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12/13 雨音

 雨の中上機嫌でお気に入りの傘を眺める。先日の暴風雨で傘が壊れた後、ゆいさんと一緒に買いに行ったお気に入りの傘。その傘をさせるのが嬉しくて、前より少しだけ雨の日が好きになった。
 急な雨で傘がないとゆいさんから連絡があった。私は買ったばかりのお気に入りの傘で迎えに行く、と返事をした。手にはゆいさんの傘をさげている。
 待ち合わせの場所で落ち合うとゆいさんは嬉しそうに手を振って「ありがとう」と微笑んだ。
 そして自分の傘を受け取る前に私の傘を持つ手を掴んで引き寄せると傘で隠すようにして私の唇にキスをした。
「…もう、油断も隙もないんだから。」
 照れ隠しに口にしながら、私も満更ではなかった。ゆいさんのこういう所が好きだ。
「せっかくだからなんか食べて帰ろっか?お礼に奢ってあげる。」
「やった! 何食べよう」
 まるで何事もなかったかのようにふたつ傘を並べて歩き出した。傘に落ちる雨音が、楽しそうに響いていた。

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