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くしゃしくしゃの紙に閉じめられた、真っ黒な愛情。 P024.

 ぼくは我慢強くない、んだと思う。それが功を奏するときもあれば、それによって失われている色々もたくさんありそうな気がする。でも、それもまぁ仕方ないと、自分の性質を受け入れて生きている。たとえば、今日これから書く内容なんかが、そうだ。

 ぼくはあがった息を整えて、iPhoneのカメラを母に向けた。いつにもなく緊張している面持ちで、くしゃくしゃになった紙を両手で持ってソファーに腰かけている。「いくよ」ぼくは言う。「ちょっと待って」母は下を向いたまま答える。ぼくは亀のように首を伸ばして、ぶつぶつ言っている母の手元を覗いた。

 太めのマジックペンで書かれた文字が並んでいた。決して上手いとはいえないけれど、丁寧に、いや一生懸命に、書かれているように見えた。それは何度も二重線で消されていたり、ところどころ四角で囲われたりしていることから伝わってきた。

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