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音楽ストリーミングサービスに期待するレビューサイト/メディアとしての役割

今年2本目のnote更新。今年はnote頑張りたいと思っていたのに、、、


とはいえ、noteやブログ以外で音楽関連での活動は続けていまして。

今年に入ってから音楽ストリーミングサービスのAWAでライター的な活動をさせて頂いております。



将来的にはテキストメディアのライターを目指したい、というよりはストリーミングサービスの中で何か出来たら良いな〜と考えていたところでお話を頂いたのでやらない手は無かったです。出自にある邦楽やバンドミュージックを軸に、色んな音楽を聴きながらとてもやりがいを感じながらやらせて頂いております。



いまでは、世界中の音楽が手軽に再生できるようになっていますが、その反面、膨大な音楽の中から自分に合った楽曲を、ジャケット写真・タイトル・アーティスト名といった情報だけで、限られた時間の中で選定するのは非常に難しくなってきていると感じています。今回のアップデートでは、好きな音楽との出会いをさらに加速させるべく、「人の知見」「感性」「熱量」を組み合わせ、レコード店の店員からコアな音楽の魅力を聞いたり、友人と共通のアーティストで熱狂したり、人が音楽についてリアルに語り合う、昔ながらの体験をデジタルでリプレイスするような体験を目指し、音楽体験の面白さを追求しています。

AWAが大型アップデートし4つの画面をフルリニューアル!人の知見・感性・熱量を組み合わせた新しい音楽体験の面白さを追求 — News - AWA(https://news.awa.fm/jpn/2020/6/18/majorupdate)より

先月行われたアプリのアップデートを機に、自分が書いたコメントが各ユーザー向けのレコメンドとして登場したり、ジャンル別の新譜や注目作の一覧と共に表示されています。後者はレコードショップの展開(試聴機つき)っぽい。

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他にも様々な機能がアップデートされたのですが、オフィシャルキュレーターの方々が分かりやすくまとめて下さっているのでそちらをチェックして頂ければと。

自分は今回のアップデートの話を軸に、1人のリスナーとしての視点と今まで続けてきた音楽ブロガーとしての視点を加えながら、今の音楽ストリーミングサービスに対して思うことや期待することを綴ってみました。​

レコメンドとレビューが共存して欲しい

様々な音楽作品のレコメンドに携わっておいてアレなのだけど、音楽ストリーミングに限らず、レコメンド機能を頼りにし過ぎることにはリスクも存在すると思っている。

オススメされたものを次から次へ聴いていくだけだと、どんな音楽が好きで聴きたいのか分からなくなってしまう。新しい音楽を知り興味の幅を広げるきっかけにはなるものの、自分で選んでる感覚が無くなっていくのだ。自分も昨年は色んな音楽を知ろうとするあまり主導権を見失ってしまい、負のスパイラルに陥ったことがあった。


先月フルアルバムをリリースしたWONKの井上幹もこのように語っている。

今は〈レコメンド時代〉というか、ストリーミングで音楽を聴くと、AIを搭載した〈レコメンド・エンジン〉機能が僕らの好みに合わせた音楽を勧めてくるわけじゃないですか。それって便利ではあるのですけど、その一方で自分の好みに偏り過ぎるというか。似たような曲ばかりを聴き続けることが、果たして良いことなのかはずっと考えていて。

自分が思いも寄らないような、異質な音楽に出会う確率がどんどん少なくなっていく環境は、あまり面白くないよねという話をみんなでした覚えがありますね

WONKはSFコンセプト作『EYES』で〈レコメンド時代〉に挑む | Mikiki(https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/25361)より


視聴ランキング上位の楽曲が同じアーティストで埋め尽くされたり、ヒットチャートの楽曲だけを何度も繰り返し聴く、といったケースも今まで何度も話題に上がっている。そういった現象も含めて、レコメンドが引き起こす偏りを減らしたり、日々やって来る新しい音楽の圧倒的な情報量と消費スピードに流されないようにするための努力はした方が良いかもしれない。


その流れを緩やかにする手段として、気に入った楽曲や作品を深く掘り下げたり、感じたことを言語化してコミュニケーションを図るのは有効だと思う。


先述の大規模アップデートに先立って、AWAにはユーザーがアルバムや楽曲に対して自由に投稿出来る「コメント機能」が搭載された。簡単に言えばYouTubeのコメント欄の音楽版だ。

アーティスト/アルバム/楽曲単位でそれぞれのコメントを見ることが出来る。

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一般ユーザーのコメントに加えて、各ジャンルで活躍するライターやブロガー、アーティストがコメント機能を活用することでレビュー的な役割も担っている。


気に入ったコメントを見つけたらそのユーザーのプロフィールから別のコメントを遡ることが出来る。コメントと共に楽曲をフル再生出来るのはストリーミングサービスならではの特権だ。

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今後作品にコメントが蓄積されることでレビューとしての役割を果たし、好みのユーザーのコメントを遡ることでジャンルや年代を跨いだ音楽体験も出来そう。


レコメンドは主に視聴履歴と音楽的に似た楽曲から順にAIによってセレクトされる。自動的にオススメが表示されるのでユーザーは受動的。

対するコメントやレビューは人間の手によって生まれ、内容は必ずしも音楽的な要素だけに留まらない。自ら書いたり探したりする必要があるのでユーザーの主体性が問われる。


レコメンドを活用した便利な音楽体験と、言葉によるユーザー主体で深める音楽体験が良いバランスで共存しているのが理想的だ。特に「読む前に聴ける」ストリーミング時代において後者をどうデザインしていくかはリスナー側にとってもサービス/メディア側にとっても重要だと感じている。


ストリーミングサービスごとの役割と音楽メディアとの境界線

例えばサブスクのアプリ上に今より言葉や文章が盛り込まれたら、アプリの機能性とデザイン、そしてユーザーのリスニング体験ににどう影響を与えるのか、ということに興味がある。個人としてはレビューやインタビューなどを好んで読むことが多いので、言葉によって楽曲・作品の理解を深めたり、アーティストの考え方に触れる機会はこの先も絶対にあった方が良いと思っている。

ただ、今の時代において、SNSからリンクを踏んでWebメディアの記事を読むのもひと手間かかるプロセスだと思うし、紙の雑誌を購入するのはなおさら手間のかかること。ならば、音楽のリスニング環境とテキストコンテンツが1つのアプリ内で完結出来れば良いのではないかと思う。

とは言いつつも、サブスクの良さの1つはインターフェースと操作がシンプルで直感的で、聴きたい音楽を選んで聴くまでのアクセスが容易であること。プレイリストが人気なのは、従来のディスクレビュー的な役割を担っているからで、レビューには不可欠だった文章を取り除く代わりに、再生するまでの障壁を限りなく取り除いたガイドとして機能しているからだと思う。
自分としても、ここ数年サブスクを利用している中で「なんか良さそう」「とりあえず聴いてみよう」という直感が新たな音楽への関心を広げる大きな要素になっている。何かを読んで良い作品なのかを判断する前に、実際に聴くということを容易に出来るのはやっぱり強いと感じた。

しかしながら、どんなに良いと感じた楽曲も、言葉や文章など、何らかの目に見える形で残さないとあっという間に消費されてしまうのがサブスク時代の現状でもあると思う。人気のプレイリストから外された途端にリスナー数が一気に減ってしまうアーティストも実際に存在する。新しい音楽に出会うレコメンドとしての言葉も勿論だが、1つひとつの作品を長い期間味わうために、音楽を聴きながら理解を深めるガイドとして言葉や文章を活用出来るチャンスは探せばもっとあると思っている。それをサブスクの中に取り入れて音楽メディア的な立ち位置に変わっていくのか、それとも直感的な利便性とリスニングに特化した場所になるのか。各サービスによって今以上に強みや個性が分かれていって欲しい。

これは1月下旬ぐらいにAWAの担当の方からアンケートを頂いて「今の音楽ストリーミングに対して思うこと」を書いたものだが、半年近くが経った今、自分が期待している方向にどんどん向かっているように感じている。

個人的にはリスニングに特化したいならSpotifyがデザインが直感的かつレコメンド力も高いと思う。テキストをあまり使わない代わりに最近は音楽系のポッドキャストがとても充実している。プレイリストやイベントを通じてネクストブレイクを送り込んでいるという点も見逃せない。

Apple Musicは楽曲に加えてMVやライブ映像も観れる。海外の音楽を聴く方にとってはインタビュー映像やラジオ番組が充実していているのもポイント。

そしてAWAはここまで書いてきたように、レコードショップのポップのような言葉によるレコメンドと、コメント機能によるSNSやレビューサイト的な要素を取り入れ始めた。

2020年、“音楽雑誌”的な音楽の楽しみ方がテクノロジーの進化によって、“聴けて書けて読める”という夢のような音楽メディアの再構築が実現した。
これまで、いわゆる“音楽雑誌”で行われてきた楽曲レビューやインタビューなどは、インターネット以前、楽曲が簡単に聴けない昭和時代に、いかにして楽曲の魅力を文字で届けるか? そんなモチベーションの元、発達してきた歴史がある。しかしYouTubeやストリーミング・サービスが普及した現在、まず楽曲を聴くことができる時代となった。楽しむ順番に変化が起きたのだ。
とはいえ、日々新規リリースは増えカタログは膨大となり“認知限界”を迎えるリスナーも多いことだろう。そんな、音楽ファン予備軍へ、AWAでチェックし続けたいキュレーター(選曲家、メディア)を見つけて、コメント一覧表示機能を活用することで、あらたな音楽との出会いを感じられることだろう。

AWA、楽曲コメント× ストリーミング・サービスで変わる新音楽メディア体験とは?(ふくりゅう) - 個人 - Yahoo!ニュース(https://news.yahoo.co.jp/byline/fukuryu/20200417-00173734/)より


Webメディアに目を向けても、CINRA.NETがSpotifyと共同で立ち上げた"ミュージックガイドマガジン"のKompassや"プレイリスト&カルチャーメディア"を謳うDIGLE MAGAZINEなど、ストリーミングやプレイリスト在りきでスタートしたメディアも存在している。

上で引用したプレイリスターのふくりゅうさんが仰るところの「音楽メディアの再構築の実現」が完全に成されているとは個人的にはまだ思わないが、今後も音楽ストリーミングを軸に、既存の様々なメディアの境界を溶かして混ざり合っていく流れは続いていきそうだ。


理想は「リスナーファーストの音楽の語り場」


ここまで長々と書いてきたように、音楽ストリーミングは「定額聴き放題のサービス」を超えて現在進行形で進化を続けている。進化といっても単なる利便性の追求でもなければテクノロジーによる既存のメディアの駆逐・分断でもない。雑誌やレコードショップなど、今まで脈々と紡がれてきた音楽体験の文化を受け継ぎながらアップデートしていくことの大切さも再実感した。


素晴らしい音楽を生み出してくれるアーティストと、それを受け取るリスナー1人ひとりの自由な解釈によって豊潤な音楽カルチャーは作られていき受け継がれていく。

その間に立つ音楽ストリーミングやメディアはアーティストとリスナーの両者がいてこそ。サービスと権力は表裏一体であることに注意を払い、リスナーファーストで音楽を楽しみ、広め、深め、そして語り合える環境作りに今後も何らかの形で携わっていきたい。


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