バンドマン、家を買う。
バンドマンがベッドタウンに新築一戸建てを購入した。
ローンは安い中古車が買えるくらいのエレキギターを買う時以来だったのだが、文字通り値段の桁が違うのと、家を買う時になって初めて知ることが多かったため、今後同じような道を歩むかもしれない人達へ向けて記す。
家を買うと決めるまで
バンドマンと自称しているが、実際は定職に就きながらその合間にリハやライブを行う、いわゆる兼業バンドマンではある。今年はアレのせいでライブはほぼ出来なかったのだが……。
そんな中、家の購入に踏み切った理由の1つには「新しい機材として家が欲しかったから」というものがある。
欲しい楽器は実務の面でも趣味の面でも大体買い揃えたのだが、それをマンションの一室で使う場合にどうしてもマンションだと好き勝手に大きな音を出すことは出来ない。バンドマンだって、お隣さんとの関係に気を配る善良な一市民だ。
しかし、一戸建てであれば、ある程度自由に音は出せるし、工事費さえかければ、部屋の窓を二重窓にしたり防音工事を施したりと部屋自体をいじることも出来る。
故に、家は機材である。
ちなみに、「賃貸の更新が近付いていて更新料をどうしても払いたくなかった」「家族の都合で部屋が多く必要だった」といった至極真っ当な理由もあることは付け加えておく。更新料という首都圏だけの謎文化、早く滅んでほしい。
また、楽器と家には共通点がある。それは「リセールバリューが比較的高い」という点だ。
今でこそ、メルカリの普及で要らないものを売るのは普通になったが、その遥か昔から楽器は中古市場が非常に活発である。楽器は買取なら上手く行けば定価の3~4割程度、個人間の売買であればもっと高く売ることも出来る。バンドマンは金がないので、そんな時に楽器を売ればそれなりの値段になることを知っている。家も同じで、よほど辺鄙な所にあるものでなければ、売ってもそれなりの額になるのは何となく分かるだろうと思う。
このことから、「今後生活の変化や過不足があった時は家を売って住み替えれば良いだろう」と考え、家の購入へ踏み切ることにした。
不動産屋の選定
物件探しは当初、エリアではなく都心へのアクセス時間から決めており、戸建てが前提、更には新築よりも中古の方が良いだろうと考えていたため、候補は数十、戸建てとなれば場所も郊外になるため相当とっ散らかってしまった。
通常、物件探しは憧れだったり縁のある場所に住みたい!というのが一般的らしいのだが、私がこれまで住んでいたのは端とは言え23区内だったこと、そのエリアで戸建てが条件で予算に収まる物件がなかったこと、そもそも住む場所に憧れがなかったことからエリアを決めていなかったのだった。
最初の候補を絞るために、都心へのアクセスを考慮した上である程度最寄りの路線やエリアを決めて物件を探した方が良かった。
そんな中、何の気なしに不動産屋へ資料請求をしてしまい、そこからはその店舗の担当者に物件探しや内見をお願いすることになってしまった。
その後、担当者とのやり取りで希望する条件がある程度まとまり、内見を進めていく上でイメージを固めることが出来たのは結果的にラッキーだったのだが、不動産業界には「内見をお願いした時点で不動産屋を変えてはいけない」という暗黙の了解があるらしい。今回の担当者は人柄も良く、素人質問にも丁寧に答えてくれる素晴らしい方だったのだが、中にはポンコツを引いてしまい余計な問題や心配が発生する場合もある。ちょうど同時期に家を買っていた友人がポンコツを引き当てた。
ちなみに、内見をしたのは夏だったのだが、何とか社会的信用のある人間であろうと努めるべく、普段はあまり着ない白いTシャツを着て、仕事の話やら世間話やらをひたすら振り続けた。その結果がどうかは分からないが、家の購入時に色々便宜を図っていただいたので、少なくともこの頑張りは無駄ではなかったと思う。良いサービスを受けたければ良い客であれ。
物件の選定
休みの日は昼頃から夜になるまでひたすら内見に費やした。1日8件程度を計3日で20件以上物件を見て、中古はリフォームする時間がなければそのまま住むのには結構キツいこと、新築戸建ては間取りや雰囲気が何タイプかに収束することを把握することが出来た。
最後、都心にはまだ近いが高い中古と都心からは遠いが安い新築に絞り、物件の周辺をしぱらく散歩し最寄り駅やスーパーの有無を確認した後、新築戸建てに決めたのだった。
同じ場所にあればもちろん中古の方が割安なのだが、新築を見てしまった後だとそのまま住むのは正直厳しいと感じ、リノベーションが前提になるのだがそうなると時間とお金がかかる。今回は更新が迫っていることで取り得る選択肢が縛られてしまったため、「更新が迫っているから家を買う」のはあまりオススメ出来ない。反面教師にして欲しい。
ちなみに、家を買うメリットに「リセールバリューが高いこと」を挙げたが、ここを重視するのであれば国土交通省が提供している土地総合情報システムから指定したエリアで売れた物件や土地の価格、年単位での土地価格の推移を調べて価値が下がりにくい場所や、不動産サイトで物件価格を調べまくり相場を掴んだ上で割安な物件を狙うのが良いと思う。
支払額と住宅ローンの罠
物件を決めたら本契約に移るのだが、売主(今回であれば家と土地の権利を持っている住宅メーカー)との本契約へ進むには手付金として100万円が必要になる。このお金は本契約を無事終えれば戻ってくるが、このお金は何としても捻出しなければならない。
住宅ローンは、現在の年収と勤務先の信用性、現在借りているお金や過去に組んだローンで返済が滞らなかったかを見て審査される。奨学金は借りている人も多いかと思うが、バンドマンは楽器を買うために組んだローンの返済履歴も見られることになる。今楽器ローンを組んでいる人は今後の人生で社会性を問われることになる。金はちゃんと返そう。
また、不動産屋によっては住宅ローンを組む銀行を絞っている場合があるらしい。私の場合は最初の候補で審査に落ち、次の候補は2つの銀行から金利の安い方を選ばせてもらった。より安くするのであれば、自分でインターネット銀行を選ぶというテクニックがあるのだが、実店舗がないことから安い代わりに、書類のやり取りが郵送オンリーになるため時間がかかるそうだ。時間に余裕があればこちらを選んでいただろうが、更新間近に迫っていたため、実店舗のある銀行でローンを組むことにした。
ここでも時間に迫られて選択肢が狭まってしまった。「更新が迫っているから家を買う」のはこういった理由もあり、基本的にはあまりオススメ出来ない。
金利を選ぶ
晴れて住宅ローンの契約に進んだのだが、ここにも重要な選択肢が待っている。金利だ。楽器に限らず分割ローンを組んだ諸氏なら分かると思うのだが、金利なんてまとめて払うお金が手元にないから仕方なく払うお金なわけで、こんなもの安ければ安い方が良いに決まっているものである。それがたとえ、金額の割には安いと言われる住宅ローンでもだ。
その上で、景気によって金利が変わるが安い変動金利と、景気によって金利は変わらないが高い固定金利のどちらを利用するかを選ぶ必要がある。上述の審査結果によっては、変動金利と固定金利を混ぜれば通るというパターンもある。僕は最初このパターンであれば通ると言われていたのだが、担当者の頑張りによって変動金利だけで良い、と銀行から了承を得られた。
正直、昨今の情勢を考えるとこれから10年、20年はおろか、アレのせいで半年後の見通しだって立てるのが難しい。ここは本当に悩んだ。
固定と変動で金利の差があまりにエグい点、人口減少に転じている国がこれから滅茶苦茶に景気が良くなることはないだろうと考えた点で、変動金利を選ぶことにした。この選択は本当に自己責任で頼む。
また、銀行独自のプランとして、金利を上げる代わりに特定の病気や事故による障害を負った場合に住宅ローンを免除する、というものが紹介された。元々、住宅ローンには団体信用生命保険という保険がセットで組み込まれており、簡単に言うと「契約者が死んだらローン免除」という保険である。
銀行のプランは、金利が上がるのと引き換えに、死亡までは行かないにしても収入が減るような事態に陥った場合でもローンがなくなるというものだった。
ただ、このプランを薦める銀行員がとにかくデリカシーがなかった。
3大疾病や事故のリスクを煽り、家族へ与える不安を煽り、日本人を海に飛び込ませる例え話のように皆契約していますよと迫る、控えめに言って悪魔のような人間だった。
流石にこの人を人とも思わない営業行為にはブチ切れ、「こんな物言いをする営業へ絶対に余計な金は払わん」とばかりに、その場で自身の年齢から20年以内のガン発症率が1%より低いこと、脳卒中や心筋梗塞は普段の生活習慣でリスクを減らせること、車は直近で持つ予定はないから事故に遭うリスクも極小であること、と冷静に判断してこのプランを回避したのだった。
ちなみにガン発症率は国立がん研究センターのサイトを参考にしている。
こういった保険の類は基本的に胴元が勝つギャンブルであり、安易に乗ってはいけない。顧客の幸せを考えた上で保険の営業をかける人はそうそういない。人の幸せなんざ知ったことではないのだ。
支払いと引き渡し
金利の選択も終わりローン本契約と支払いに移るのだが、家の購入にあたっては物件以外のお金もかかる。
まず、物件探しに奔走いただいた不動産屋に対しての仲介手数料だ。いくら払うかの上限は法律で決まっている(参考サイト)のだが、基本的にはその上限を払うことになる。
次に、住宅ローンを組む銀行に対しての手数料も必要になる。これに関しては上述の件もあり微妙に納得も行っていなかったのだが、支払い後のアンケートでお気持ちを表明させていただいたので、まぁ良しとする。
最後に、物件の戸籍を書き換える書類を代わりに提出いただく行政書士に依頼するお金である。上2つよりかは少額なのだが、とは言え10万くらいはかかる。
この3点を合わせると、物件の1割に該当するお金がかかる。物件を調べる時点で、その値段のプラス1割が予算に収まるかを考えておくと、予算からはみ出す心配はないはずだ。
ローンの準備もでき、銀行の一室で売主、不動産屋の担当者、銀行員との手続きを済ませ、晴れて新築一戸建てと住宅ローンの持ち主となったのだった。
新居契約からかかるお金
あとは新居に引っ越せば終わり、かと思ったら全くそんなことはなかった。新居には、賃貸なら当然のようにあったものが結構ない。
まず、カーテンレールがなかった。戸建ては窓が多くて採光が図れる分、それだけのカーテンが必要になるため、レールの取り付けを依頼し、そこに合わせるカーテンを買う必要があった。
次に、エアコンがなかった。冬は最悪着込めば何とかなるにしても、夏になければ文字通り暑さで死ぬ。これは部屋の数だけ必要になる。
更に、照明がなかった。賃貸の時に買っていたものをある分だけ取り付けたが、これも部屋の数だけ必要になる。
そして、インターネット回線やテレビアンテナがなかった。引っ越してから頼めば良いだろうと楽観視していたら、問い合わせた所で工事に1ヶ月くらいかかることが判明した。そのため、本契約が終わった時点ですぐに連絡した方が良い。テレビはなくても何とかなるが、今やインフラの1つであるインターネット回線がないのは本当に困った。
家電や食器は賃貸の時から使っていたものを持ってきたのでお金はかからなかったのだが、新居に合わせてこれらの足りないものを買い揃えると100万くらいは別に必要なんじゃないかと思う。ここで本契約時に戻ってくる手付金を使えば良かったのだが、このお金を何故か頭金に当ててしまったため、実は上に挙げたものは全部揃えられていない。手付金は新生活にかかるお金として素直に返してもらっておいた方が良い。
住宅ローン減税について
元々は消費税増税対策で始まったのが住宅ローン減税である。これは、入居してから13年間、最大40万円までの範囲でローン残高の1%を税金から差し引いてくれる制度のことである。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00210/121100004/
当初は新居であれば2020年末までに入居予定だった対象がアレの影響で2021年末、更には2022年末まで伸びた。
会社員か団体職員であれば毎年の年末調整で確定申告は不要なのだが、家を買ったその年に住宅ローン減税を適用させるには自身での確定申告が必要になる、と案内があった。来年、再来年家を買う人も同様だろう。
確定申告はふるさと納税にワンストップ制度が適用される前、一度行ったことがあるのだが、その時は源泉徴収票にふるさと納税の領収書か証明書を最寄りの税務署に郵送で送って済ませた覚えがある。そこそこ面倒ではあるが、慣れない書類を送るのが面倒というくらいのものだった。
また、住宅ローン減税に限らず、何らかの理由で確定申告を自身で行う場合、ふるさと納税のワンストップ制度の申請が無効になってしまうらしい。そのため、住宅ローン減税とふるさと納税を合わせて申請する必要がある。
節税と言うとセコく聞こえてしまうかもしれないのだが、払わなくて良いものであれば極力払いたくないのは自明である。せっかくのサービスを受けない手はない。
まとめ
途中からバンドマン関係なく、ひたすら家を買うレポートになってしまったのだが、知らなかったけど結果的に上手く行った点と知らなくて失敗した点が半々くらいで、事前に知っていればどうにか出来たことが多かったように思う。
今後家の購入を検討する際に少しでも参考になれば幸いである。
ちなみに、バンドマンという文言で興味を持ってくださった方には、所属バンド「Mint kit sand」の音源を貼っておくので聴いてね。SpotifyやApple musicのサブスクリプションサービスもしっかりフォローしている。
Twitterもやってるのでフォローもよろしく。
この記事が参加している募集
効果効能として、欲しい機材を買ってはしゃぐ私か好きな服を着てはしゃぐ私が見られます。買ったものは記事にします。よろしくお願いします。