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【読書感想文】この部屋から東京タワーは永遠に見えない/麻布競馬場

・「麻布競馬場」というP.Nが端的に本の内容を説明してくれている。
・正直俺より稼いでるだろうにカタカタうさいという不快感もありつつ、どこか愛おしい。
・M-1のウエストランドの漫才を思い出した。

 たとえば麻布とか、東京のど真ん中で社会の上に立つレースに負けて厩舎にうなだれて帰った人たち、いったん勝ったものの終わらない闘争に身を投じてグルグルと絶え間なく走り続ける人たちのオムニバス。

 出てくる人達の鬱屈は正直ダサい。東京みんな早慶とかいい大学を出て港区だのでハイスペックな仕事と恋愛して…という昔のトレンディドラマみたいな人生が自分にあると思い込んでいて、自分の身の回りの小さな幸せに気づくことができない青い鳥症候群、日々目の前を頑張っている人たちからすればちゃんちゃらおかしい、いわゆる「東京で踊らされて消耗している人たち」がカタカタ喚いているだけで同情はできない、正直気持ち悪い独身の人たちの話だった。

 たぶん登場人物の多くは俺より稼いでるし社会的地位も高いのにうるさい!高卒の親とか短大卒のなんとかとか~勤めのなんとかとか、俯瞰できているようで実は出来ていないところもなんか不快感要素。
 
 でも、カタカタ喚く姿がどこか滑稽で、憐みと愛おしさを感じる、可愛げのないところにどこか可愛げを感じる。あと、それを眺めている自分もまた、どこかで競争させられている。ダサいとか気持ち悪いとか言ってるけど自分も負けず嫌いだから、気持ちはわかっちゃうところがあって、それが不快だった(同族嫌悪) 
 本書はtwitter文学を名乗っている。twitter文学って言葉の響きは本当にインターネットに縛られていてダサいんだけど、それをダサいと思うということ自体がそいつもインターネットに縛られている…ということで、インターネットとかSNS(特にtwitter)ばっかり見ていて文体も汚染されているような、現代国語が得意科目だった人には特に刺さる内容だったと思う。

 
 先日M-1で優勝したウエストランドのネタを思い出した。
「毒舌漫才」をテーマにしていて、youtuberやアイドル、大阪などへの偏見をあるあるネタとした面白みはもちろん、ほかにも井口という小さくて不細工でいかにもモテなさそうな男が偏見をずっと喋っているみっともなさへのおかしみと、それを面白いとかひどいと思うってことはお前もそう思っているってこと…?っていう笑った時点で共犯者になっちゃう見ている人まで舞台に強制参加させてしまう巻き込みの要素がある。前者はtwitterで、後者は爆笑問題のラジオで聞いた。そしてこれを「分析するな!」でクローズできるのも面白み。

 この本を読んで何も思わない人はそもそも何も思わない。関係ないから。

 本を見てこんな長文を書いちゃう自分を含めた「東京の半端もの」「自意識の奴隷」「現代文が得意だった文系のオタク」「社会人デビュー」etc...には読んでほしい。刺さったり、不快な気持ちになったりしてほしい。

 最後に、育ててくれた親には俺は感謝したいな。確かに家レベルで勝ち目のない勝負もあったし、親を完璧な人間とは思わないけど、それなりにはやってくれたんだから。

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