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短編:【スエトモの物語】

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短編小説の物語はこちらです。 ◉毎週1本以上、継続はチカラなりを実践中!これらの断片がいずれ大蛇のように長編物語へとつながるように、備忘録として書き続けております。勝手に動き回…
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#ゴミ

短編:【思考する時、人は上を向く】

いつ誰に聞いたのか。 何かで観たのか。 『上を見れば果てしない。下を見たらキリがない』 たしか上を目指して自分なりに今を頑張れ、そんな言葉だったか。下を見て努力を怠るなという戒めだったような、そんな格言だった気もする。 近頃の鯉のぼりは、屋根より高いことはあまりない。川沿いで大量に吊るしていることもあるが、風が強い日にはくるくると紐に絡まってしまい、あまり美しくない。外国人観光客は珍しい光景だと必死に写真を撮っていたが、個人的にはどう撮影しても風情が感じられず、またその

【なんて素敵なディスプレイ】#02

すべてのモノにドラマがある。 「どうです?こちらの写真」 「公衆電話ですか。近頃メッキリ減りましたね」 「電話ボックスに、素晴らしい商品ディスプレイがございます!」 「商品、ディスプレイ…ですか?」 「日本酒の紙パックです」 「有名な、どこのコンビニでも見かけるモノですね。でもこれゴミですよね?」 「良く見てください!ワンカップでは無いんです!紙パックなんです!コレをこの場所で開けて飲んで飲み切っている…そこにドラマが見えませんか?」 「ドラマ…ですか?」 「コレをここに

【なんて素敵なディスプレイ】#01

すべてのモノにドラマがある。 「ヒーローとして生きるって…大変だよな…」 「ヒーロー?」 「ほら…あれ」 「あ!定食屋の客引きしてるじゃん!」 「だろ?」 「M7じゅう…なんだっけ?なんか銀河系の遥か遠い所からやって来てさ」 「いわゆる出稼ぎなワケだ…やっぱり、家族とか多いと稼ぎ頭は大変なんだろうな…」 「怪獣が現れれば活躍の場もあるだろうけれど、なんだな…最近では、街とか人間の暮らしを壊してしまうとか、倒した怪獣の始末が大変だとか、とにかく肩身が狭くなっているのは間違いな

短編:【見上げた屋上にはウミネコ】

ブルーテントから顔を出し見上げた空は、そのテントの青さと同じような色をしていた。下町の川沿いに並ぶブルーテントは、傍から見て感じる想像よりもはるかに頑丈で、多少の台風程度であれば凌げてしまう。事実昨晩上陸した大型台風によって、川の水量は増加し、ブルーテントの上と中は水浸しとなってしまったが、丈夫な骨組みはビクともせず、こうして翌日のお天道様を拝ませて頂けた。 半年程前から、私はここのお世話になっている。朝はお日様が出る前に街へ行き、ゴミ収集車が通る前の資源ゴミを回収する。資