昔RPGを自分で作るというゲームがあった、もちろん一からではないのだが小学生でも自分で考えたストーリーを表現できるという素晴らしいゲームだ。 そして僕はそのゲームを中古で大量に買い、売った人が作ったであろうRPGをプレイするのが趣味なのだ。 しかしなにぶん大昔のゲーム、データが残っていることは余りなく殆どが初期化、または電池切れで死んでいるというありさまだ。 だからこそ生存が確認できた時の高揚感は凄まじいものがある、僕はその瞬間が好きだった。 ある日の事、僕は
放課後の帰り道、部活をやっていない私は毎日寄り道することなく真っすぐ帰宅していた。 ある日の事、その日は一日中ずっと晴れていたというのに私が帰路に就くと突然雨が降ってきたのだ。 当然私は傘を持っておらず慌てて近くにある公園の東屋に避難した。 ザーザザ、ザーーーー。 雨は徐々に激しさを増し空はどんよりと暗くなっていく、もしかしたらこの雨宿りは長引くかもしれない、私がそう思ったその時だった。 「これ、使ってください」 後方から声がし、そちらに顔を向けるとそこには見知ら
先日年老いた父が亡くなり、私は実家に帰省し遺品整理をしていた。 実家には年に数回帰っていたが誰もいなくなった実家というのはまるで他人の家のように思えてしまう。 「あなた、手紙出てきたわよ」 「手紙?」 妻にそう言われた私は手紙を受け取ると宛名を見た。 『孝之へ』 封筒にはそうひと言だけ書かれている、父とは疎遠という訳でもなく電話では何度も話していたので今更手紙にして何を伝える事があるのだろうと私は不思議に思った。 「中、見てみたら?」 私は軽く頷くと封筒から手紙を取
「下村花子さまですね、ではまずプロフィールの製作から始めたいと思います」 そう言ってアドバイザーは何やらパソコンに向かい作業を始めた。 私は今年で四十五歳、そろそろ結婚したいと思いこの結婚相談所にやって来たのだがこんなところで私にふさわしい相手が見つかるのだろうか? 私はガチャガチャを引く前のようなワクワクした気持ちで椅子に座っていた。 「えーでは下村様、のプロフィールを確認していきますね、えー現在四十五歳で婚姻歴無し、職業は会社員、年収は三百万……お間違いはないです
私人逮捕してみた 切っ掛けは友人のぼやきだった。 「はぁ、こんな動画一つ上げるだけでこいつら相当稼いでんだよな」 「こんな動画ってどんな動画よ」 俺は昼飯を食いながら動画を見ていた悟のスマホを奪い取った。 「私人逮捕?なにこれ」 「一般人が犯罪者見つけて捕まえる動画だよ、最近流行ってんだけどお前知らないの?」 悟に上から言われ俺は少しイラっとした。 「知らねーよ、というか簡単に稼げるならお前もやったらいいじゃねーか」 俺がそう言うと悟は俯き何か考え込んだあと、パ
キックボードで婆さん轢き殺しちゃった 「ねぇ、あんた結構飲んでたけど大丈夫なの?タクシー呼ぶ?」 夜二十一時、子供の頃からの友人である真美の家で宅飲みをしていた私は今帰路に就こうと玄関で靴を履いていた。 「大丈夫大丈夫、私キックボードでここまで来たから」 そう言うと私は玄関に立てかけておいた電動キックボードに触れた。 「だから言ってんの、こんなもん酔ったまま乗ったら転ぶかもよ?」 真美はまるで母親のように私を心配している。 「大丈夫だって、なんたって電動よ電動、スイ
「おい!お前どんな教育受けてるんだ!店長を呼べ!」 スーパーに響き渡る私の怒号、一斉に周りにいる客が私を見て黙り込む……気分がいい、この静けさがたまらない。 私の大声に萎縮したバイトの高校生の顔も最高だ、きっとこの感じなら今日限りでこいつも辞めるだろう。 仕事でイラついたときはやはり怒鳴るに限る、私はなにか腹が立つ事があるとこうしてスーパーや飲食チェーン店に行き高校生バイトを怒鳴りつけていた。 狙うのは基本内気そうな高校生、こいつらは何か言われるとすぐに黙り込み、すみ
人形を抱く女 中学になり部活が始まったある日の帰路、僕と友人の翔は家の近くにある公園で遊んでいた。 そこまで広くはないので誰かが来たらすぐ分かる公園……、僕らが着いたときはもう辺りは暗く誰もいなかった。 しかし十分程経った頃、僕らがブランコに座って話していると一人の女が何かを抱きながら公園に入って来たのだ。 「あぁ泣かないで……もう少しだからね……」 女が子供をあやすような発言をしていたので僕は初め赤ん坊を抱いているのだと思ってそれを見ていた。 ……