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【突撃ぷちインタビュー】チャンスがやって来たとき、飛び跳ねられるだけの足腰は鍛えておかなきゃ。:刺繍作家yacmiiさん

「事実は小説より奇なり」などと申しますが・・・

「いやいや、そんなことないやろ〜」と下手くそな関西弁が飛び出してしまうほどの偶然が重なって、この記事が生まれることになった。

きっかけは、ビジネスパートナーであるいさのお父さんからのLINEだった。「今度、わたしの友達の娘さんが個展をやるみたいだぞ」そのことを、ぼくに教えてくれるいさ。驚くぼく。なぜなら、知っているどころかチェックをしていた、ほぼ日のTOBICHIで開催されるこの企画だったのだから。

◉ yacmii刺繍展「しぜんなふしぜん」

いさに少しやり取りしてもらって、突撃ぷちインタビューを敢行することに。

心まで晴れやかになるようないい天気のなか、青山のTOBICHIを訪れる。天気に負けないくらいの弾けるような笑顔であいさつしてくださるyacmiiさん。(あ、これはヤクミィさんと読むみたいだ)彼女の繊細な手さばきから生まれた刺繍の作品たちは、すごくイキイキとしている。インタビューでその秘密が明らかになったのだけれど、本物よりも「なんだか本物っぽい」独特の味わいがあるのだ。

虫眼鏡まで使って、じっくりと作品を鑑賞してから、立ちっぱなしでインタビューを敢行。これからの時代のクリエイターの働き方、人の心をたのしくさせるモノを作るために大切なことなど、たくさんの生きたことばを聞かせてもらえた。

(この焼きじゃけも)リアルにはなっても本物にはなれないじゃないですか。だから皮の脂身のプリッと感とか、ある部分を強調して必死に作って、みんなが頭の中で思っている「これって焼きじゃけだよね」というところに持っていきたいんですよ。

(「ほぼ日」のサイトより引用)

このことを聞いて、ジブリの宮崎駿監督の話を思い出した。プロデューサーの鈴木敏夫さんがこう語る場面がある。

「宮さんはね、好きなものを大きく描くんだよ。宮さんは飛行機が好きだから、宮さんの描く飛行機は現実にある飛行機よりも大きくなる。(実際に、『風立ちぬ』に出てくる飛行機は、現実の飛行機の縮尺よりもかなり大きく描かれているそうだ)宮さんのなかでは飛行機はこの大きさなんですよ。こうあってほしいという大きさで描いている。でも、そのほうが見るほうも気持ちいいんですよ」

しかし、宮崎駿監督は、誇張として大きく描いているのではなく、脳にとってはむしろ自然な大きさで描いているそうなのだ。

「見ていて気持ちがいい」うーん、言い得て妙!  yacmiiさんの作品たちにも、それって当てはまるじゃん、と思った。そのため、この話をyacmiiさんにすると、「そうなんですよー」と納得してくださっていた。

ちなみに、このサンマにもじつは、こんな秘密が隠されていたのだ。

鱗の向きに縫っていけばいいかというとそうではなくて、お腹のプリッとした感じを出したかったからうず状に縫っているんです。

そうして、続けて質問へ。

「これらの作品が生まれるきっかけは何なのでしょうか?」

多くの作品が、家族の思い出から生まれているです。じぶんの記憶を呼び戻しながら、ひとつずつの作品を縫い上げていきます。これ(ちょろりと生えるちっちゃな草:撮影不可)も、田舎の庭で母と雑草を抜いていたときの思い出です。これって、根っこが全然張ってないんです。でも、すぐに生えてくるから、「にくいなぁ」「にくいなぁ」と思っていた気持ちを思い出しながら作ったんですよ(笑)
この折り鶴の作品は、ロンドンに留学中に作りました。ちょうどそのとき、あまりにテロが多くて気持ちが落ち込んだんです。隣町が襲われたとか、向こうの友人の話などを聞いたりもして、いろんな感情が出てきて祈りというテーマの作品になりました。

(「ほぼ日」のサイトより引用)

一連のお話に耳を傾けながら、自身の記憶や思い出、感情から作品は生まれてくるのだなぁ、と。

最後にご自身のクリエイターとして活動、働き方についてのお話もお聞きできた。個人的には大好物のテーマで、もっともテンションが上がった。

「このほぼ日TOBICHIの刺繍展はどうやって実現したのですか?」

「持ち込み」から、はじまったんです(笑)。

驚く、ふたり。yacmiiさんは続ける。

あと、3年前に京都にある「minä perhonen arkistot」にて作品展を開いたときなんかも、自分から「持ち込んだ」のですが、そのときには実現しませんでした。しかし、しばらく立って向こうから、「やはり、やってくれませんか」と連絡が入って展示が実現したんですよ。

yacmiiさんの行動力は、とどまらない。

英会話はペタッピなんですけど(笑)、「飛び込みで行っちゃおう!」と、イギリスに単身で渡りました。「向こうでいつか展示会ができたらいいなぁ」と思って、ギャラリーを見て回ったんです。

「わぁ〜、すごい!  じぶんから積極的にアプローチされるんですね?」

(向こうからは)見てくれないですよね。いいものを作ることが大前提ですけど、チャンスやきっかけがあったとき、飛び跳ねられるだけの足腰は鍛えておかなきゃいけないな、と。それをやっていたら、自分で売り込むのみなので。そのあとは、タイミングだと思っています。(先ほど京都の「minä perhonen arkistot」での作品展のようなことも起こりうるので、期待を裏切らないように作り込みをやっておくのは大切ですね)

最後に、自分をプロデュースする方法もお聞かせくださった。

自分で自分をプロデュースするためには、選ぶことと挑戦し続けること。挑戦することは、先ほどまでお話をしてきたことだと思います。選ぶこととは、お仕事の声がかかっても、(条件が合わない場合などは)お断りすることも多いです。たとえば、(作り方を言葉にすることはできないので)ハウツー本を出したいと言われてもお断りしたりしますね。

ご自身が作った作品をたくさんの人に届けるための努力を惜しまない姿勢に、文章を書くという形で何かを生み出す立場のぼくは頭の下がる思いだった。

イキイキとした刺繍の作品たちと出会い、彼女のお話を聞くことで、ちょっと疲れ気味だった気分がいつの間にか吹き飛びスッキリとしていた。

この不思議なご縁をつないでくれた、いさとお父さまに感謝。ちなみに、いさとyacmiiさんは同じ名古屋のとある美大の同級生だったというオチ付き。

◉ yacmii HP:http://yacmii.com/
◉ yacmii Twitter:https://twitter.com/yacmii

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インタビューを終えて最後に、こんな素敵なシャツを縫ってもらいました。

えっ、ふつうの無地のシャツじゃんって?? それでは、ズーム。

さらに!

そう、「き」という文字を縫ってもらったのです。

yacmii刺繍展「しぜんなふしぜん」

11月4日(土)、5日(日)であれば、「なんかついてますよ?」刺繍シャツを縫ってもらえますよ。(図案は約10通り。ひらがな、アルファベット、数字はお好きなものを選べます)


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