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気になるディテール

建築家による建築を語る文章は沢山ある。
隈研吾や、安藤忠雄がどう考えてるか。建築はどのような問題を解決すべきなのかなどなど。読んでもらうと、とても良いことが書いてある。どういうところにコンセプトがあって、それはどのような背景から読み込んだのかなど。建築を計画する上で可能にしたいこと、まちづくりにどう関係するかなど、目標や願いがある。そうした建築家の文章には大きな物語があり、少し大袈裟に見える部分もある気もする。もっとラフな話を聞きたいと思う時があるのだ。ただ、その部分を本にしても実に地味だろうなぁと思うし、「それで……?」となりそうだ。でも、実はそこが、家を建てようとする人や、お店を開こうする人が、「まず建築家に相談してみよう!!」とならない原因の一つでは無いかと思っている。建築家の志に共感して無いと頼んじゃダメとか、デザインに意識がないとダメだとか、何か大きな物語があったり、何か「建築家」って存在を大きく見せる様に、何か特別な存在であるかの様にしてしまってる気がする。展覧会もすごいし……。

そこが建築に興味がない人に伝わってない事の一つで、そのせいで、建築家に家を頼もうって人少ないのかもなぁと。
皆さん、建築家が建てた家とそうじゃない家って何が違うかわかります?
素敵な内装で素敵な装飾が…。実際に住宅を紹介する雑誌などはそういう感じである。最近だと、塗装の壁に木質の家具とアイアンがワンポイントで使われていて、フローリングやモルタルの床、ヒビもいい味だしてる。そんな感じのお洒落な内装がたくさんで出る。
そういう家が掲載されているし、実際に格好が良くお洒落だ!間違いない。でも、僕が気になってるのはそこではない。語られてない箇所がある。どこかと言うとディテールである。

「いやいやいや…。なんだい!ディテールの本なんか沢山あるやんか!!雑誌ディテールまであるやんか!!」と言う方もいるでしょう。「ディテールなんか細部やんけ!!神が宿ろうがそんな細かいところ気になるかい!!」とお思いだろう。でも実はそこだ。
確かに建築家はディテールに着いて話したがってます。しかし、話したいディテールって建築家同士での楽しみでもあって、僕が気にしたいディテールってそこではないです。ミクロに見るとそこなんだけど、そうではなくて、分かりやすいもう少しマクロなディテールを語った物ってあまり見た事ないなぁと。
それは見た目のディテールです。

そのひとつが「つなぎ目」です。

例えは建築家は外壁に窯業系サイディングをあまり使いません。と言って建築を知らない人は「かま…?サイディング?何それ?」となるでしょう?
「ようぎょうけいさいでぃんぐ」って読みます。
セメントなどに繊維質を混ぜて窯で焼き固めた物で建築の外壁に使われます。耐火性、耐久性に優れてハウスメーカーや建売によく使われています。とても多く使われ流通しており比較的安い材料となります。建売されている住宅のほとんどの外壁はこの材料と思っても良いと思います。
しかし、もの凄い量が使われている材料なのに、建築を紹介する雑誌やメディアでは使われた例を殆ど見る事がない材料だと言えるかもしれません。
で、多分僕も優先順位は低いです。
何故かと言うとつなぎ目があるからなんです。
建築家やデザイナーはこのつなぎ目がとても気になるのです。
窯で焼くと言う性質上、そして流通させるために大きさが決まっていて、その大きさを超える面を貼る場合、どうしてもつなぎ目が出てくるわけです。そのつなぎ目が目立つ。
写真を貼るが、赤でマーカーされた部分です。これが凄い目立つのです。時間が経てばたつほど、つなぎ目を埋めているシール材が変色したりして目立つ。
マーカー無い方と有る方を見比べてみると分かります。

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これが凄い気になるわけです。窓の横とかすっごい気になる。あとは特に角部分にはつなぎ目のラインが入ります。これがデザインとして考えるとやはり気になる感じがします。(僕は。)
なので、僕が設計する場合、つなぎ目がコントロールしやすい、金属葺、塗装、ジョリパットを使います。お金が有れば石とか使ってみたいですね。

この「つなぎ目」気にしない人にとっては気にならないのかもしれないです。ですが、僕ら建築家は、この材料の「つなぎ目」の見え方をすごく考えてます。建築のコンセプトや街への在り方について考えて、どこに線が出るのかを考えてます。例えば、下の写真の物件では、仕上げに使っているラワン材の企画サイズである910×1820のサイズ以内で治るように目地を計画してますし、あえてその目地を目立たせて、デザインコードに使っています。

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一見なんとなく決まっているように見える外壁の金属板の継ぎ目の指定をする場合も多いです。このように目地を設計することで、空間を整えたり、さらに無駄なく材料を使う事も考えています。


皆さんも街にある建物のつなぎ目を気にして見てみると面白いですよ。で、僕はそういう、つなぎ目に建築家の考え方が集まってると思います。

これが僕があまり語られていないと思ったディテールです。

このつなぎ目の扱い方は建築家によって様々です。だが、建築家と名乗ってる人はこの事に関しては意識的に扱ってると思います。

1人ご紹介を。このつなぎ目に対して異常な眼差しを向けている建築家に、谷口吉生と言う人がいます。
東京の上野にある東京国立博物館の法隆寺宝物館を観に行ってみると面白いですよ。建物の線。ほぼ全てが揃ってます。床の目地から手すりの桟まで揃ってます。設計、実施設計、そして現場監理時どんな作業量なのか…恐ろしくなります。

皆さんも興味があれば身の回りの「つなぎ目」を見つけてみると面白いですよ。気になりはじめると建築鑑賞の入り口に立った証です。皆さんも興味があれば身の回りの家外壁の「つなぎ目」を見つけてみると面白いですよ。

このほかにも沢山の気になるディテールがあります。言われないと気がつかないけど、建物や空間にすっごい影響のある箇所です。

こう言うところがあまり語られてない建築家の仕事でもあるわけです。

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