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映画「クラシコ」のそれ以前、信州ダービーはどう伝えられていたのか。〜県外メディアのアプローチ〜

どうも、山雅のおじさんサポーター澄山シンです。
我々がJ3に降格したことで実現の運びとなった信州ダービーがいよいよ近づいてきましたね。
しかもなにかしらドラマチックな展開が起きそうな予感のする2週連続での対戦になりました。
まず5/8に天皇杯長野県代表を決定する県予選決勝がサンアルで、
そして5/15にはJ3リーグ第9節がUスタで行われることが決まっています。

最後に信州ダービーが行われたのが両クラブがJFLに所属していた2011年以来なのでかなり久しぶりのリターンマッチになりますね。
11年前のことなのですが09年の両者を中心に取材されたドキュメンタリー映画「クラシコ」がその年に全国各地で公開されたりDVD発売されたりしたので『あの信州ダービーが再び!』みたいに県外からも注目され、4/30にアルウィンで行われたカードには1万1663人の観客が、8/28の天皇杯県予選決勝には8,782人の観客が集まりましたのでその日いらっしゃった方も多いかと思います。

え?全然その後から応援をはじめた?
そりゃそうですよね・・・
過半数のサポーターさんがJリーグ参入以降なんですもんね。

よし、じゃあこのおじさんが信州ダービーをめぐるはなしを第三者のサッカーライターさんがどう伝え続けたのか?をこれから貴重な資料を使ってお伝えしよう!

まずは2013年に宇都宮徹壱さんが行ったインタビューでごく初期からのサポーターで『信州ダービー』の呼称を広めたひとりでもあるウルトラスマツモト代表の疋田さんの語った03年頃の雰囲気を読んでみて下さい。

 両者のライバル関係が明確になったのは、松本にサポーターグループ「ウルトラス松本」が誕生した03年から。その初代代表である疋田幸也氏によれば、当時はピッチ内での力関係ではもちろん、サポーターの数と質でも長野には到底勝てない状況だったという。

「まだ(相手に)鼻で笑われている状況でしたね。向こうは1年早く応援を始めていたこともあって(編注:実際には2年早い01年から)、ウチらの応援について『魂がこもってない。あれじゃカラオケボックスだ』みたいなことがネットに書かれてあって、ホントに悔しい思いをしましたね」
 長野が将来のJ参入を見越してクラブを株式会社化したのは07年。併せて、クラブ名も「AC長野パルセイロ」と改めた。だが疋田氏によれば、すでに03年当時から松本サイドは「ウチが将来的にJを目指すとなった時に、県庁所在地で人口も多い長野は絶対に脅威となる」と強く意識していたそうである。絶対に負けられない長野との戦いが「信州ダービー」と命名されたのもこのころから。

どうですか?その後のクラブの歴史はご存知の通りですが、応援活動のかなり初期段階でJリーグ入りを構想し、意図的に行動していたのが伝わってきますよね。
とはいえ、まだまだ下記リンクのように地元ですらまだ認知度が低かった山雅なのでその志高いアピールも世間にはさざ波程度にしか届いていなかったのではないでしょうか?
情報をキャッチ出来ていた人たちも『このプロスポーツ未開の地でそんな風に出来るんかいね?』と半信半疑ながらだったと想像します。

兎にも角にもスタジアム”だけは”立派なものがあった我々。
クラブはJリーグを、サポーターは応援文化の日常化をそれぞれ目指し活動がスタートし、試合を重ねるごとに観客が増えていきましたが、いかんせんまだこのレベルのスポーツイベントでは地元の新聞でもせいぜい県内関連のイベントのコーナーで試合結果のみが片隅に載る程度の扱いでした。

その潮目が変わり始めたのが2006年、松本が北信越リーグ1部に昇格し長野との直接対決が増えたあたりから。
早速その7月に発行されたサッカー新聞エルゴラッソに信州ダービーが紹介されています。

「本物のダービー」「リーグ強豪の長野エルザと今季昇格の新興・松本山雅」の文言が踊っている紙面

Jリーグやカップ戦の試合結果をいち早く詳細に解説してくれるサッカー新聞エルゴラッソ。地域リーグのサポーターとして『いつかは山雅の試合結果がそこに』と個人的に憧れていた専門紙に早々と載った驚きと高揚はまだ思い出せます。
このコラムを執筆されたのは現在水戸ホーリーホックをメインにライター活動をしている佐藤拓也さん。
サッカー不毛の地に起きはじめた信州ダービーというさざなみをキーにJリーグ入りを目指す両クラブをいち早く専門紙で伝えてくれました。

そして同年11月にはこんな本にも

圧倒的に山雅

カカが表紙でメインもセリエAなんだけど何故か1ページだけ信州ダービーが取り上げられているという不思議な感じ(しかも全面的にグリーン)でしたがある意味で誇らしかったです。
9月に行われた天皇杯予選・県決勝でのダービーを伝えているのは現在は福岡県を中心にライター活動をされている深水央さんです。

今になって振り返りつつ面白く感じるのはさきに紹介した宇都宮さんのコラム内で当事者のひとりである疋田さんが昇格への障害、ライバルとして現実性を持って臨んだことを語っているのに比べてライターの皆さんはダービーになる要素としてサッカーとは無関係な過去の廃藩置県まで遡る激しい政治的な都市間対立を必ずポイントとして紹介していること。

実際この何故盛り上がっているのか?の背景の長野県外からの解説がその後逆輸入のように県内メディアも『あ、そこ触っていいんだ』みたいな感じで一筋縄ではないライバル関係として取り上げられるようになっていったのがこの時期ぐらいからだと思います。
リアルな市民感情としては長野オリンピックに伴って全国から注目が集まったりインフラ整備が大掛かりに始まってどんどん便利になっていく県庁所在地に対して溜まっていった静かな不満の方が生々しかったりしますが。
そういうジェラシーみたいなのの部分は個人としては中々表現しづらいのもあって出てこなかったものがライバル物語・信州ダービーに乗せられていった側面もあるかもしれませんね。
・・・ちょっと余談になりましたので軌道を戻しましょう。

山雅が北信越リーグを優勝した07年の年末にJ'sサッカーのシーズン振り返りレビューにはこんな記事もありました。
執筆したのは06年のエルゴラのコラムと同じ佐藤拓也さんです。
各々が今年印象に残ったサポーターをあげる欄でJクラブと同列で、楽しんでいる姿が印象に残ったとして紹介されています

このバンド演奏、をしていた場面をどなたが撮影してネットに掲載されたものが↓

私のHDDの片隅に残っていました。
アルウィンに来たことのある方ならここがどの場所なのか、すぐ見当がつくと思いますが南側にある時計台下の通路を使って今はグッズ販売のテントがある場所を開放してバンドと観客がツライチ、同じ高さで演奏する懐かしいホコ天バンドスタイルで試合前のイベントを行ったんですよね。
これをやったのがまさに07年の信州ダービー当日試合前でした。

現在とは違い、まだ無料開放で入場できていたので出来た仕掛けです。
確か芸能人とか呼べないなら自分らでやっちまおうぜ、みたいなノリだったと記憶してますが信州ダービーてひたすら殺伐たる雰囲気だったんでしょ?と思われてるみたいなので「いや、そればかりじゃなかったよ?」という材料として提示したいと思います。
まぁでも実際ここまでやれたのはこの時だけなんですけどね(笑)
だんだん注目が集まるにしたがって「もうちょっと真面目にやってみせなきゃ」みたいな感じになっていったので。

そして08年には再びJ'sサッカーにこんな特集ページが掲載されます

熱いアソコって

もはや私から付け足す言葉もないくらいの「もうサッカーファンの君たちなら当然知ってるよね?」ぐらい振り切りかたで読者を煽ってきています(笑)

こんな風に取り上げられるのは、当事者としてはちょっとこそばゆさも覚えながらも「今Jリーグ未満のサッカーシーンで見とくべき必修科目は信州ダービーだよね」そんな風に語られるある種【これから来るブランド】的な泊付けがこの辺りで定まっていったのを感じていました。

そしてこの数年の流れが翌年09シーズンの開幕前から両クラブを中心にシーズンエンドまで含めて密着撮影した映像「クラシコ」へと繋がっていったのです。

こうして振り返ってみると最初の小さな、池に小石を投げてポチャっと起きた波紋が段々に周囲に広がってまた、岸の方から波が今度は中心に戻っていく、そんな映像を観ている感じになります。
目の前のチームを勝たせたい!その先にあるのは昇格だ!とあの手この手で地元クラブの応援をし、後押しをしてきたその歌声はその時想定もしていなかった遠くの第三者にも届いて心を動かしていたんだなぁ・・・というのが実感です。

そして最後にもうひとり、忘れてはならないライターさんに登場して貰って過去記事の紹介を締めくくりたいと思います。

サッカーニュースメディア・ゲキサカで全国各地の地域リーグチームの動向を現地まで足を運び取材し、あまり知られていない全国各地のサッカーシーンを毎週伝えてくれた木次成夫さんの連載「Jを目指せ!」の中から信州ダービーを取り上げた回です。

すべての取材地に自身で足を運び、時として文中で苦言を呈してくれた木次さんは現在ライターとしては活動をされていないようですが、古くからのサポーターとしては木次さんが当時取材していたクラブの多くが紆余曲折を経て念願のJクラブへと成長を遂げた現在の様子を、またあのアツい木次節で聞かせて欲しいところです。

【まとめっぽいもの】

ざっと駆け足でサッカーメディアが取り上げた信州ダービーを振り返ってみましたがいかがだったでしょうか?
当事者にはリアルなものである信州ダービーも、取材者にはロマンとして刺さる側面があったようです。
それだけ両者のガチンコ対決は魅力的であるということだけは間違いなく言えるのではないでしょうかね?

さて、間もなくまた新たな信州ダービーの歴史が刻まれますね。
試合結果はどうであれ、将来のサポーターに誇れるゲームを、そして応援を残そうじゃないですか!

それでは今日はこの辺で。
最後まで読んでいただき感謝!

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