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短編小説から見る社会

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菅原ゼミで読んだ短編小説の書評を順次掲載していきます。書評は全てゼミ生が書いています。授業期間中の毎週末ごろ更新です。  ※ネタバレありですので気になる方はお気をつけください。
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#吉田知子

吉田知子「祇樹院」書評(2)(評者:小家康寛)

吉田知子「祇樹院」書評(2)(評者:小家康寛)

吉田知子「祇樹院」 書評(『お供え』収録)

評者:小家 康寛

記憶と存在証明

 「我思う故に我あり」、世の中の全てを疑おうとも、疑いを向けている我自身の存在は疑う余地のない事実である、とする有名なフレーズである。しかし我々人間とは周囲との関係や記憶によって自らの存在を規定する生き物であり、私自身が存在するその事実は疑いようがなくとも、人間としての個の存在を認めてもらうためにはむしろ「他思う故

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吉田知子「祇樹院」書評(1)(評者:佐野稜典)

吉田知子「祇樹院」書評(1)(評者:佐野稜典)

ゼミの吉田知子回、4回生は「祇樹院」を読みました。

吉田知子「祇樹院」書評(『お供え』収録)

評者:佐野稜典

 この物語は主人公の「私」と雪乃が自動車で雪乃の親戚の家に向かう道中から始まる。二人は昼に食べた吉川の鰻の味について互いに感想を話ながら、雪乃の親戚の家に道に迷いつつも向かっていた。すると「私」はその土地には訪れたこともないのにも関わらず、見えてきた木造の建物に対して「ああ、小学校だ

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吉田知子「お供え」書評(評者:山田瑠菜)

吉田知子「お供え」書評(評者:山田瑠菜)

 更新が滞っており申し訳ありません。12月後半以降のゼミで書いた書評を一挙更新します。12月17日のゼミは吉田知子回。3回生ゼミでは「お供え」を、4回生ゼミでは「祇樹院」を読みました。まずは「お供え」の書評を紹介します。

吉田知子「お供え」(『お供え』収録)

評者:山田瑠菜

人間と神は紙一重

 平凡な人間が神になる想像をしてみてほしい。仙人のような高尚な存在からいきなり全知全能の力を与えら

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