『教えてやれ、俺らが信州』
私はこのチャントをまだ歌ったことがない。
5/8(日) 14:00〜 長野県サッカー選手権決勝戦
松本山雅FC vs AC長野パルセイロ
私にとって初めての“信州ダービー”は、否応なしに雌雄を決する戦いとなる。
その詳しい歴史については、シンさんの記事を御一読いただきたい。
こういう歴史を教えてくださる大先輩の存在を、本当にありがたく思う。
浅学なままで知ったような口をきくのが嫌だった。2017年から山雅サポになりました、と自己紹介するとき、それは「私は何も知らないです」という意味だった。
ずっと私は、自分が「新参者」であることがコンプレックスだった。いや、今もそうであり、これからもきっとそうだろうと思う。
そんなわけで『クラシコ』を観たり、過去や現在の色んな記事を読んだりした。
無知なままで戦に臨むわけにはいくまいと思ったのだ。
はっきり言ってしまおう。私は長野市に敵愾心はない。
長野市内に就職した友人もいれば嫁入りして長野市に暮らす親友もいるし、御開帳でなくとも参拝に行く。
怒らないで欲しいがパルセイロサポーターと仲良くすることもできる。
でも、この戦い、絶対に負けたくない!!!負けられないのだ!!!
それだけは骨身に染みついている。そんな私は松本市民。ああ、何故だ!!この気持ちは、何なのだ!!
いっそ乱暴な言い方をするが許してほしい。廃藩置県での悔恨なんて、私にとっては後付けに過ぎない。昭和、平成、あるいは令和に生まれて育った人間で、「本当は筑摩県になるはずだったんだ、許さん!」なんて憤れるのは稀有な存在だと思う。
だって生まれた時から『長野県』だもの!長野市はいいなあ、Loftも東急も新幹線もあって!なーんて言えば、松本にはPARCOがあるじゃん!ってな具合に返ってくる。別に嫌味の応酬ではない。やっかんだところで、私たちにあるのはPARCOと城と空港くらいなのだ。あずさに乗って一度でも新宿まで行ってみれば分かる、なんてみみっちいどんぐりの背比べをやってんだろう!
と、書いてみてふと気づく。ああ、もしかしてそういうことなのかも知れない。私たちは生まれた時からインフラが整っていて、東京がすぐそこにあった。カラーテレビも、インターネットも、ケータイも、キラキラした流行をどんどん教えてくれる。スクールカーストで上の方にいる子たちは決まって「東京に行きたい!」と口にし、松本なんかで満足しているなんてダサかった。大人になったら一人で行ける大都会に憧れて、長野市なんて気にしている暇はなかったのだ。
きっと、長野の“若い子”たちもそうなんじゃないだろうか。新幹線に乗って一瞬で東京に行けるのに、松本なんて気にしているほうが「ダサい」んじゃない?
だけど、なんでだろう。だからって別に仲良しなわけじゃない。「長野」って括られると、やっぱりちょっと面白くない。
「信州」って言ってほしい。どうしても。
そんなこと気にしてんの面倒くせーって言われちゃうと、他所者か!って思ってしまうこの性は、いったい何なんだろう。
別に相手が嫌いなわけじゃない。素敵な所だって、羨ましい所だってあるけれど、「長野(県)の人はさ〜」とか言われると「松本です」って言いたくなってしまうこの気持ち。何が嫌ってわけでもないのに、「一緒にしないで!」と思ってしまう、言葉にできないこの感情よ!
それを形にしてしまったのが、もしかしたら信州ダービーなんだろうか?
同じ県でも、私たちは、どう頑張っても同じものじゃない。けれど、外から長野県って言われると、どうしても一つにならざるを得ないのだ。
私たちは、田舎者。張り合ったところでどうせ、都会のキラキラには敵わない。
だけど、敵うかもしれないものが、できてしまった。
スポーツでなら、サッカーでなら、勝敗に田舎も都会も関係ない。見せてやりたいじゃないか。何にもないって馬鹿にされる田舎に、毎週10000人のサポが集まるってことを。J1のクラブにだって噛み付ける可能性があるってことを。
それを全国に見せつけてやれるのは、誰だ?
長野県、いや、信州代表は俺たちだ!!!見ろ、俺たちこそが、信州だ!!!
そう声を大にして言うためには、倒すしかない。いがみ合っているわけじゃない、だけど、勝たなきゃ、あいつらが「信州」になってしまうのだ!
『パルセイロだけには負けられない!教えてやれ、俺らが信州!!』
決戦まで、あと2日。引き分けはない、言い訳もきかない。
勝者が『信州』。ただ、勝つのみ。