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渋谷が復活?! アニメ・マンガ・ゲームで新潮流

渋谷駅からほど近いビルの地下2階にNANZUKAという現代アートのギャラリーがあります。ここで6月9日からちょっと面白い個展が始まりました。
「Relics of Kanto Through Time」とタイトルされた展示は、「ポケットモンスター」に登場するキャラクターやカードを題材にした立体アートです。ダニエル・アーシャムという世界的に著名なアーティストが、化石化したポケモンとのコンセプトで表現しています。
村上隆が「ドラえもん」を作品に引用するなど、現代アートの世界では近年、日本のポップカルチャーの引用がトレンドになっています。

今回、気になったのは、そんな潮流に加えて、渋谷エリアにギャラリーがあることです。現代アートのギャラリーは六本木や湾岸地域が一般的ですから、NANZUKAの選択は目立ちます。
実はNANZUKAは昨年11月に公園通りに再オープンした渋谷PARCO 2階にも「NANZUKA 2G」というスペースを設けています。ここではポップカルチャーと融合するようなアートをグッズと共に販売します。
現代アートは長らく一部の愛好家のものと思われてきましたが、NANZUKAは別のアプローチです。最新カルチャーに興味がある若者に目を向けます。

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渋谷PARCOにはNANZUKA以外にも、ファッションブランドショップや雑誌「美術手帖」のリアルショップなどがあります。さらにポケモンセンターや「少年ジャンプ」のテーマショップ、e-sportsカフェなどもあります。
ファッション、アート、デザイン、そしてアニメ・マンガ・ゲームが並ぶわけです。2020年の日本のカルチャーを新たなかたちで切りだします。多様性とクロスカルチャーです。

ここで以前、僕がこの日経COMEMOにも取り上げたブシロードの創業者の木谷高明氏のインタビューを思い出しました。木谷氏の「「池袋」と「渋谷」の時代が来る」との言葉です。

当時は「えっ!」と思いました。渋谷がカルチャーシーンを引っ張っていた時代は確かにありました。90年代の渋カジブームや渋谷系といった音楽のムーブメントなど。ただそれらは音楽ショップや映画館の減少や、相次ぐ再開発での人の導線の分断で過去のものと思っていたからです。
それに中心はファッションやインディー音楽、ミニシアターであり、アニメやマンガ、ゲームとは少し縁遠く思ってました。
しかし木谷氏はこう言います。

“IT企業があって若い人が渋谷に集まったら、そこに向けた小売店やサービスが必ず出てきますよ。
渋谷はちょっと違った意味でこれからの時代を迎えるはずです。”

昨年秋にITの世界的巨人グーグルの日本拠点が、9年ぶりに渋谷に移って話題を呼びました。ミクシィやサイバーエージェントといった有力企業も渋谷あります。確かにそこには感度の高い若い世代が多くいます。さらに両社をはじめ昨今はアニメ事業への進出を強める企業も増えています。あらためて渋谷を見渡すと、木谷氏の指摘には納得がいきます。
IT企業やゲーム企業、あるいはちょっとしたお洒落なカルチャーは、2010年代に急激にアニメやマンガに接近しました。そうした企業で働く人たちは、アニメ、マンガ、ゲームをごく普通に受け入れているのでしょう。

新しい潮流が現れる場所として、渋谷はぴったりです。最初に紹介したNANUZUKAは、この新たなニーズをアートの分野で取り入れているわけです。渋谷PARCOの数々のコンセプトショップも同様です。こうしたクロスカルチャーの試みは、今後も増えそうです。

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かつての渋谷のカルチャーパワーがなくなったのは、渋谷のオフィス不足も理由と言われています。IT企業に向けたオフィスがなく、渋谷で成長した企業は六本木や新宿に次々に移っていきました。それが街に勢いがつかない理由というわけです。
しかし近年の渋谷近辺の相次ぐ大型開発がそうした様相を一変させています。さらに現在も大型再開発は続きます。IT企業の集積は、さらに進みそうです。
それが新時代のカルチャーを牽引することになりそうです。渋谷は池袋や秋葉原、あるいは中野といった街とは異なるかたちで、ポップカルチャーの吸引力と発信力を高めていきそうです。



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