見出し画像

一足飛び-いっそくとび-考

【一足飛び】 順序を踏まないで飛び越えて進むこと。一気に飛び越えること。

(例文)私のnoteへようこそ!すきしてね!一足飛びだな。

お持帰りですか?

色とりどりのフルーツタルトが並ぶショーケースを私はのぞき込んでいた。フルーツ専門店だけあってタルトを覆い隠すほどのカットフルーツが宝石のようにキラキラ輝いている。吸引力、求心力、購買欲、魅力。ななななーななななー
・・・いやダメだ。今日買う物はお歳暮の箱入り果物であってタルトではない。私は今ラッピングの待ち時間を持て余しているだけなのだ。

すると、タルトに釘付けの私に店員さんが近づいてきてこう言った。
「お持ち帰りですか?それとも店内でお召し上がりですか?」

いや、まだ買うって言ってないから。
これは買う確率90%以上の類の店にのみ許されるタイミングだ。入口を入った時点で「買います」と言っているような店。例えばスタバとかマックでは店に行く=買う前提であり、メニューをのぞき込んだだけでオーダー前にこう聞かれても、買うことはもう決まっているので差し支えない。しかしここは果物屋だ。イートインスペースはあるものの、現時点では果物と同等の商品陳列に過ぎないのだ。

それともあれか?この店が果物屋だと思っている私が間違いであって、もはやメインはフルーツタルトのカフェなのか?

まぁどちらにしても買うか買わないか不明の客がショーケースの前を陣取っていては迷惑だろう。こんな時、大概はやんわりにっこり、
「今はシャインマスカットが旬です」とか、
「お取りしますのでお声がけくださいね」が妥当だろう。

このセリフは遠回しに「いつ買うの?今でしょ」と言っているのだが、それでも買わないのがガヤ客だ。考え方によっては、一足飛びで「お持ち帰りですか?それとも…」と聞くこの店員さんは、ガヤ客を瞬時に見極め、撃退する達人なのではないだろうか。空気を読むという割に隠語が通用しない現代において「買うの?買わないの?」というよりマシなのである。

ちなみに私が返した隠語は「タルトがきれいですね」だ。(月が綺麗ですねみたいに言うな)

次回はいつにしますか?

月に一度のお楽しみ、ネイルサロンに行く前日には「どんなネイルにしようかな」などとSNSで色やデザインをチェックし、オーダーしやすいように保存していそいそと出掛ける。

仕事でも提携しお世話になっているネイルサロンに通ってもう何年も経った。私の無茶振りにも高い技術でこなしてみせるスペシャリストだ。例えば砂浜で拾った小さな貝殻を持って行き、これを爪につけてほしいと言ってみるなど・・・加えてとりとめのない事をぺちゃくちゃ話す楽しい時間でもある。

こんにちは~!
ゆったりとしたリクライニングチェアに座り、オフしながらテレビとネイル雑誌を交互にみていると、アシスタントの子が目の前にカレンダーを差し出し、こう言った。
「次回はいつにしますか?」

いや、まだ施術してもらってないから。
もちろん仕上がりはいつも満足だし、来月もきっと来るであろう。
人気のサロンなので予約が必須なことも知っている。入れ替わり立ち代わり来店するので、会計のタイミングで次回予約をとるのは効率が悪いだろう。

わかる、わかるよ。でもさ、私は今「どんな色にしようかな~」ということで頭がいっぱい夢いっぱいなのだ。

せめて色やデザインが決まって施術している最中ならば、まだ仕上がっていないが許容範囲だ。そして是非クッション言葉を挟もうではないか。
「施術中恐れ入りますが、次回の予定をお聞かせくださいますか?」その後カレンダーを出す。

もしくは、あたかもデザインを決めるのに必要な情報であるかのように、
「デザインによっては3週間ほどで付け替えのタイミングになります」などと言えばデザインとスケジュールを同時に考えてくれる親切な人、と見えるであろう。ベテランともなれば施術をしながら「少し爪が伸びてきたら根元にこの色を足しましょう」などと2週間後の予約を取ってしまうのだ。

「いらっしゃいませ」から一足飛びで「次回はいつにしますか?」は初めて来店した客には言わないところを見ると、常連の厚意に甘えて♡といったところであろう。厳しい世界でがんばっている新人さんを甘やかしたい気持ちと、甘やかしてはいけないという気持ちが交錯するのであった。

大谷選手の大冒険も1歩ずつ。

世間は大谷翔平のニュースでもちきり。
彼は高校時代からドジャースのスカウトが来ていたらしいが、高校球児からいきなりドジャースという一足飛びの大冒険は、親でなくても心配になる。
はやる気持ちを抑え、ドジャースに勝る提案をした当時の栗山監督グッジョブ!そしてメジャーに行ってもエンゼルスだったからこそ自由に二刀流を貫く機会も与えられたのかもしれない。一千億の道も一歩からなのである。

敬遠されて塁に出ると、草野球の少年のようにいたずらな笑顔で盗塁をする。ドジャースでもどうか楽しんで、身体を労わり、自分がしたい野球ができるよう。栗山監督はもはや親目線だし、私も激しく同意なのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?