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ところでプランナーさんはどんな結婚式したんですか?

ウェディングの相談は、初めて会った人と約1~2時間、向かい合って話をするという、あまり普段の生活にはないようなシチュエーションだ。必要な情報は今のご時世、だいたいネットに書いてあるので、せっかくの対面の個別相談の機会にはなるべくホームページに書いてないようなことをお話しできればいいなと思う。

しかし、そうは言っても「そんなこと聞きたいかぃ?」と思う質問を帰り際にされることがある。

「ところでプランナーさんはどんな結婚式したんですか?」

この質問の主旨、目的はなんだろう。
初めて会ったプランナーの人となりに興味を持ってくださったのだろうか。志向やセンス、熱量が自分と合致するかを確認したいのだろうか。
もしや今聞いた説明が本当なのか、信用に足る人物なのか知りたいのだろうか。
それとも玄人の結婚式に興味が湧き何かヒントになるかもと思ってのことか。はたまた「今日の夕ご飯は何にする?」と同等の、単なる雑談なのか。


お答えします

「どんな結婚式?」という質問なので、まずは選んだスタイルやアイテム、演出などについてであろう。先に断っておくが30年前の話だから参考にならないと思うが、ちょっと笑える雑談の類として聞いて頂きたい。

*

まず、会場はその当時勤めていた式場だ。
私はその時まだプランナーではなかったが、夫がプランナーだったので準備はほぼ任せた。私が出した大まかな希望は、

◉お色直しは1回だけ
◉BGMは歌が入ってないインスト
◉花嫁の手紙は無し(母の希望)

その式場には当時チャペルは無く神殿のみだったため神前式一択だ。私の招待客は1テーブルに収まるだけの友人、親戚は多かったので各家庭代表一人。(親戚間のルールによる)
一方、上司や同僚は全体の半数を占めた。夫の方は親戚もご近所もいっぱい呼んだのでトータルでは190名になった。160:30くらい。両家のバランスなど気にしない。社員同士の結婚は『婚礼が1件減ったな~』と冗談交じりに言われたが、そんなことは知らん。

勤務先の社長夫妻に媒酌人(仲人)をお願いした。結婚式だけのお飾り的な役目だとしても、媒酌人を立て高砂席に4人で座るのが30年前の慣例であった。

【衣裳】
和装と洋装を1着ずつ。当時は4着が当たり前だったが、2着に絞った理由は、衣裳代を過分にかけ中座が多いのは好まないためだ。

ドレスはお勧めのものにした。内輪の人間にどんなドレスを勧めるのか、そのポイントは『新しく入荷してまだ誰も袖を通していないもの』。人気のドレスは何度もレンタルされ、お姉ちゃんのおさがり感が否めない。そりゃ新しいほうが良い。

これには日取りも関係してくる。内輪の結婚式は必然的に繁忙期を避けたニッパチ(2月8月)が多い。ハイシーズンに向けて新しいドレスが入荷される時期でもあるので、新しいドレスを誰よりも早く着れるのだ。しかし昨今では随時入荷するようなのでこれも参考にならないであろう。

当時の流行はサテンのプリンセスラインだったが、そのドレスは玄人一押しの柔らかな総レースだった。キラキラしていなくて控えめだが質の良い一品である。

和装は色打掛にした。神前式に色打掛でもまぁいいだろうと思ったのだが「式は白でしょ」とチェックが入った。私の顔に「サービスしてよ」と書いてあったのだろう。白打掛を無料で着せてもらった。
式は白。そこはアレンジするところではないらしい。

【装花】
白・ピンク・黄色、どれがいい?と聞かれ、白がいいと言ったかもしれない。お花の立ち位置はそんな程度だった。サンプルはカーネーションだったが、実際にはバラだったのでお花屋さんの1ランクサービスだと拝察。ブーケは衣裳の付属品の造花を一応選んだが、衣裳部が持ってくるのを忘れたとのことで、その場にあるブーケをあてがわれたが全く問題ない。

【演出】
ケーキ入刀もキャンドルサービスも言われるがまま実行した。友人スピーチ、同僚や親戚がカラオケを歌い、スライドショーが流れた。インストのBGMという私の希望は難題だったのか、はたまた内輪の特別感を出したかったのか「ピアノの生演奏を入れますからね!」と言われ、二人でありがとうございますと言ったがサービスではなく、ちゃんと請求書に追加されていた。花束贈呈の時だけインストではなく流行の邦楽がかかった時には『え?』と思ったが花嫁の手紙がなかったのでなんとか盛り上げようと思ったに違いない。

【司会】
夫が上手い人を指定していた。司会者さんは取引先の社長や役員も参列する披露宴とあって、いつも以上に張り切っていたのだろう。とりあえず花嫁である私を可愛い、キレイとえらく褒めちぎっていた。

【美容】
キレイと言ってもその当時の和装は水化粧で、白塗りにかつら、もう誰だかわからない。そしてお色直しで洋装になる時には白塗りを軽くふき取ってファンデーションを重ね、かつらを取りウィッグをつけるというヤッツケぶりだ。今は和装でも洋化粧なので同じ15分のお色直し時間でも美しく整うのでご心配なく。
後々写真を見返してみると、洋装やメイクは時代を映し見ごたえがあるし、流行に左右されない和装にかつらの普遍的な美しさはいつまでも色褪せない。2着でもメリハリをつければ早替え大変身サプライズなのである。

【写真】
水化粧にその当時の筆で描く修正を加えると一層誰だかわからない。撮った写真は知らぬ間にサンプルとして会場の壁に飾られたが、誰だかわからないので差し支えない。そうそう、動画も撮っていた!これは最近観たらすでに亡くなった親戚のおじちゃん達がみんな写っていると母が喜んでいたので、撮っておいてよかったと思う。

いい結婚式とはなんだろう

かくして結婚式は滞りなくめでたく納められ、出席した会長や社長は「いい結婚式だった」と言った。そりゃ皆口を揃えて言うお決まりのセリフだが、結婚式のプロが言う『いい結婚式』とはなんだろう。どこらへんが良かったんだろう。聞くことはできないのでわからないが、あくまで招待されたゲストの一人として言ったのだろうし、それが答えへのヒントだと思う。

日常的に結婚式を見て隅々まで知っているのに、何故ほぼ全部お任せにしたのかといえば、いざ自分事となったら気になるポイントが違うからだ。仕事では絶対に間違ってはいけない様々な重要ポイントは取るに足らないことに思えた。アイテムや演出などについて薄っぺらく長々と書いたが、本当のポイントはソコではない。

……ソコではないならドコなのさ。

「プランナーさんはどんな結婚式をしたんですか?」その質問の本当の答えは、結婚式をした花嫁さんたちの感想とほぼ同じだ。そしてそれは、ソコではないっていうモノを削ぎ落すほど際立つ。



現場からは以上です。

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