見出し画像

2022年だけど「JDCシリーズ」の話がしたい人がここにいます

JDCシリーズとは

JDCシリーズは、清涼院流水が1996年にメフィスト賞を受賞した「コズミック 世紀末探偵神話」から始まるシリーズです。JDCは日本探偵倶楽部JapanDetectiveClubの略で、その名の通りJDCは日本中の名探偵が集まる探偵組織です。
その探偵組織にあつめる数多くの名探偵が、日本どころか世界を舞台に起きる数々の難事件に挑む、というミステリシリーズです。
たぶん。

シリーズ作品の紹介

まずは、各作品のあらすじとか、好きポイントとか、あと「なにそれ」ポイントとかを紹介していこうと思います!

・コズミック 世紀末探偵神話

第2回メフィスト受賞作品。ちなみに第1回は森博嗣の「すべてがFになる」です。
密室卿を名乗る人物が「1200の密室で1200人が殺される」と予告状が送られてきて、その予告の通りに1月1日から毎日3~4件の密室殺人が日本中のどこかで発生してしまう――

この作品、本当に頭がおかしいです。初読は中高生の頃で最近再読したんですが、頭がおかしいです。
まず分厚いんです(ノベルス版903ページ)が、その最初のかなりの部分を使って、1月1日に平安神宮で起きる密室殺人事件(まずなんだそれ)から、1月中頃までの密室殺人事件の様子が短編小説で描かれます。もうこれが長い。本論が全然始まらない。もうその時点でこちらは読み続けることに辟易してしまいます。密室殺人事件もそれぞれが不可解な状況ですが、さすがに20近く続くと飽きます。
そしてもう飽きた~、ダメだ~!と思った頃に、やっとJDCの名探偵たちが登場します。

そのJDCの探偵たちもね、ヘンテコなんですよ。
名前も変だし、それに推理方法に必殺技みたいに名前がついてるんですよ。たとえば、かなり重要人物である美しすぎる探偵神九十九十九つくもじゅうくの推理方法は「神通理気」といい、推理に必要な情報が揃ったらたちまち真相を悟ってしまうというメタ推理の能力を持っています。
……???
わたしの最推しは「龍宮城之介」なんですが、彼の推理方法は「傾奇推理」といい、とにかく言葉遊び(ダジャレ、アナグラム、ミスディレクション)を得意としています。
………???????

とにかく。
そんなハチャメチャな設定にトンチキな名探偵たちがいどむ。
それがJDCシリーズなのです。

あ、1200の密室での1200人の殺人事件の真相は、以外と納得します。割とミステリです。割とってなんだ。

・ジョーカー 旧約探偵神話

「幻影城」という館を舞台に「芸術家アーティスト」と名乗る殺人鬼が連続殺人を犯す。被害者となるのは「関西本格の会」という会に所属する関西在住の推理作家たち。
JDCの探偵たちをも巻き込んで、連続殺人は不可解に続いていく――

あれ?なんか普通の本格ミステリっぽい! と思えるあらすじ。
私がはじめてJDCシリーズに触れたのは、実はジョーカーからなんですが、なんていうか……本格の皮をかぶっているナニカ、という感じ。
作中で「推理小説の構成要素三十項」と銘打ち現代版(当時)の推理小説のあってほしいものを列挙するんですが、殺人事件もそれに沿って行われます。その中には「作中作」「叙述トリック」なんて、現実では行えないようなも含まれています。しかしそれも作中で登場人物が事件の記録小説として「華麗なる没落のために」という作品をリアルタイムで書きあげていく……。
作中作と言えば、「匣の中の失楽」を思い起こされる方も多いでしょうが、まさに四大奇書に影響を受けまくり、The本格探偵小説を書こうとして、書こうとした?なんだ、はい。

コズミックと間逆で事件の真相はまじアレです。
いや、真相はいいんだけど、結末?大オチ?なにあれ。

・カーニバル三部作

カーニバル・イヴ 人類最大の事件
カーニバル 人類最後の事件
カーニバル・デイ 新人類の記念日

トンチキ!!!!!!なんだこのトンチキな本は!!!!!!!!!!
昨日久しぶり……というか、たしか中学3年生の頃に初読して以来、初めて読み返しました。私が再読したのはノベルス版ではなく講談社文庫版なのですが。

世紀末、インターネットを騒がせた犯罪オリンピックの噂。「ビリオン・キラー」の手により犯罪オリンピックが開幕した。
全世界の世界的名所で起きるトリック不明のテロ事件、謎の奇病アライブ、探偵神九十九十九殺害を予告する謎の九十九邪鬼、テロ組織RISEによる全世界死亡者急増現象(1日400万人)――
世界の行方は、いったい……?

この本は……いったい……???
日本を舞台にしていたJDCシリーズが世界に行く! ←わかる
犯罪オリンピックが起きる ←頑張って理解する
世界各所の名所で事件だ! ←まあ面白い気がしてきた
1日400万人が死んでいく ←???
全作までの人気キャラがぼこぼこ死ぬ ←??!?!?
カオスオブカオス「カーニバル・デイ」 ←理解不能

※わたしはJDCシリーズが好きです。カーニバルシリーズも好きですよ。

誤解を恐れずに言うならば、カーニバルシリーズは家畜人ヤプーの後半の、「実は地球の歴史や神話はイース人やヤプーのことがいろいろ間違って伝わった結果だったんだー!」系、SF偽史みたいな感覚の作品です。たぶん。

・彩紋家事件 前後編

これまでのJDCシリーズでは、一番古い話。
昭和の時代、JDCが設立するきっかけとなった「彩紋家事件」を描く物語。そのため登場人物もこれまでのJDCシリーズの花形探偵はほぼ登場せず、JDC総代の鴉城蒼司と、ジョーカーで登場した螽斯太郎が中心となる。

いや~~~……正直これは読むのがキツかった。
副題にある「極上マジックサーカス」の通り、手品――奇術というのがこの作品のキーになるのですが、(R言語風に言えば)奇術を記述することは本当に難しく、読んでいてあたまが「???」となりまくり。
後編のノベルス版は公判が袋綴じされているのですが、その袋綴じの仕掛けはよかったんですが。
「彩紋家事件」は、全作までの作中でも言及され「いまだに解決したかわからない」とまで言われている作品なので、読み終わった一読者(平民)が理解できなくても仕方ないのかもしれないですけど、ね!

・その他関連作(小説だけ)

草々たる2000年代を代表する作家が描いたJDCトリビュート作品の数々。
ほんと、JDCシリーズは魅力的なんですよ……。こっちも再読したいな、手元に本がないけど。

JDCシリーズここ好きポイント

・魅力的なキャラクター
個性で個性をぶん殴るJDCの探偵たち。探偵同士のやり取りも小気味よく、いわゆるキャラクター小説としてもかなり魅力的。現代のライトミステリにも通じ……るか!900ページ以上あるんだぞ!!!激重だわ!!!!!

・中二病くすぐる清涼院ワールド
「流水大説」とも作品を呼ぶ清涼院流水作品は、第二作ジョーカーに特に現れるように言葉遊びがすごいです。アナグラムやダジャレのような言葉遊びを多用すると同時に、探偵たちの探偵法やその名付け方(たとえば、集中考疑、俯瞰流考、不眠閃考……)は、バトル漫画の必殺技みたいなものですよね。

・作品同士のつながりと、言及だけされている事件から感じる偽史感
彩紋家事件→ジョーカー→コズミック→カーニバル
と時代は続いています。しかし、彩紋家事件が出たのはちょっと後なんですよね。リアルタイムでカーニバルまで追いかけていたころ、作中で描かれる「彩紋家事件はヤバかった」という言葉たちにワクワクしていました。
描かれていないだけで、JDCの探偵たちは歴史の中に存在している、と、そんな感じがします。
ところで、「双子連続消去事件」はいつ出ますか?

・ここから始まる「推理小説」への旅
特にジョーカーは四大奇書へのリスペクトや、その他過去のミステリ作品への言及がかなり多いです。他の作品でもそうですが。作品内で触れられた作品へ読書を広げていくと、読みたいミステリ作品がどんどん増えていきます。こういうのは、あれです、硝子の塔の作品みたいですね。

・反則スレスレ、いやもう反則的なミステリ
これはミステリか?いや清涼院流水だ。
とばかり、他の作品では取れない栄養がここにあるのです。

・京都が好きになる
清涼院流水自信が京大在学中にコズミックを出版されたのですが、そういうこともあってか、JDC本社は京都にあります。京都の京都市役所のとこの交差点だったかな?そのへんです。
高校生の修学旅行で、はじめて京都に降り立った時、「ここにJDCがあるのか~~~!!!!」としみじみしたのをよく覚えています。

おわりに

JDCシリーズは、まさに「世紀末だったからこそ描かれた作品」であるなあと思うのですが、それを懐古厨よろしく令和の時代に読み返してみて思うんですけど。

世界は
トンチキで
わけのわからないエンタメを
もとめつづけている

のです。どっかーんみたいな、そんなの。
じつは彩紋家事件はずっと読んでなくて、今年たまたま古本屋で見かけて読んだのです。これはね、正直あんまりよくなかったとおもう。期待値が上がりまくっていた。あれとおなじ、邪魅の雫。

だからきっと、「双子連続消去事件」も「鵺の碑」も永遠に出ないんだと思う。みんな各自が、おのおのの双子消失を、鵺をつくろう。

いやだ!読ませろ!!!!

この記事が参加している募集

読書感想文

面白い本の購入費用になります。