見出し画像

JICA隊員の球磨KUMAさんぽ#4〜命の食を伝える拠点「ひまわり亭」〜

JICA海外協力隊派遣前に、人吉球磨でグローカルプログラムに参加しているSuuuuusanです。
今回は、私のメインの活動先であるひまわり亭をご紹介します!

農村レストラン&農泊 ひまわり亭の今

古民家を移築して、25年前に作られたひまわり亭。コロナ・水害を経て、2022年6月現在は、10名以上の団体客を中心に、レストラン兼研修施設として運営されています。

プロジェクター完備のセミナールーム
キッチンスタジオとしても使える空間

新生・ひまわり亭は、レストランだけでなく、農泊拠点として、8名が宿泊できる3つの個室を備えています。

ゲスト用の宿泊室。防菌仕様でコロナ対策もばっちり。

オーナー・本田節さん

ひまわり亭のオーナーである本田節さんは、料理・食を通じて、女性のエンパワーメントからご自身の活動をスタートしました。
現在まで、グリーンツーリズム・防災・地域づくりなど、さまざまな文脈で活動なさっている、とてもパワフルな人吉のお母さんです!

梅の甘煮の作り方を説明する節さん

私の今のメンターであり、OJT上司であり、カウンターパートになります。

節さんの農泊の活動を広めるYouTubeもあります。

この動画は、山で包丁をぶんまわす節さんが危な、おもしろいのでぜひ一度見てみてください!笑

被災前のひまわり亭

ひまわり亭の起源は、37歳でがんとの闘病を乗り越えた節さんがボランティア活動を始めたときに出会った「老人給食」だったそうです。

老人給食とは、地域の高齢者の方に温かいご飯を作って届け、声かけをし、安否確認も図るというボランティア。この取り組み自体は今も続いており、先週私もご飯作りの方に参加させていただきました。

約60人分の老人給食を作る地域のおばちゃんたち

老人給食などのボランティアをする地元の主婦を集めた「ひまわりグループ」を経て、1998年、節さんが中心となり、地産地消の命・農・食をつなぐレストラン「ひまわり亭」を作りました。

キーワードは「もったいない」。フードロスを抑え、地域の産業を活かそうとする取り組みは、25年前から、今のSDGsを意識されていたとも言えるでしょう。

キーワードは「もったいない」!
・地域の財産!「おじちゃん、おばちゃんの知恵と経験と技と感性」がもったいない!
・築120年の古民家がもったいない!
・足下にある埋もれている地域資源がもったいない!
・地域の素晴らしい食材がもったいない!

当時のひまわり亭のこだわりは「もったいない」をベースに生まれた

その結果、ひまわり亭は毎日15名以上の地域のおばちゃんを雇用し、年間3万人をこえる研修及び来客を実現する人気レストランになりました。

被災前のひまわり亭
当時、提供していた「ひまわり御前」

新生ひまわり亭が目指すものとは

レストラン→研修施設へと変化

2022年現在、ひまわり亭はコロナと水害を経て、常レストラン営業から、研修施設としての利用を中心に、営業形態をがらっと変えています。

その理由には、オーナー本田節さんの体調不良や、2年前までのレストラン営業ではメインであったスタッフさんたちの高齢化があります。またコロナなども含め、レストラン営業をメインとして人を常時雇用するのはハイリスクであるという面もあります。

ですが、レストラン営業が常ではなくなったため、よかったこともあります。農泊として節さんが直接お客様をもてなす農泊の営業や、お客さんのニーズに合わせたオーダーメイドの研修を行いやすくなったのです。

団体客を受け入れるときには、節さんが客層や目的をヒアリングし、都度都度適切なメニューを組み立てます。節さんは数十年間、講演や勉強会、またさまざまなワークショップを開催しに日本中を飛び回っていた方。そのくらいお茶の子さいさいです。

例えば、以前いらっしゃったお客様は、東京の生涯大学の学生さんで、50代〜70代の方々でした。その方たちには、郷土料理の「よもぎ餅」を一緒に作るワークショップを開催しました。ひまわり亭の目の前の河原でよもぎを摘むところからスタートです。

みなさんよもぎをとってお餅を作るなど、幼い時以来久しぶりとのこと!
みんなでワイワイお料理をして、節さんとの交流もあり、大変盛り上がりました。下の動画はワークショップの様子をまとめたものです。

作ったよもぎ餅を頬張る参加者さんたち

今のひまわり亭でできること

ひまわり亭では、節さんが講師となって、さまざまな文脈での研修が可能です。

例:
■節さん自身の被災時の経験をもとにした防災食ワークショップ
…水害時、5か月間休まず人吉球磨を巡って炊き出しをされた節さん。その生きたノウハウはかなり聞き応えがあり、またみんなで調理する工程によって楽しいワークショップとなります。(一度テスト開催しているのでその模様も別noteにする予定!お楽しみに)
■季節ごとの食材を使った郷土料理のワークショップ
…春はよもぎ餅、よもぎが終わればちまき、ちまきが終わったら次は何かな?よけまん(おやつ)だけでなく、だご汁やつぼん汁といった汁物もいいかも。メニューはその日の食材も見て、節さんが提案してくれます。みんなで人吉球磨の郷土料理を教わりましょう!
■「発酵」を学ぼう!
被災時にも使える、真夏の常温でも保存が効く発酵食を学ぼう。また、被災時に大量に送ってもらったものの、使い切らなかった米がもったいなくて作った「米糀」があります。その使い方を学ぼう。SDGsも意識した、フードロスを減らす発酵食ってどんなものだろう。
■農泊について動画やスライドを使って講義
人吉球磨では、宿泊の選択肢として、旅館やホテルだけではなく、農家さんの家に泊まる「農泊」が充実しています。節さんは九州の農泊推進のまとめ役をこなしながら、農泊の地域コーディネーター的な役割も担っています。農泊って何?という人から、人吉球磨に宿泊の拠点を探す人にも、農泊の楽しみ方をレクチャーします。

節さんが一番大事にしているのは「食」。ジャンルがさまざまに見えますが、どのコンテンツも、すべてが食につながっていきます。そして、節さんが活動のキーワードにしているもったいない精神はフードロスを抑え、SDGsの視点でも価値がある取り組みです。

また、ひまわり亭では地産地消をモットーにしたお昼ご飯を提供しています(2022年6月時点:10名以上の団体客のみ)。ご飯を食べながら、地元の食材の解説や、被災時のひまわり亭の話を聞くという研修の組み方をするケースもあります。

※注意:
2022年6月現在、ひまわり亭の運営は節さんが一人で行っています。急な予約は難しい場合がありますので、前もってのお問合せをお願いいたします。

協力隊研修中の私のミッションについて

では、グローカルプログラムでの私の活動はどんな内容になるのでしょうか。

ひまわり亭の課題

2か月程度ここで活動してみて、現時点でのひまわり亭の課題は大きく分けて3点ほどあるように見えます。

  1. 経営戦略が決まっていない

  2. 人材不足

  3. 情報発信が弱い

5月19日の研修中間発表の資料から抜粋

コンピュータ技術隊員としてわたしにできること

IT企業で3年間働いた私ですが、その経験も活かしつつ、下記のような活動を行なっています。

  • 経営戦略が決まっていないことに関して
    都度都度で直接のヒアリングを重ね、話してもらうことで節さん自身の意志を言語化しました。また、JICA隊員を動員して農泊のモニターツアーを実施し、アンケートを取って、対象としたい顧客層を炙り出す作業を行いました。

  • 人材不足に関して
    今後新しいスタッフさんが入った時に渡せる作業マニュアルと、ゲストの部屋に置く宿泊案内を作成しました。スタッフにもゲストにも、すべて節さんが口頭で説明しないとわからなかったことを、ファイルを読めば解決するように残しました。

  • 情報発信が弱いことに関して
    結局、ウェブサイトも含め、各種アカウントに入れないという問題が解決できなかったため、こういった自分のnoteで発信することしかできていません(人材不足の今、人が来すぎても困るので、わざと作成しなかったという面もあります)。

今後のひまわり亭で誰かに助けてほしいこと

他のプロジェクトもたくさん動かしている節さんだけでは、ひまわり亭の運営に手が回らないのは当たり前です。
ひまわり亭で動ける人材が切実に必要です。特に事務作業ができる人が欲しいとのことでした(今後募集がかかると思われます)。

また、節さんは、今後、人吉球磨の関係人口になってくれるような人に訪れてほしいと願っています。たくさんの地域外の人に実際に訪れてほしいのはもちろん、地域活性化に興味があるような層にきちんとアプローチできるような情報発信を戦略立てて行えるといいのだろうと思います。

終わりに

私の滞在もあと少し。最後まで、できることをしたいと思います。


被災時に海まで流され、帰ってきた800kgのきじうまくん
夕暮れのひまわり亭が大好き
ひまわり亭の目の前には球磨川が流れる

▼未来のJICA海外協力隊員が暮らして気づいた、人吉球磨の魅力を発信するマガジンはこちら。
よろしければフォローお願いいたします!


もしよろしければサポートお願いいたします。 いただいたサポートは新たな旅の資金とさせていただき、新しいnote記事のための経費とさせていただきます。