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DIC川村美術館 この地にあってほしい


千葉の佐倉市にあるDIC川村美術館。
世界の60以上の国・地域でビジネス展開している化学メーカー DICが経営している。この会社、世界トップシェアの印刷インキや顔料を製造している。
その研究拠点がこの美術館のある広大な敷地内に静かに隣接していた。

東京を横断して片道約2時間、初めて訪ねた。
実は、先日、来年初冬に休館のニュースを見て至極慌てたのだ。
アート好きの知人に昨年何度もオススメされていたのに...。

DIC川村美術館


チケットを手にして緑の小道を抜けると、美術館が見えてきた。
思ったよりもこじんまりとしている。

その先には広々とした池、と緑豊かな広大な庭園が広がっている。なんと約3万坪もあるそうだ。桜・ツツジ・紫陽花などそれぞれの季節に花を楽しめるそうだ。
先日、デザインファームで写真を見せてもらった、アメリカのNIKE本社のようだった。

蓮と白鳥


美術館のエントランスを抜けると、ヨーロッパの教会に入り込んだような気持ちになった。光に抱かれたような空間は、人々が集うように設計されているかのようだ。

今回の一番の目的は、マーク・ロコスの壁画が見られる、「ロコス・ルーム」。この作品のために特別に設計された展示室で、ゆったりとした時間を過ごしたかった。展示説明のない部屋に入り、壁画を鑑賞した後、室内に一つだけあるソファに座る。照り付ける夏の日差しが柔らかに部屋に差し込んでいた。
(*美術館内は撮影禁止なのです。。部分でも撮影スポットがあるといいですね。)


そして、本日より開幕の企画展「西川 勝人 静寂の響き」。
プロフィールを見ると、23歳でドイツに渡り、ミュンヘン美術大学を経て、デュッセルドルフ美術大学で学んだのち、ノイスという地域にあるインゼル・ホンブロイヒのプロジェクトに関わっているとある。春に出かけたインゼルではところどこに建築物と作品を見つけた。西川氏の作品は草花のスケッチ、自然界の色を映し取ったカラーパレットなど、インゼルの土地を思い出させるものだった。
空間が広いので、作品間のスペースが広いので、作品同士が邪魔をしない。


360度緑に囲まれた美術館のレストランは最高の立地にある。良質なランチをいただいた後、庭園の散策路を散歩する。

夏の草花、広い池には白鳥がくつろぎ、木々の枝に蝉の抜け殻がつかまっていた。毛並みを短く剪定されたツツジがあるかと思えば、どっしりとした日陰の木にはきのこが生息している。小道を歩いていると、蓮池に出会う。もしかしたら、パリ近郊のジュヴェルニーにあるモネの庭園も連想したのかもしれない。

美術館の建物も作品も好みなのだが、この自然に囲まれた環境が美術館のベースにある。余分な建物もなく、極力自然の中に身を置くように設計されている。
灼熱の夏日でなければ、レジャーシートとおにぎりを持参し、ここでのんびり一日中過ごしたい。
桜の季節にも訪ねたい...が、悲しいことに、来年1月には休館だという。

DICという企業のコレクションを、建物と作品とともに、この緑豊かな土地で過ごす時間。きっと多くの人にとってエッセンシャルであり、特別なものになるはずと思えてならない。

企業経営にとって、資本効率はマストなのであろう。ただ、そのために30年かけて育んできたかけがえのない場所を閉じられてしまうの?効率的に稼ぐとは?社会はより良くなるのでしょうか?

長期の視点で考えれば、この豊かな文化施設は多くの方々を惹きつける、企業としてのブランドの一遇ともなるのでは... と思えてなりません。



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