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日本の政治と金(第1回)

金にまみれた自民党政治


自民党の派閥が隠していた「裏金」が表に出てしまいました。その金額や規模の大きさからみても、リクルート事件以来の政治スキャンダルといえるでしょう。そしてまたしても詳細が明らかにされず、到底納得できない内容で関係者の処分が済まされています。
当の自民党は口を閉ざしたままですが、今回見えてきた裏側の実態を知れば知るほど、日本政治の闇の深さを感じざるを得ません。
日本国民は「失われた30年」によってあえぎ苦しんでいます。日本を蝕んできた政治と金の問題を今こそ改めなければ、この国がますます壊れてゆくことが懸念されるのです。

 

10億円もの金が隠されていた

 今回の事件は、神戸学院大学の上脇教授の告発状を発端とし、東京地検特捜部が異例の大規模捜査を展開して明らかになりました。
 それによれば、安倍派を中心に作られた自民党の「裏金」は5年間だけでも9億7千万円ありました。とてつもない金額です。そして関与していた国会議員は総勢86人にも及んでいました。

 本来、政治資金のやり取りは「政治資金規正法」によって収支報告書に記載しなければならないのですが、法を無視して記載していなかったため「裏金」と呼んでいるわけです。
 自民党は「還流金」などと姑息な言葉を使っていますが、その実態は表に出せない「裏金」であり、極めて違法性の高い「隠し金」と断じていいでしょう。

 そして特捜部が組織を挙げて捜査したにもかかわらず、結果的に起訴されたのは派閥の会計責任者3名と、悪質とされた議員3名とその秘書だけでした。それ以外の「4千万円以下」の議員83人は「無罪放免」となり、検察の判断基準にも大きな疑問が残りました。本来申告しなければならない金を隠していたわけですから、全て犯罪にされてしかるべきでしょう。

自民党議員裏金トップ10(NNN調べ)
(4千万円以上の3人のみが起訴され、以下83人は全て不起訴とされた)

 不起訴となった4千万円以下の議員は「記載忘れ」だったとの理由付けで、収支報告書を訂正してことが済まされています。訂正した中身も理屈の通らないものや、ただ「不明」とだけ記入したものなどデタラメそのもので、とても納得できるものではありませんでした。

 常識的に考えれば収支報告書に記載しなかった時点で、政治資金ではなく個人の金であったと判断されるべきものであり、本来税務申告しなければならないのですが、脱税案件として国税が動くこともありませんでした。

うやむやのまま逃れようとする自民党

 今はこのような事件の場合、捜査機関とは別に当事者が「第三者委員会」を設置して事件の全貌と問題点を明らかにし、コンプライアンスの強化など再発防止策を打ち出すのが通常です。去年のビッグモーターやダイハツの不正事件でも、そのような対応をとっています。

 それに対して自民党は事件の全容を明らかにせず、どのような経緯でこの問題が起きたのか、裏金が何に使われていたのかについては「隠ぺい」したままでいます。

 党の最高責任者でもある岸田首相は「火の玉になって」あるいは「命懸けで」対処するといってきましたが、実際の行動を見ると、党や自らの傷を最小限にしながら逃がれようとしているのは明らかです。
 しかし世論の逆風が収まらないのを見ては、その都度対応を小出しにするという悪手を繰り返し、全てが裏目になっているという体たらくです。

 党独自の処分についても、体裁を繕ったものにすぎない大甘のものでした。トップである岸田総裁や安倍派幹部が一切責任を取らないことも、世間の常識からすればとてもまともな話ではないですね。国民はもっと怒らなければならないでしょう。
 組織の上にいる人間には常に責任が付きまとうはずです。まして政治家であればなおさらでしょう。彼らはこのような事件でも責任逃れしているのですから、政治家として失格といわざるを得ません。いわんや平気でシラを切り続けているのですから、人としてもアウトでしょう。

真っ黒をシロと言い張る議員たち

 今回の事件は派閥の幹部が中心となって組織的に行ったことは間違いありません。安倍派では20年以上前から常態化していたといい、党が黙認していたことも疑いようがありません。

 事件の核心に居たと見られる安倍派幹部らは、国会では清廉潔白などと答弁しながら、党内での処分にはこれ以上抵抗できないと判断すると、手のひらを返して地元への陳謝に回っています。説明責任を果たさないまま党の処罰は受け入れ、次の選挙でも何とか当選しようと動いているのです。
  
 この国の行く末を担っている与党の彼らが反省の態度も見せず、それぞれの保身と党内での主導権争いに躍起となっています。そして次の総裁が誰になるのか、選挙はいつになるのかという政局に終始しているのですから、いったい何なのでしょうか。 

今こそ抜本的な政治改革を

 問題はこれを機会として、政治改革に取り組むこと、とりわけ抜け穴だらけでやりたい放題の「政治資金規正法」にどれだけ改正のメスが入れられるかだと思います。私たち国民はそれを厳しく監視しなければなりません。
 
 日本経済は「失われた30年」によって大きく沈下してしまいました。私はその元凶が自民党による「政治と金」のモラルハザードにあると考えています。せめてこれからの未来をよくにするためにも、政治と金の膿を出し切らなければならないのです。
(全6回) 

(#014 2024.05)
 


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