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物語について ②


昨夜は幼少期の話をしたので今夜は最近の話を書こうかと思います。

大学で美学の授業を取っていて、こないだのテーマが「造形芸術と文学」でした。


18世紀のドイツの詩人、レッシングの「ラオコオン 絵画と文学との限界について 」という書籍が取り上げられました。

これまで絵を描いてきて、最近文章を書くことを始めた自分には、あまりにもタイムリーな内容だったので、授業動画を止めて速攻Amazonで注文しました。

中身はびっくりするほど字が小さくてギッシリしていました。

気合いが要りそう。
読むのが楽しみです。

絵画には絵画の得意な事と不得意な事がある。文学には文学の得意な事と不得意な事がある。

絵画や彫刻などの造形芸術は視覚を通して一度に一瞬で全体を見る事ができるので、物体や空間を描くのが得意、だけども時間の流れや行為を表現するのは不得意。

文学は言語という「記号」を通して、読み手に想像してもらいながら少しずつ全体が見えてくるもの。時間の流れや行為の連続を表現するのが得意だけど、空間や物体を説明する事は難しい。

(当然と言えば当然のことだけれど納得)

それをよく理解して、最適な表現手段を選びましょうよ、それぞれの不得意なことはあまりやらない方がいいですよ、というのがレッシングの主張。
また、その表現手段でやむを得ず「不得意な事」をやらなければならない場合のポイントも聞き、参考になりました。

私は今まで絵で物語を表現する事をしていましたが、それで出来ることは確かに限られています。

絵に描かれるものは基本的に一つの瞬間しかありません。言葉がないので、複雑な状況を伝えることが難しい。


それでも、その前後の物語について想像が膨らんでいくようなものを作りたいと常に思っています。

絵を見てくださった方の頭の中で物語が膨らんでいくことは、何よりの喜びです。

そうして紡いでくださった物語の続きを、今度は私におはなししてくださったりもして。

あぁ、こうして作品は初めて完成するのだと展示をするなかで気づかせていただきました。

私の作ったものは「かけら」でしかなく、見てくださった方の頭の中で紡がれる物語のほうが、作品の本質なのかもしれません。

絵に物語を与えてくださり、ありがとうございます。




最近始めた小説は、その逆のことをやっているようです。

拙い物語ではありますが、頭の中で絵や風景を描いてくださったなら、こんなに嬉しいことはありません。それを私は見ることができませんが、それだけで幸せです。

小説といっても関係性が複雑で長いものはまだ書けないので、童話と小説の間のような、中編〜短編を今は書いています。


あまりにも当然の事ですが、文章だと
「なんて物語が表現しやすいんだ...!!!」
と感激しました。


物語を表現したいと思っていたにもかかわらず小説を書くことは今までありませんでした。
灯台下暗し。

本当についこないだ書き始めたばかりの超初心者でしかありません。

しかも小学生から今まで殆ど小説を読んできませんでした。

書いて大丈夫なんでしょうか。


小説の面白さを知ったのはつい数ヶ月前のことです。

小説を読んでみようと本屋に行っても、本棚の前で立ち尽くしてしまうのでした。

そこで友人知人、予備校の先生、尊敬するミュージシャンの方まで、色々な人におすすめの本を聞いて回りました。

その中でおすすめしてもらったある作家さんの小説にはまり、その方の作品を古本で買って読むようになりました。


小説がこんなに面白いとは思いませんでした。


言葉を読むことで、頭の中で勝手に映像が流れ出す。
それに、その映像は自分の今まで見てきた景色をミックスして作られるんですね。
しかもそれは意図しない組み合わせで、脳が勝手に映像をつくるので、夢を見ているかのようです。

これは作ってみたい。

と思いました。


小学生の頃から小説を読んでいれば良かったと深く、深く後悔しています。


それを今から取り返すつもりで勉強しています。

もしかしたら、「ただ一つの瞬間を描く」よりも、「時間の流れと展開を描く」ほうが、自分のやりたい事ができるのかもしれません。


4月始めのグループ展、「絵本の絵展Ⅶ」(フリュウ・ギャラリー様/千駄木)にて「星の海」という初めての小説を発表させていただきました。

そしてこの物語を元に日本画の展示をしました。

小説「星の海」 鉛筆画の挿絵が入っています。



初めての小説なので、フィクションですが自分の実体験を元に書くことにしました。

この物語のモデルになった場所があり、飛行機を取って実際にその場所に取材に行って、言葉でスケッチをし、その景色が見える窓辺で夜な夜な文を書きました。


実感のある言葉を書くために自分なりに出来る限りのことをして制作しました。

初心者の拙い文章にもかかわらず、手に取ってくださった方々、読んでくださった方々、感想をくださった方々、本当に有り難うございました。

大変励みになりますし、感謝してもしきれません。


毎日毎日、勉強不足に気づかされる日々です。
日常生活を送るに不自由ないだけの言葉しか知らなかったのです。

「日常生活を送るに不自由しない語彙力」と
「言葉で作品を作れるほどの語彙力」の間には想像以上に大きな差があるのだと痛感する日々です。

でもそれも、ただ言葉を知っているだけでは表面的なものでしかないので、きちんと自分の経験を通した実感のある言葉を話したり書いたりしていかなければと思いました。

この「月の呟き」も、自分が実際に思った事、感じた事を言葉にして、経験の伴った言葉を書くことを目指して始めました。

言葉という生き物は、難しいです。

何より、言葉だけにならないよう、発した言葉には責任を持って行動していきたいと思っています。

物語について話し始めたつもりが、いつのまにか言葉の話になりました。

言葉ついてはまた書きます。

拙い文章ですが、お付き合いいただき本当にありがとうございました。

暑かったり寒かったり不安定な気温ですが、どうかお身体に気をつけてお過ごしください。


それでは、おやすみなさい。






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