そんとくさんとあっけらかん(損得さんと呆気羅漢)Pt.12


「私のお母さん」
「家は八百屋です」 

誰かが ふっと笑いました。

「お父さんは朝早くから野菜の仕入れに出掛けます。
 お母さんも5時過ぎにはおきて、朝ごはんの用意を始めます。
 その時店の前のシャッターを2つ分だけ開けて起きます。
 ”ねぎ買うの忘れとったー。とか 味噌たりんかったー。とか言う人が
 走って買いに来るからです。
 そんな人が来ると、作るのも止めて急いでお店に出て行きます。
 ご飯の用意が出来たら、そろそろ皆を起こし、
 洗濯機のスイッチを入れ、ラジオを点けます。
 その頃お父さんも帰ってくるので、ご飯を食べ始めます。
 終わった後も片付け、店の掃除、洗濯物干したり、家の掃除をしたり
 朝からずっと動き回っています。
 その間にも お客さんが来るとお店に出て行って話しをしたり
 お勘定をしたり、 休むことなく次はあれして 次はこれして と
 一杯することばかりで 一日はフル回転です。
 だから時々疲れます。
 くったりとして ぼーっと遠くを見ていたりします。
 そんな時 漫画を持っていって 見せてあげます。
 お母さんも漫画好きです。
 時々泣いたり ふっと笑ったりしています。
 見た後 元気になったように見えます。
 私が毎週本屋さんに漫画買いに行くのも 怒ったりしません。
 ”そんなしょうも無いもん見てる間あったら勉強しー。
 とも言いません。
 私はそんなこと言われてる子は 可哀想やな~と思います。
 私はそんなお母さんが大好きです。
 一緒に笑ったり、同じ話の出来るお母さんが大好きです。」

そんとくさんは 転校生だった子のことが 時々気になるのです。
”あの子どうしてるかな~ 大丈夫かな~
 漫画見たいの 我慢してんのかな~”と思ってしまうのです。

{続く}


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