インターネット広告市場の基礎講座(初級編)
私は、この10年間インターネット広告市場を相手にしたビジネスをやってきました。
・地域情報の検索エンジン(チラシ市場からのリプレイス)
・R25(マスメディア市場からのリプレイス)
・アドネットワーク事業(アドテクノロジー事業)
・広告最適化のトレーディングデスク事業(高度化するマーケティング業務のアウトソース)
・グロースハック(ウェブサイトの改善業務のアウトソース)
また、マーケティング担当としてサイトに集客する業務も担当し、数十〜数百億の予算からいかに効率良く集客していくか?戦略を立てながら実行していくことも担当していました。
つまり、クライアント(広告主)としての経験と
パブリッシャー(媒体社)としての経験と
ソリューションベンダー(アドテク事業者)としての経験と
エージェンシー(代理店)としての経験という比較的稀有なキャリアを歩んできました。
いろんなインターネットマーケティング市場のデータがありますが、少し変わった切り口でこの市場を見て行きたいと思います。
インターネット広告市場の概況
まず、市場の概況を見てみます。
広告業界の市場データと言えば電通の出している「日本の広告費」が有名ですが、インターネット広告をさらに細かく分解して出しているD2Cのインターネット広告市場規模推計調査が非常に詳細かつ使いやすいデータを提供してくれています。
インターネット広告市場規模推計調査 (D2C)
今回は、このデータを基に市場のトレンドを把握するところからはじめたいと思います。
デバイス別:PC市場は長期的なダウントレンドに
まず、モバイルの広告市場が伸びているのは明確ですが、着目したいのはPC広告市場は2012年からすでに長期的なダウントレンドに入っているということです。
そして2015年に逆転しています。
参照:インターネット広告市場規模推計調査 (D2C)
なぜ、このことに注目するか?というと広告主の観点からするとPCのコンバージョンシェアを見ると、まだモバイルよりもPCの方がシェアが高い業種が多いのです。
では、なぜモバイル広告市場が伸びているか?
それは、アプリやゲーム、デジタルコンテンツなどのモバイル専業企業の市場が伸びているからです。
このネット専業の市場が市場の伸びを牽引しているのです。
スマホゲーム市場は、国内だけで9000億を超えるものと推計されています。
広告宣伝費率を15%と仮定し、その半分をモバイル広告に使っていると想定すると約600~800億前後は、ゲームだけで占めていることになります。
一方、2014から2015で見るとPC広告市場は-12%のダウントレンドです。
全体が12%伸びている中なので、大きなダウントレンドです。
一方でトラフィックはどうなっているのでしょうか?
ニールセンのデータを見ると、5206万人から5100万人と3%しか減っていません。滞在時間は3分(5%)増ということを考えると単純に広告市場として下がり過ぎている可能性があります。
参照:スマートフォンからのインターネット利用者(ニールセン)
モバイル広告市場が過熱している中で、広告主であれば冷静にPCでの市場にあえて着目するという逆張りもアリではないでしょうか?
種類別:成果課金型の停滞
次に広告の種類別のトレンドを見ておきたいと思います。
まず全体として予約型から運用型へのシフトが見られます。
これは、この数年起きているトレンドで、プログラマティック広告の成長などによるところが大きいと言われています。
一方の成果課金型の成長が止まっています。
もう少し、細かく内訳を見てみましょう。
運用型を検索、ソーシャル、それ以外(主にディスプレイ)に分けてみると、ソーシャルとディスプレイが大きく伸びていることがわかります。
特にソーシャルの伸びが著しいですが、これはほぼfacebookの伸びとみて良いかと思います。
この中をさらに、モバイルとPCで分けてみてみます。
この中で成果課金以外の全ての種類が堅調に伸びています。
成果課金型のうち、リワード広告というインセンティブ付きのアプリインストール広告が、GoogleやAppleなどのプラットフォーマーから淘汰されていく方針によるところが大きいと言えます。
【アップトーキョー開設1周年】リワード広告に淘汰の波 2015年に50億円の規模縮小、16年も30%減とCyberZが予測
一方のPC市場は、検索と予約型のダウントレンドが激しいことがわかります。
PC向けのインターネット広告市場の覇者Yahooの影響が大きいものと思われますので、それをみてみたいと思います。
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