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右も左も分からない

わたしは左右が分からない。正確に言うと、左右を判断するのに時間を要する。いわゆる左右盲である。ちなみに、わたしは左利きだ。

左右盲のわたしの日常はたまに大変。友達と歩いている時「次、右に行くで」と曲がり角の直前で言われても、わたしは曲がるまでに右がどちらかを判断できないので、とりあえず友達についていく。もし自分が前を歩いていて、友達が後ろからそれを言った時は、「右ってこっちで合ってる?」と聞きながら曲がる。たまにそれで左に行く。自分がマップを見ながら案内するときは、基本的に「こっち」と「あっち」で指をさしながら説明する。考える余裕がある時は、頑張って左右で方向を教えるが、難しい。

体育の授業も苦痛だった。右足から踏み込めとか、左手を下にとか、そんなん分からんて!と心の中で叫びながら体を動かしていた。右も左も考えなくていい水泳と縄跳びの授業は好きだった。

あと、左右盲が困る代表的なシーンは視力検査。穴が空いている方が見えていても、それを左右どちらの言葉で表して良いかがぱっと分からない。わたしは普段コンタクトレンズを使っているため時々眼科で視力検査を受けるが、答える時にじっくり考えないといけないから疲れていた。最近は指と声を併用するようにしている。

一度、あまりに自分が左右を判断できないために「右と左に縛られる世界はダメ!」とか無茶な主張をしたこともある。もし左右がなければ、人は何で向きを表していたのだろう。

ところで、左右盲は利き手を矯正された人がなりがちらしい。わたしは左利きを矯正されずに育ったのに、どうしてこうなったのだろう。そういえば、わたしが小さい頃の数少ない記憶の中に、左右の概念を何度教えられても理解できず両親に怒られるというものがある。もしかして、他の子供たちは簡単に左右を理解していたのか。

世の中のものは大体右利き用に作られている。改札、スープのお玉、ハサミなどなど。そういえば、昔飲食店でバイトをしていた時も、たくさんの調理器具の仕様が右利き向きで一々困っていた。そのため、左利きの人は小さなストレスが積み重なって寿命が短くなるとかなんとか。わたしは左利きでさらに左右盲。長生きはしたい。もし、右手に「右」、左手に「左」とタトゥーを入れたら、左右盲は改善されて、ストレスも軽減されるだろうか。しかし、これはきっと得策ではない。ああ、こうやってイライラ悩むことも、寿命を短くする原因なのか……。

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