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200日の男性育休で学んだ15のこと

9月から4月の約7か月、200日の男性育休を取得しました。復帰するにあたって、この200日の中での学びを残しておきたいと思います。

前提の整理

これはだれのためのnoteか
自分自身の備忘ではあるのですが、これから男性育休を考えられている方、そういう方がまわりにいらっしゃる方への助けになればと思ってまとめています。

私の状況
都内に住んでいて夫婦共働き家庭です。両親は住んでいるエリアが離れているので日常の中では夫婦2人で家事育児に向き合っています。子どもは4月に小学3年生になった息子と0歳の娘です。1人目のときは育休をとることができませんでした。

男性育休についてのスタンス
機会があり、状況が許すのであれば絶対に取るべきだと考えます。家族の絆が強まり、子供への愛情も深まり、自己の成長にもつながります。人生の中でも最も大切なもののひとつをみつけることができる時間になります。

育休の前半のできごとについて
最初の3か月が終わったころに感じたことは「200日の男性育休での気づき(前編)」にまとめています。この記事は後編となります。

ということでここから私なりの育休を通しての学びを書いていきたいと思います。

学び1 ストレスは3つ重なる前に解消する

育休を通してストレスとの付き合い方を考える場面が多々ありました。それは仕事とはまた違う種類のものだったので、戸惑ったり、失敗したりを繰り返しました。

特に新生児期は慣れないストレスが継続し、それが積み重なっていきます。ひとつふたつであれば何とか気合で乗り越えられるかもしれません。ただ、それが3つ重なってくると一気に負担が膨れ上がります。

私の場合は、慢性的な寝不足、耳元で続く泣き声、そして思い通りに何もいかない、という3つのストレスが掛かった時、自分でも思いがけない形でストレスが爆発しました。

育休が終わればまた別の軸でストレスがかかります。大きいものが2つ溜まっていたら黄色信号が点滅してる状態。家族にオープンにして、ストレスの元を解消するか、発散していくことが大事だと学びました。

学び2 育児をしていると1日はあっという間に終わる

育児は時間がかかります。当たり前すぎますが、「家に子供といるだけでしょう?」というセリフをよく耳にするように男性からすると直観に反するところがあるのかもしれません。

実際に私も「育休中は何をするの?」ときかれたことがあります。自分でも「育休中は何しようかな」なんて考えた瞬間もありましたが、大間違いでした。

一緒に遊ぶ。本を読む。泣いたらあやす。泣き止まなければそれが1時間続く。

ミルクをあげる。オムツを変える。汚すたびに着替える。沐浴をする。寝かしつける。時には寝かしつけだけで1時間以上。夜中にもミルクに、オムツに、寝かしつけが2~3回。

1人の育児だけでも軽く10時間以上。しかも、その間は「何かをしながら」できません。さらに赤ちゃんの分の家事負担も増えます。

ワンオペ育児は無理ゲーです。夫の育児参加は必須。時間がかかるからこそ育児をパートナーだけのものにしないことが大事だと学びました。

学び3 育児はイベントだらけで、自分から主体的に動かないと大混乱

産前産後はイベントだらけです。妊婦検診から分娩予定日の計画、出産に向けた準備、分娩の準備、退院、退院してからの準備。
準備していても結局予定通りに進まないのが妊娠、出産。

産後は家族や近しい人たちへの報告やお礼のお返しなどが続きます。お宮参りやお食い初めなどのイベントがあり、病院の検診、区の検診は定期的にあります。

個人的にややこしかったのは予防接種。半年の間に15回以上の予防接種があり、上記のイベントに合わせながら効率よく、適切なタイミングで受けていくことになります。

このイベントの嵐を乗り越えるためには、パートナーからの指示待ちでは無理です。

自分が主体的に動くためにも、まず全体の予定をパートナーと一緒にリストアップする。そして分担して、スケジュールを切ってお互いフォローしながら動いていく。

出だしで一緒に全体像を整理するところが大事だと学びました。

学び4 認められようとして家事育児をしてはダメ

育休をとったからには積極的に家事や育児をやりたい。そしてやったからには認めて欲しい気持ちについなってしまいます。

「夜起きてミルクあげてるし、お風呂も入れてあげてるし、こっちの方が家事をやっているんだから少しは感謝してよ」みたいなやつです。

正直、自分にはそうところがありました。これが本当にダメだったなと感じます。

その時は意識してなかったのですが、この前提には「自分とパートナーの家事負担は公平であるべき」という考えが自分の中に隠れていました。でも公平かどうか定量化できませんし、無理に比べれば主観が入って不満が生まれます。

パートナーと話をして分担をしたことをしっかりやる。その上で、気が付いたことはどんどん自らやっていく。

気が付いてやったことは「自己満足」。自分がやりたいからやってるのであれば、認めてほしいという気持ちは消えていきます。このマインドセットの大切さを学びました。

学び5 相手のやっていることを過小評価しない

私のアンコンシャス・バイアス(無意識の思いこみ)として、誰かがやったことを過小評価してしまう傾向があることに気が付きました。

例えば、食事をパートナーが作る場合、それが当たり前になってないか?作るためのレシピを考える苦労や、家計を考えながらの買い物の苦労を見過ごしてないか。

実際に「何かをやり続けること」は思いのほか大変なのは勉強や部活で経験した方も多いのではないでしょうか?自分が育休中に向き合った家事育児も同じでした。

だからこそ、自分がそれを代わってできるのであればやる。単発でなく、やり続ける。できないのならば最大限の尊敬と尊重をする。家族で話をして、第三の選択肢も考慮する。例えば、ロボット掃除機や食洗機、家事サービスなど。

この思い込みへの対処は自分にとってとても大事な学びでした。

学び6 因果関係の決めつけは怖い

コミュニケーションの思い込みでもう一つ気付いた自分の癖がありました。それは何かできごとを見たときに、自分の中で勝手に因果関係を決めつけてしまうことです。

例えば赤ちゃんは良く泣きます。「暑いから泣いているのだ。」「お腹が空いて泣いているのだ。」「昨日寒かったから今日鼻水がでちゃって泣いているのだ。」

無意識のうちにそれが正しいことだと思ってしまう。そして、その決めつけをもとに行動してしまう。結果、パートナーと意見が食い違ってしまう。

当然のことで、この因果関係の決めつけは根拠がありません。パートナーは違う因果関係を想起することも多いのが通常です。見ている状況、過去からの経験が影響するからです。

自分は決めつけをしてしまっていないか?と自分に対して問い持つ。そのうえで、可能性を提案して、パートナーと一緒に考える。そういうスタンスを持つことが大事だと学びました。

学び7 前向きに「期待しない」でいることが自分の心を守る

育児をしていると思った通りに何も進みません。すべて赤ちゃんのペース。家事の予定はそれに合わせて常に変わります。

例えば、9時に洗濯機をまわそう、そのあと10時までに食器を洗おう。というのは「計画」ですが、赤ちゃんが泣き止まなかったら達成できません。「計画」すると、その結果に期待して、期待通りにいかないとストレスを感じます。それが毎日積みあがって膨れていき、いつか爆発する。

ただ考えてみると自分の「期待」は、その通りにいく根拠がそもそもなかったり、一方通行だったりしたことに気が付きました。なので、前向きに「期待しない」ことにしました。自分に対しても、誰に対しても「一方的な期待」はしない。

一日ひとつのことができればいい。できなかったら明日やろう。そう考えると余計なストレスを感じにくくなりました。一方的な「期待」は勝手な自分の思い込みだと学びました。

学び8 パートナーとの何気ない会話は、自分への気づきの機会

学びの4~7は妻とのコミュニケーションの中で得た自分の学びです。

育休をとったことで2人で家事育児をしていく中で、会話の量がシンプルに増えました。何気ない会話のような、目的をもった話しではないところで気が付けることが多く、それが家族で育児をしていくことにとてもポジティブに働いています。話をすることの大切さを学びました。

振り返ってみると仕事をしている中での育児では、本当に余裕がなかったように感じます。自分に余裕がなくて、自分のコミュニケーションについて考えることもできていませんでした。

仕事を再開して、また以前のように戻ってしまうことが無いようにしていきたいです。

学び9 電車やバスの移動はパートナーと2人だと10倍は心強い

赤ちゃんと自分だけでの電車やバスの移動がこんなに怖いものだとは思いませんでした。

連日、赤ちゃん連れに関するニュースが流れます。バスの乗り方、電車でのトラブル、どれだけ荒んだ社会なのか。一歩外に出ると、その情報が頭から離れません。結果、気が立った状態で電車に乗るので気疲れが…。ストレスでつい出不精になってしまいます。

物理的にも大変です。電車移動は駅のエレベーターが限られていて、1人で歩けば5分でつくのに、ベビーカーだと遠回りをして15分なんてことがざら。

だからこそパートナーと2人で一緒にベビーカー移動できると心強い。男性が一緒。1人ではなく大人2人。その心強さは計り知れません。仮にネガティブなことがあってもお互いに愚痴れるので、すぐに発散できます。物理的な大変さにも対処できます。

移動はできるだけパートナーと一緒に移動することを考える。一緒に移動できるように予定を立てる。その大切さを学びました。

学び10 自分のもつ「特権性」への気づき

今まで何も気にせずにいたことが、家事育児に関わらないことで得ていた特権性であったと気が付くことができました。

例えば、思い通りの時間に寝て起きること。集中すること(=仕事、勉強、本や映画、音楽を楽しむこと)。自分のためにひとりでいられる時間を持つこと。食事をおいしく味わうこと。計画立てて行動すること。ルーティンを持つこと。

どれも、できなくなりました。第一子の時に気が付かなかったいくつかは、その負担をパートナーに押し付けていたのだと気が付きました。

それらが普通にあるものではない、一定の条件下で享受できるものであるということを理解しておくことは大事。特権性があるものを前提に置いてしまうと、機会を失う人もいるということを学びました。

2023年2月の国会で育休中のリスキリング発言が炎上しましたが、特権性の理解があればもう少し違った表現にもなったかもしれません。

学び11 男性育休は妻のためにある

男性育休はもちろん自分が育児に向き合うためにとるのですが、同時に妻のリカバリーのためでもあることを痛感しました。

出産にあたっての心身のダメージは男性が代わることができないものです。妊娠期を通しての体調の変化、出産、そして産褥期の大変さ、不定愁訴の症状、腰痛やメンタル不調など。

出産のダメージは全治2ヶ月とも言います。安静にする時間、治療する時間、リハビリする時間はあって然るべき。男性が育休をとる中で、育児と家事に加えてその時間をどれだけ捻出できるかが大切だと感じました。

そのためにはパートナーを不安にさせずに1人で育児、家事ができる状態になることが必要です。

私の場合は、早い段階から赤ちゃんと2人きりででかける場面を少しづつ作っていきました。近所の散歩、駅前のカフェ、電車で少し移動、という感じで活動範囲を広げていって、慣れることができました。

学び12 「イマココ」に集中できると人生は濃くなる

育休前は会議が1日平均8件あるような日々でした。振り返ってみると仕事以外の時間も頭の中は仕事にとらわれていました。子どもの習い事を見ているようで、仕事のことを気にしている。家族との時間を過ごしているのに、週明けの会議のことを気にしている。

常に心ここにあらずという状態でしたが、育休に入ると「仕事を気にする」ということがなくなりました。そこでようやく目の前に集中する感覚を思い出しました。

子どもの表情、言動、家族との時間の中で感じる自分の気持ち、景色の美しさなど。何かに気をとられずに「イマココ」に集中すると、こんなにも味わい深くなるものなのかと驚きました。マインドフルネスな状態を感覚的に学びました。

頭のスイッチングコストは高いので、一定の時間の中でしっかりと集中する。そしてタスクの区切りの際には次のスタートを切れるように段取りして、育休があけてからもこの状態は続けたいと思います。

学び13 毎日5時間の家事育児を仕事と両立することを考える

パートナーは妊娠0週から280日×24時間=6720時間の心身の負担を背負います。この時間を含めて家族としてフェアに家事育児に向き合っていこうとするならば、夫として毎日5時間の家事育児に関わっていく必要があります。

育休が終われば、仕事9時間、食事などで3時間、睡眠7時間、家事育児5時間で24時間です。

その時間が取れていないのならば、その分の負担は暗にパートナーに負担してもらっているということ。平日5日×5時間の負担は週末だけでは解消できません。

私の場合は1日の時間の使い方、仕事の取り組み方から含めて、考え直す必要がありました。男性育休をとることができたので、家族に向けてはペースを作れたかなと思います。これを仕事と両立していくことにチャレンジしていきたいと思います。

学び14 あたりまえだけど子どもはかわいい

男性育休をとってよかったことは、子供のかわいさを深く知ることができたことです。育休が無くてももちろんかわいいのですが、シンプルに一緒にいる時間が長い分だけ愛情が深まる感覚があります。

一緒にいる時間が長い分、小さな変化を感じることができます。新しいことができるようになったときに、その喜びをその瞬間に共有することができます。0歳であっても意思が通じあっている気がしてきます。

長男とも「イマココ」に集中しながら一緒に何かする時間が増えたので、関係性がより深まったと感じます。子を大切に感じる気持ちも一段と強くなります。

家族の絆が深まる時間を過ごせることは、男性側が育休をとることのなによりの宝になると感じます。私にとっては、この世を旅立つその日まで輝き続けるであろう200日になりました。

学び15 男性育休を過去形にしない

男性育休をとりました!といって、数か月後に以前とまったく同じ働き方になってしまっては育休をとった意義が半分になってしまいます。ここで得たこと、感じられたことを、どうその後の人生に組み込んでいけるか。

継続こそ、この世代のチャレンジなのだと思います。

自分にとって、ここまで書いてきた男性育休での学びは事前にはわからないことだらけでした。周囲にこういったことの理解が深まっていくことは、次の男性育休を取得したいと考える人にとって追い風になります。

まだまだ少数派だからこそ、広がりをつくっていけるように環境を変えていきたいと思うようになりました。

番外編 知っておくともしかしたらよいかもTips

大きな学びというわけではないのですが、男性として事前に理解できていたらもっとよい行動をとれていたかもしれないなーということをリストアップしました。

○   不妊の半分は男性側にも理由があることを理解しておく。
○   妊娠から出産まで何が必要かのスケジュールを妊娠初期に頭に叩き込んでおく。
○   妊娠してからどのような心身の変化が女性にあるのかを勉強して体調をいたわる。
○   妊娠中の様々なリスク、制約を理解する。
○   妊婦検診は可能な限り全部一緒にいく。(出産は自分ごと)
○   早めに育休の期間をパートナーと相談する。3か月以上とりたい。経済面がゆるせば6か月、環境があるなら1年とれると理想的。
○   体調次第だけど20週を過ぎたくらいからチーム内で引継ぎの準備を始める。
○   予定日の1か月前に引継ぎは終わらせていつでも出産に対応できる状態にする。
○   陣痛バッグ、入院バッグは一緒に準備する。
○   出産にまつわる申請系はリストにしておく。自分ができることは引き受けて完了まで追う。
○   退院日のプランニングをする。
○   検診、予防接種のスケジュールを立てる。検診や接種をする病院を確認する。
○   パートナーの産褥期のケアを最優先する
○   産後1ヵ月は自分も無理しない。得られる支援には甘える。
○   1日中家にこもるのは病みやすい。晴れてたら外を散歩する。
○   睡眠大事。赤ちゃんが寝たら自分もこまめに昼寝する。
○   パートナーとお互いに1人になれる時間をつくる。
○   育休中は仕事のことを忘れ去る。家族に集中する。
○   とにかく無理しない。

学びとTipsの先に

パートナーと一緒に育児をするということは、小さな変化をともに感動したり、辛さや苦しさを共有しあって、一緒に時間をすごしていくことです。

知識を身につけて、タスクやイベントを管理すればよいわけではありません。日々の育児で発生するToDoをこなしていけばよいわけではありません。家事を一生懸命やればいいだけではありません。

育児を自分事として、パートナーと同じ景色をみて、互いの気持ちに共感しながら、オープンに話し合いながら、家族のかたちをつくっていく営みが育児なのだと気が付くことができました。

ここまでの学びやTips、気づきを得られたのは妻のおかげにほかなりません。心から感謝しています。

おわりに

今回200日の育休をとれたことは人生にとってかけがえのない時間になりました。男性育休があたりまえになった社会は、きっとより良い社会になっているはず。そう信じて、自分ができることをやっていこうと思います。

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