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私は自分でなんとかする、もう虐待なんてされません


今から21年前。

「喉が渇いたので、どうかお水を下さい。」

お水を欲しがる少女は被虐待児。毎日、パパが叩いてくるよ。

「ダメだ!ダメだ!ダメだ!!」

娘にビンタを食らわせるパパ。

「しばらく、外で反省してなさい。」

パパはそう言って娘を家の外に放り投げました。パパは酒飲んで家で好きなことしていたい。だから、娘をよく締め出すのです。

パパにとって締め出しなんて朝飯前。けれども、娘はもう限界でした。娘は助けを求め、裸足のまま交番を目指して走りました。

大人たちは裸足で走る娘をジロジロ見ます。しかし、誰一人助ける人はいませんでした。

娘が交番に着きました。お巡りさんが不思議そうな顔をして出てきました。

娘は今にも涙がこぼれそうでしたが、必死でこらえて言いました。

「あの、毎日お父さんに叩かれて限界です。水も自由に飲めません。どうか助けて下さい。」

警察官はムッとした 顔をして、娘に返しました。

「それは君が悪いことをしたからじゃないの?お父さんに謝って来なさい。」

娘は何か言い返そうとしましたが、警察官はすかさず言いました。

「ここはね、忙しいんだ。仕事の邪魔をしないでくれるかな?」

娘はこの日以降、嫌なことをされたら誰にも頼らず自分で解決するようになりました。



そして、現在。

娘を虐待したパパは独り暮らしをして、誰とも関わらず過ごしています。

それから、娘だった少女は大人になり、子供を産みました。もう子供がいる大人なので、娘のことはお母さんと呼びましょう。

お母さんは息子と公園で遊んでいました。

公園のベンチにお爺さんが座っていました。


お爺さんは、お母さんの子供を見ています。

お爺さんはお母さんのお友だちです。お母さんが子どもの頃交番に駆け込んだときに出てきた元警お巡りさんです。

近所のお婆さんが犬の散歩がてら公園にきて、お爺さんに話しかけました。

「あら、お久しぶりですね。いつも子供たちをを見ていて立派ですね。」

お母さんがお爺さんの代わりに答えます。

「本当にそうなんですよ!私が小さい頃もこうやって可愛がってもらったんですよ。」

お爺さんが愛想笑いをするとお婆さんは帰りました。

お母さんはお爺さんに言いました。

「いつも子どもと遊んでくれてありがとう。私は助けて貰えなかったけど、うちの子は幸せそうですね。当時のあなたは何もできない立場でしたからね。しょうがないです。」

お爺さんは今にも泣き出しそうな顔になりました。


1ヶ月後、お爺さんは亡くなりました。
お母さんは子供が寝た後、日記を書きます。

「お爺さんが亡くなりました。理想のお爺さんになりました。残りは、アザだらけの私を笑った担任の先生だけ。先生にも幸せになってもらおう。私は強いから、私は助けを求めない。私は人を助ける。」

お母さんがペンと置いた瞬間、子供が起きました。

「ママァ、喉乾いたよ。」

「いま、お水持ってきてあげますからね。」

お母さんの本音はネットにもあげないし、誰にも話さない。鍵付きの日記に書くだけ。誰もお母さんの本音を知らない。お母さんは人を信じていないからだ。


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