読書メモ: 「苦しかったときの話をしようか」 森岡毅

◎本との出会い
以前オリラジあっちゃん(中田敦彦)のYoutubeで紹介されていたのを覚えていたのだけど、その時は特別読もうとも思っておらず...数ヶ月経ったこの前、蔦屋書店で平積みされていて、あーあれだ。と思ってパラパラと読み始めた。

◎なんだよ、すごい良い本じゃないか...
そもそもが、森岡さんが社会人になる娘さんのために書いたものだから、率直で変な飾りもないし、心の底からの言葉が紡ぎ出されているのが、読んでいて心地いい。

前半のキャリアに対するアドバイスについては、今までの自分の考え方を肯定してくれている気がしたし、もっと自信を持って進んでいいんだなと思った。もし、自分が大学生の時、就活している時に、もしくは転職に悩んでいた時に読んでいたら、と思ったりするけど、たぶん社会人を数年、会社も数社経験した今だからこそ、こんなに内容に納得するんだろうと思う。

後半の「苦しかったときの話をしようか」はこの本のタイトルにもなっている通り、世間的には完全な成功者である森岡さんの、生々しい葛藤と乗り越えてきた軌跡(=キャリア)が描かれている。特にP&G本社時代の苦悩は、ひよっこサラリーマンの私には、すごく響いた。いやー、にしても、結果を出す人、強いな...

◎オンリーワンでナンバーワンにならなくてはいけない
森岡さんの一貫した主張は、とにかく自分の強みに集中しなさいということ。

ナスビにはナスビに適した土壌があるということだ。ナスビを合っていない土壌の事情に無理矢理合わせたり、ましてキュウリにしようとしてもダメなのだ。それをやってしまうとナスビはただ残念なナスビになってしまうだけだ。自分がナスビなら立派なナスビへ、キュウリなら立派なキュウリになるように、ひたすら努力を積み重ねれば良いのだ。

今までの自分を振り返ると、もっと早くこういうことを気づけたらよかったかもなと思ってしまう。もちろん遅すぎることはないのだけど。

今思えば私は、勉強にしても、対人関係についても、小さい頃から苦手なことがたくさんあった。そしていつもそれを意識しなければならず、劣等感ばかりが付き纏っていた。小学生の時にこどもチャレンジの「夏休みのニガテ克服特集」の表紙に対する感情を今でもよく覚えている。

暗算が本当に苦手で、親子ともにたくさんの労力をかけたけど、結局平均に届かなかった。一方で図形の角度を求める問題は、問題集の端から端まで何の苦労もなく簡単に理解できた。

高校生になっても同じだった。センター試験の数学で満点をとることは私にとって本当に難しかったし、たくさんの時間をかけてやっと7割だったけど、周りが苦手な証明問題などは、(答えも書いてあるし、)正直何が難しいのかわからなかった。大体、マークシート型の試験と記述型の試験とで、偏差値で20くらい違って笑った。

就活の時もやはり、SPIはあまり得意ではなかった。でもなぜか外資のよくわからない図形のテストとか、フェルミ推定とかは、対策を何もしていなかったのに、あまり落とされることがなかった。

私は小学生の時、自分はなんて頭が悪いのだろうと思ってた。
でも今思えば、それは私が、昔からそういう種類の野菜なのだ。どうしようもないマークシートの点数の悪さでなく、記述試験の点数の良さにスポットを当てて、そこを伸ばすべきだった。これは、Self awareness欠如 の罪だよなと思った。

◎全く平等じゃない世界
私は日本以外で育ったことがないので、これが日本独特なのかは分からないが、みんな「平等に」という考え方が本当に好きだと思う。

でも、私が世界の一部を少し知っていくごとに、世界は本当に不平等だと気づく。願ってもいないのに俊足の遺伝子に生まれる子もいれば、生まれつき足が不自由な子もいる。ビバリーヒルズの豪邸に生まれる子もいれば、インドのスラムに産み捨てられる子もいる。富がさらに富を生み、持っていない人はさらに取り上げられる。本人の頑張りとは関係なく、需要があるところでは高値がつき、需要がないところでは良いものでも安く買い叩かれる。

大人たちがどんなに隠そうとしても、それが事実で社会の構造だ。それがどんなに残酷でも、若いうちからよく目を見開いて知るべきだと思う。

◎弱みを補い合う組織
人はみんな平等でなく、みんな違う。だからこそ個々の強みにフォーカスして、それを自分を磨き上げる。じゃあ、弱みとはどう向き合うのか、それがチームであり組織なのだということ。

特に大事にしなければならないのは、自分と似た人間ではない。人は無意識に自分と似た人間を過剰に評価する傾向がある。
ヴァイオリンばかりが50台あるよりも、さまざまな音色が出せる楽器が組み合わされたオーケストラの方が、表現できる楽曲は多いだろう。それがダイバーシティの本当の価値だ。

◎森岡さんの「苦しかった時」からの教訓
本書の特に後半は、要約してしまうと薄っぺらくなってしまうけど、本当に波乱万丈で面白かったので、ぜひ読んで欲しい。以下、印象に残ったフレーズ。

無力なサラリーマンである以上は、後ろ向きな仕事は避けられない
結果を出さないと誰も守れない
最も大切なのは目的の方向に向かって絶えず成長し続けることである

大風呂敷広げて、自分の成長を認めて、強みを磨き続けよう。そんな勇気をちょっともらった気がする。

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