誰かに伝えたい、と思うことが第一」(p.95)。

・「自治体職員は組織内での職員どうし、組織どうしでの「対話」が苦手です。その大きな原因は、行政組織で顕著に発達して精緻な分業です」(p.124)

・「給料が全く増えなくても、自分たちの業務領域の予算をもっと獲得してもっと多くの仕事をしたいと考える自治体職員はたくさんいます。この感覚と、新しい仕事が嫌だという感覚との差はどこにあるのでしょうか」(p.127)

・「大事なことは「連携、すなわち「一つの目的のために一緒に物事をすること」です」(p.131)

・「自治体職員は職員同士、組織と組織での「対話」も苦手ですが、市民との「対話」も苦手です。なぜ、自治体職員は市民との「対話」が苦手なのでしょうか。即座に思いつくのは、「対話」の前提とされる「心理的安全性」の不足です」(p.133)

・「市民が求める政策を実現することは私たち自治体職員の使命です。であるならば、市民が選んだ政治家が選挙で公約を実現することが至上命題となるはずです」(p.137)

・「なぜ自治体職員、特に管理職は議会や議員に重圧を感じるのか。その重圧の一因は、市民が行政に求める無謬生、公正公平性への過剰反応でしょう」(p.143)

・「現職が落選した原因を候補者そのものにもとめるのではなく、現職の任期中に日々の行政運営を担当した私たち職員一人ひとりの仕事ぶりが至らなかったということなのではないかと考えるようになりました」(p.146)

・「自治体が市民と「対話」ができないというのは、自治体で暮らす市民同士の「対話」ができないことになります」(p.149)

ともあれ、今後自治体運営を考える上で、「市民との対話」はもとより、「職場内での対話」は必要不可欠でしょう。コロナ禍を受け、オンラインも上手に活用しながらも、やはりリアルな対話の必要性はなくなることはまずあり得ません。

その意味で、この本は良い「知恵袋」になってくれる一冊だと思います。

https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

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