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許された空間、ストリップ小屋

怒涛の数ヶ月を送っておりました。「今、人生で一番幸せなんじゃなかろうか!?」と思う瞬間があったり、はたまた形容し難い喪失感に苛まれる日々があったりと、精神的に忙しかった…
ここ最近は、肉体的に忙しくしていれば喪失感くんの存在を一時的に忘れられることもあるのですが、ふと一息ついて隣を見やると「あ、こいつまだおる。」ってな感じで、奴との共同生活はまだまだ続きそうです。

さて!前置きはこのへんにして、数ヶ月ぶりのnoteはストリップについてです。
先日知人に連れられて、東大阪の布施駅にある晃生ショー劇場というストリップ小屋へ行ってきました。

100点の場末感

鶴橋などに近い、大阪の下町エリア。駅から徒歩5分弱、飲み屋が軒を連ねる界隈にちんまりと現れる。

開演は昼の12時なのですが、知人にはなぜか10時30分集合と言われました。
(さすがに早くね?)と思いつつ、素直に早起きしてストリップへ。健康なんだか不健康なんだか分かりません。
朝っぱらにも関わらず、良席(かぶりつきの一列目)を確保すべく既に6人前後のおじさん達が並んでいました。
スタッフと思わしき60歳前後のおっちゃんが常連さんと世間話をしています。日焼けした肌に鮮やかな赤い柄シャツがよく映える、ヤンチャそうなおっちゃんでした。全裸監督に出てそうなキャラの濃さです。
並ぶこと約10分。早速開場したので、薄暗く細い階段を3階まで上がっていきました。蛍光灯が切れかかっており、チカ…チカ…と点滅しています。「おいおい…蛍光灯替えようよ」と思う一方で、「だがそれがいい…!」と思わせる味がありました。百点満点の場末感、キライじゃ無い。

とにかく椅子が固い

最前列を確保してから開演までの一時間強、知人と雑談して待ちました。この時点で既に腰が痛くなってきており、先行きが不安に。果たして私はこの固い椅子に5時間近く座っていられるのだろうか…。
1回の公演は約2時間半で、1日に4回も上演されます。入退場入れ替えがないので見たければ朝から晩まで4回全て鑑賞することも可能です。
知人には「僕は1回目で帰らなきゃなのだけど、トリの望月きららさんが素晴らしいから是非とも2回目終わりまで見て帰ってね!」と言われました。1回目と2回目では違う演目で踊ってくれるから、複数回分見て帰るお客さんが多いんだとか。
(折角来たからには仰せの通りにすっぞ!)と腹を括り、腰に鞭打ち座り続けることにしました。

こんな感じの、ほぼ背もたれがないカウンターチェア。数時間これに座り続けるおじさん達はすごい…!私なんかよりよっぽど若く強靭な腰をお持ちだと感じました。

ざっくり、ストリップの仕組み

さて、感想の前にざっくりとストリップの仕組みについて説明したいと思います。

入場料は大体5000円前後。女性客割引きがある小屋が多いです。
出演する踊り子さんは5人。それぞれ15分ほどの持ち時間を与えられており、4曲強の音楽で踊ります。最初は着衣で踊り、曲が進む毎にどんどん脱いでいきます。
選曲や振り付け、衣装に至るまで全てが踊り子さんのセルフプロデュースだそうです。
15分のショーが終わると【ポロライドショー】と呼ばれる撮影タイム。踊り子さん持参のポロライドカメラやデジカメで撮影ができるのです。相場は1枚500円。お客さんの列の長さで、その踊り子さんの人気度が一目瞭然です。撮影の列がなくなると【オープンショー】が始まります。陽気な曲に合わせて踊り子さんがぱっかんぱっかんお股を広げながら客席を煽っていく時間です。ショー本編の時にチラリと見える女性器はエロいエロですが、オープンショーの時に見える女性器は笑えるエロでした。開けっぴろげすぎるとエロはユーモアになるんですね。春画的です。(言いたいだけ)

出演者は10日単位で変わるそうです。踊り子さんは大衆演劇の旅芸人に近い営業形態で、10日単位でストリッパー小屋を転々としていきます。大衆演劇の場合は一ヶ月近くひとつの小屋に滞在しますが、それより短いスパンで移動していくんですね。これは推測ですが、生理周期などの都合もあって10日という周期に落ち着いたんじゃないかなと思いました。ちなみに、衣装や小道具などの運搬費は全て踊り子さんの自腹なんだとか。
知人イチ押しの望月きららさんは、この日「ジャングル」という大きな動物のぬいぐるみを沢山使った演目をやっていたのですが、これらの小道具も全て自腹で郵送してるんだなぁと思うと、営業努力というかクオリティのために必要経費を惜しまない精神がかっこいいなぁと感じました。

因みに開演当初は10名ほどしかいなかった客席でしたが、1時間もすると次第に埋まりはじめ、50名強ほどの程よい盛況っぷりでした。若い女性(多分ストリッパー)が2名、外国人女性が2名、中年女性が3名、若い男性が1名、他は中年以上の男性客でした。

初めてのストリップ体験

実はストリップを見に行くのは、今回で2度目でした。初めて行ったのは大学2年か3年くらいの頃。10年近く前なので記憶も朧げですが、渋谷道頓堀のストリップ小屋へふらりと立ち寄ったのが私のスト客デビューでした。(※ストリップを見る客のことを、スト客と呼ぶ)

その時はおっかなびっくり足を踏み入れ、後ろの方に座ってこっそり鑑賞してました。と言うのも、当時は女性客が私以外誰もいなかったから。男性客の「なんだこの女」「何しにきたんだ?」という目に萎縮しながらの初鑑賞でしたが、羽衣のみを纏って安藤裕子の『のうぜんかずら』で幻想的に踊る姿には何かグッとくるものがあり、気づくと目が潤んでいました。
一人でストリップ見にきて泣いてる女子大生…側から見たら完全に「何かあったの?」って感じですよね(笑)
ええそうです。「男なんて最低」と思いながら、そのくせ男から求められることを求めてしまう、そんな不安定な時期でした。だからでしょうか、自分以上に男性から搾取されている女性を見たかったんです。「女性の裸は美しい」とか「あくまでダンサーであり、性風俗とは一線を画す芸術」なんて言葉を並べたって、どうしたってエロはエロです。男性の踊り子が舞うストリップ小屋が存在しない以上、男性女性の裸を消費し対価を支払うという構図がドッシリと屹立していることは否定のしようがありません。それでも、(ああ。綺麗だな)と感じた。性を消費されながらもなのか、それ故なのか…きっとその両方だったのでしょう。女性の造形は美しい。それを目の当たりにし、思わず涙腺が緩んだんだと思います。

十数年ぶりのストリップ鑑賞

という訳で、今回が私のスト客セカンドバージン喪失でした。
以前より冷静に、かつ最前列で見たストリップは、とても興味深かった…!!
鑑賞中色んなことを考えたのですが、特に思ったのが「ここではなんでも許されている」という感情でした。
もちろん【踊り子に触れてはならない】とか【スマホを取り出してはいけない】などの決まりはあるのですが、そういうことではなく…精神的に、許された空間だなと感じたのです。
特に何が許されていたのかというと、【見る】という行為です。

メイン客層である中高年男性が踊り子さんのステージを見つめるその視線は、まさに童心にかえった少年のようでした。手を伸ばせばその裸体に簡単に触れられるのにも関わらず、ちゃんと言いつけ通りお行儀よく、胸の前で掌を組んでステージを見守る様は、まるで憧れの先生を見つめる幼稚園児のようでした。
ハゲ散らかしたおじさんのイノセントな瞳……そしてそれを観察する私のような好奇心の目すら許容された空間。
【人を見つめる】という行為は、双方の合意が取れてない場合は暴力的ですが、合意が取れてる場面に於いては愛情表現になります。かく言う私は学生時代、「なんか見透かされてそうで怖い」と言われることがしばしばありました。あれって今思えば、人のことを見つめすぎてたからだと思うんですよね。「あなたを知りたい」という好奇心は一種の愛情表現なのですが、一方通行だと怖い。その点、実力ある踊り子さんの【見つめ返してくれる度】はすごかった。スケべな目線も好奇心の目線もすべて受け入れてくれる目線返しができる踊り子さんは、なんの罪悪感も抱かずに鑑賞することができました。

日常から離れた異空間、ストリップ小屋。
たった数千円さえ払えば1日中「ここにいていいよ」と許される場所。
だからお金持ちじゃなくても来れる場所。
見るだけのエロが楽しめる場所。
だからもうムスコが使い物にならないおじいちゃんだって楽しめる場所。
エロだけど、アートでもある場所。
だから女性だって、「エンタメ見る感覚で来た」と言って気軽に来られるようになった場所。
ストリップ小屋は、許しのワンダーランドでした。

特にポロライドショーの際のワンダーランド感は半端なかったです。ショー本編の時間帯より会場全体が明るく、舞台照明ではなく蛍光灯の明かりになるので、急に日常感が出るんですね。なのにそこで始まるのは全裸の撮影会という非日常なんですね。このギャップが衝撃的でした。
他の観客達も見てる前で「もうちょっと足開いて」「頭皮撮らせて」というやりとりが平然と行われる。自分のお股のわずか30センチ先にカメラレンズを向けるお客さんと笑顔で雑談する踊り子さん、そしてその後方に列なすおじさん達。
驚いたことに、私も段々その光景に慣れてきたんです。ポロライドショーの時間ってまぁまぁ長いんですよ。すると次第に、まるで銭湯にいるような感覚と言いますか、「裸の人、そこにいるね」的な気分になってくるんです。
すると不思議とリラックスして、「みんな変な奴らばっかだな、はは」という心境になってきました。勿論、変なやつというのは自分含めです。

踊り子さんの肉体

銭湯などで自分以外の女性の肉体を見たことは何度もありましたが、女性器までは見ないので、「へぇ!色々あるんだな!」という発見もありました。
毛を整えてる人、いない人、外陰部の大きさ色など、千差万別。スレンダーな人からかなり豊満な人、若い人から50歳を超えてる人までいらっしゃいました。
そして意外な発見もありました。【全裸になると大体みんな綺麗に見える】ということです!着衣で登場した時は(あ…この踊り子さんは好みじゃないな)と思っても、裸になるとみんな綺麗に見えた。
セルライトでたるんだ肌も、素っ裸になるとルーベンス的と言えなくもない。

豊満(すぎる)裸婦画で定評のあるルーベンス先生。フェチ全開かよ。

裸にはきっと沢山の情報がつまってて、その肌や髪や肉にその人の歴史を感じさせるからだと思います。どんな人生を歩んで来たのかな、と想像させる。
一糸まとわず秘部をさらけだしてパフォーマンスする彼女らの人生に思いをはせる数分間は、どんなドラマや映画を数十分見るよりよほど濃い体験になるでしょう。


帰宅後、イルミナという女性向けストリップ専門誌を見つけ、早速ポチってみました。気になるストリッパーさんの名前を何人分かメモできたので、いつか彼女たちの公演も見てみたいなと思っています。

最後に、望月きららさんがショーで使ってた、奇妙礼太郎さんの「エロい関係」という曲を貼っておきます。
数曲踊って上気した頬。汗ばんだ肌に張り付いた髪の毛が最高にえっちでした。
https://www.youtube.com/watch?v=-0--MyC4Kzs

奇妙礼太郎さんは存じあげなかったのですが、流れた時めちゃくちゃ声が草野正宗さんに似てて「スピッツ!?」って思いました。メロディーもスピッツっぽいし。
でも歌詞があからさまにエロすぎるからスピッツじゃないなぁとも。や、スピッツもエロいですけど、もっと難解に隠されたエロじゃないですか。
奇妙礼太郎さんの他の曲もいくつか聞いて見たのですが、「エロい関係」以外は歌唱法が違っていたので、多分この曲だけがスピッツをパロディった曲なんだと思いました。

♪まるでフランス映画みたいな〜 詩的な関係〜

って歌詞が最高にクズっぽくて良いぜ。



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