マガジンのカバー画像

短編:【スエトモの物語】

126
短編小説の物語はこちらです。 ◉毎週1本以上、継続はチカラなりを実践中!これらの断片がいずれ大蛇のように長編物語へとつながるように、備忘録として書き続けております。勝手に動き回…
運営しているクリエイター

2022年9月の記事一覧

【リモート社員】:#2000字のホラー

この会社に入社して、半年が過ぎた。 20名弱の会社だから、社員全員の顔も名前も覚えたはずだった。 「山田さん、ちょっと良いですか?」 なに?と気さくに答えてくれる教育係の先輩に、気になっていたことを聞いた。 「いまはこんなご時世ですから、在宅も多くて、でも常に出勤している人って…8〜10名程度じゃないですか…もしかして私がお会いしていない方が、まだいらっしゃるのでは?」 「ん…一応リモートも含めて、野村さんは、ひと通り会ってるんじゃないかな?なんで?」 「ほら、あそこの座席…

【その光が落ちたなら】

儚ければ儚いほど、その雅な輝きは美しい。 季節の終わり、ひとつの終止符。 線香花火という風物詩は、火薬の量が多ければ、広く火花を広げるが、その反面、その重量で核となる火の軸が大きくなりすぎて、すぐに落ちてしまう。そして細く巻かれた先端から、徐々に太い部分に達し、一番華やかな光を放っている時こそが、最もその火の軸がポツンと切れやすく、それはまるで人の生き方や人気職業にも似た危うさに酷似している。 そう儚く感じてしまうからこそ、夏の夜の線香花火は美しい… 「バブル時代の恩恵なん