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【読書記録】Amazon中古価格¥32,185 の「紙葉の家(マーク・Z・ダニエレブスキー)」を読みました【奇書】

日本語訳版は現在諭吉3人分ほどの現代アメリカ文学の名作、マーク・Z・ダニエレブスキーの「紙葉の家」を読みました。

こうしてはじめて、この驚くべき小説は書籍の形で手に入るようになった。独自の色つき単語や縦組みの脚注に加えて、新たに第二と第三の付属書が追加された。物語は変わっていない。アッシュ・ツリー・レーンの小さな家に引っ越してきた若い一家に焦点を据え、その家の恐ろしい異常性を描いていく。その家の内部は、外から測ったよりも大きかったのだ。もちろんピュリツァー賞受賞フォトジャーナリストのウィル・ネイヴィッドソンも、その連れ合いのカレン・グリーンもそんなあり得ない事態に直面する心の準備はできていなかった。だがある日、幼い二人の兄弟がふらりといなくなり、その声が別の物語を呼び寄せる———闇の怪物、クロゼットのドアの向こうにどこまでも広がる深淵、不気味なうなり声、それがやがて壁を引き裂き、一家の夢のすべてを呑み込んでいく。

ペーパーバック版はKindleUnlimitedにも入っているので、英語ができる方はそちらで手に入れのもいいと思うのです。(私は近所の図書館に入っていたので、そちらで借りました。住民税払っててよかった!)

■パラパラめくってわかるヤバさ

「奇書」として知られている「紙葉の家」ですが、なんと言ってこの「あたおかレイアウト(頭がおかしくなるレイアウト)」が有名です。何ページか写真でご紹介します。

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ペラペラめくっているだけでワクワクしてしまう、そんな本です。

多重構造に満ちた<メタ>フィクション

物語は、なんとなくパラノーマル・アクティビティみを感じる、「とある謎の館」の記録映像をめぐる議論「ネイヴィッドソン記録」について描かれています。

そして、そのネイヴィッドソン記録は、ザンパノなる盲目の老人が紙の切れ端に、ありとあらゆるメモに、バラバラと書きつけたものです。

で、ザンパノによるその紙の記録を収集し、整理し、まとめたのはトルーアントという若者です。トルーアントがまとめた記録の紙の束――を出版したもの、がこの本ということになっています。

つまり、ネイヴィッドソン記録についてザンパノが書いたものを中心に据えながら、頭がおかしくなるほどの現実・フィクションの注釈が本の中心をドドンと貫かれ、そのうえ注釈でトルーアント自身の物語が記されていく

だいたい、ざっくりいうと、そんな感じの構造です。

単純なミスプリントも含めてすべてが「仕様」、仕掛け・遊びがいっぱいの長編ホラー小説。「ネイヴィッドソンの物語」「ザンパノの物語」「トルーアントの物語」の3つが、三重のクラインの壷の構造でつながり合う。

こう紹介されている通りの、まざに3重のクラインの壺構造の本なのです。

怒涛の無限注釈

とにかく注釈が多い、ほぼ無限。

先に書いたとおり、これは「ネイヴィッドソン記録」についての本です。ネイヴィッドソンが住んでいた家に無限のような迷宮空間があり、そこを探検した記録として世界的に有名な映像が「ネイヴィッドソン記録」です。

世界的に有名であり、様々な議論がかわされ論文になっている映像のため、ネイヴィッドソン記録については多くの学者や、様々な立場の人が言及をしています。

そのため、そうした論文からネイヴィッドソン記録についての様々な注釈を掲載しているのです。です――

いやでもそれフィクションじゃん!!!!!!

もちろん、ネイヴィッドソン記録は実在しないのだから、その実在しない映像についての論文も実在しないはずなのに、後も大量に非実在論文や非実在エッセーが並べられると、奇妙な現実からの乖離を覚えてしまいます。

とおもいきや、時には実在の哲学書、神話からの引用注釈があったり、注釈だ!と思ったらトルーアントがヤクをキメて女とヤリまくったりしています。

うわあああああああああああああああ???????

とにかく読むのが大変、大変というか頭がおかしくなる

こうした「構成のあたおか」×「内容のあたおか」のせいで、「一体私は何を読んでいるのだろう」という気持ちが延々と続きます。

これは決してつまらないというわけではなく、わけがわからない読書体験という唯一無二の体験しているということです。

読書ではない、読書体験

読み終わって2日ほど経ちますが、「いったい紙葉の家を読んでた日々は何だったのだろう……?」と自分でもよくわかりません。

ネイヴィッドソンの館は化け物だったけれど、この本自体が化け物なので、つまりはあの館の無限に続く廊下はこの本みたいなことなんだな、なんてことをぼんやり考えています。

おわりに

先日、こちらはこちらでヤバめの本を読んだ(読んだ???)ので、こちらの感想も合わせてぜひ。


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