失ったもの
私は絵を描くのが好きだ。
でも一人の作業なので、孤独を感じることもある。
いろんな人がのびのびと、絵を描く空間があればいいなぁ。
日中、余計なことは何も考えずに、そんな場所で絵に没頭できたらどんなにいいだろう。
心が健康だった頃、会社で働きながら、そんな妄想をしていた。
でも、一緒に絵を描く知り合いなんて周りにいない。
アトリエを借りるのもお金がかかるし…。
うまく居場所を見つけられなかった。
その後、うつになったために、仕事をお休みすることに。
一人暮らしなので、働かずにいると、ずっと家で一人で過ごすことになる。
孤独だし、心の健康にもよくないと思った。
日中、少しでも前向きに人と関われる場所がほしくて、
今は福祉の事業所に通っている。
この場所は雰囲気が良くて、思い思いに好きなことをやっている。
調子が良くても、悪くても大丈夫。そういう安心感がある。
うつになって失ったものはいろいろある。
社会人としての世間体みたいなものとか。
「立派な社会人」みたいな虚像を気にしてしまうこともある。
でも自分にはそんなものは必要なかったのかもしれない。
好きなことをただ追い求めていたい。
それが自分の本当の望みだったと気がついた。
しかも、みんなと一緒にのびのびと絵を描く、という夢が叶っている。
うつになったおかげで叶ったこともあるし、
失ったから手に入ったものもあるのだ。
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