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パイナップルケーキは地獄のように重い


月曜日、全身が酷く重かった。

でも仕事だぁ〜行かなきゃな、と、少し無理をして行った。まあ、社会人ってそれが普通やないですか。そしたらね、次の日、布団から起き上がれなかった。全身が鉛みたいに重くて、濡れた布団を体にかけられたみたい。

ググッたら、鉛様麻痺というものに似ていて、体を動かさなきゃだめだよ、と書いてあった。そんだば出勤しますか!って出勤して、挙句、帰宅後離れ(のような場所)の大片付けをした。

よっしゃ体動かしたべ、これで治るな!…………んや、治るわけねーのである。

水曜日、休みますと電話をして、とにかく寝た。体は動かない。とにかく寝て、気がついたら25時になっていた。

木曜日(今日だ)、全然変わってない。体が重い。なんだこれ?こまる。何科に行けばいいのかしら?とりあえず、とりあえず、電話。

「2日連続ですみません。本当に申し訳ないのですが、今日もお休みをください。」

「……精神的なものなの?」

「わからないんです、申し訳ありません。今日、病院で診断してもらってきます。明日は必ず出勤します。ご迷惑をおかけしてすみません。」

「分かりました。正直、平日に2日も休まれると困るからね。診断書とかもらえるならもらってね。それじゃ。」

ああ、まともなひとは、週に5日、働けるのか。すごいことだな。なんなら、6日働く人もいる。すごいな。

ここが最貧国ならそんなこと言ってられないよ、と、言われたことがあるが、ここが最貧国なら、私は路上で飢えて死ぬだけだ。簡単なことなのになんで分からないんだろう。

外に出ると、夏の日差しが明るくて、すこし生き返った気がした。体は重くて、駅に着いた途端椅子に座りこんだけれど、夏だ。嬉しい。


ストレスの理由はわからない。ぼんやりした日々が過ぎてゆく。具体的に言えないのは、生活の端々にストレスが溶けているからだろうと、なんとなくおもう。

このコロナ騒動で、父が毎日家にいた。ご飯を食べる時間が被ると、私はごはんの味がわからない。胸が詰まる。どうにかずらしたくて、父が早く食べ終わるように祈りながらゆっくりゆっくり飯を食う。

朝起きて、すれ違うのが怖い。いつもリビングに父がいる。私のテレビの音が大きいとたまに苦言を呈する。でもそんな父のテレビの音量は、52。わたしは14。ええーっ。ほんまにゆうてる?結局わたしは耳が痛くなって、堪らず部屋に戻る。

しにたい、つらい、どうしよう、体が重い。音がうるさい、頭が痛い、全て妹に零した。彼女も忙しいのに。私のことがすきなひとに、そんな話をする残酷さを、分かっているのに。

これが姉のすることか?最低だ。

いろんな、いろんなことがある。1人で暮らしていた日々を毎日思い出す。1人で暮らせばいーじゃん。わたしはわたしに毎日言う。成人で、働いていて、自由なのに、どうしてそれをしないの?言い訳ばかり。何が引っかかっているの?

また仕事を休んでしまった。いつまで続けられるだろう。お金を貯めなきゃ。まかちゃんといつか暮らすために。母が離れのような場所を私の部屋にしていいって言ってくれた。とりあえずはそこで過ごしてみてもいいし。だから。

だから。

わたしはいつ私の人生を獲得できるのだろうか。それは贅沢なことなのだろうか。いつかまた全てをめちゃくちゃにして、逃げ出してしまう日が来るのだろうか。でもそれはそれでいいのかもしれない。ただ、まかちゃんからみて、惨めな女だと、思われたくない。いや、すでに思われているだろうけど、まだ言われたくない。それだけをよすがに、いきている。まともなふりをして。

結局わたしはすべてをぶちまけて、診察室でも待合室でめちゃくちゃに泣いた。やさしいお医者さんは、とりあえず家を出る方向で、仕事をゆっくり続けて、長くやっていこうね、と言った。

今日は海の夢をみられますように。せめて。

今朝起き上がれなかった私以外のみんなも、優しい夢をみられますように。せめて。

ふいにLINEが来た。

「パイナップルケーキきた。サイズは思ったより小さいねんけど、私が24年の人生で持ってきたこのサイズの箱の中で最も重い、地獄くらい重い」

私がこのザマだというのに、マカちゃんはパイナップルケーキを200個買っていた。ばかなの?最高だ。ほんともう、そういうところだ。

明日もなんとか、なるといいなと、200個のパイナップルケーキの写真を見て、無責任に笑った。


生活に必要のない台湾のケーキを買った みんな好きかな/菅沼ぜりい




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