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どハマりしました!「BEASTRS」①〜この作品に惹かれた理由は?テーマは?〜

久々にどハマりする作品に出会えました。
マンガ大賞2018年で大賞を獲った作品、「BEASTARS」です!
どうやら既にかなり有名な作品だったようなのですが、お恥ずかしながら私、存じ上げませんでした…
友人に勧められてまずはアニメから入ったんですが、これがまぁ素晴らしくて!!!夢中になってシーズン1とシーズン2を徹夜で一晩で見倒し、翌朝早速TSUTSYAでコミックを全巻借りてきて、アマプラmusicでサントラを聴き漁りながら読破しました。
いや〜、実に充実した数日を過ごした…!何かにハマるって楽しいですね。
なかなかここまでの温度感でハマれる作品に出会えるのは稀なので、(感覚的に2〜3年に1作品レベル)いい出会いをしたな!という気分です。

さて、まずは簡単にあらすじをまとめてみたいと思います↓

舞台設定は、多種多様な動物達が擬人化された世界。肉食獣と草食獣が平和に共存し、高度な文明社会を築いています。
ある日、主人公のレゴシ(ハイイロオオカミ)が通うチェリートン学園にて、アルパカが何者かに食い殺されるという事件が起こります。
一見平和そうに見えるこの世界ですが、実は差別や偏見に満ちた歪な世界であることが序盤から提示されます。
レゴシ自身はとても優しい青年なのですが、迫力のある大きな図体や鋭い牙を持っており、かつあまり感情を表に出すタイプでは無いため周囲から誤解されがちです。そんなレゴシは「とにかく無害でありたい!」と願い、大人しく日々を過ごしていました。
しかしある夜。人気の無い場所で一匹のウサギの匂いを嗅いだレゴシは本能に突き動かされ、衝動的にウサギに襲いかかってしまいます。
すんでのところで食い殺さずに済むのですが、その夜以降、レゴシは肉食獣としての己の本能と向き合わざるを得なくなり…

というストーリーです。
う〜ん、好きすぎる作品って、短くまとめるのが難しいですね。
もっと短くまとめるとこんな感じでしょうか。↓

ハイイロオオカミ(肉食獣)とウサギ(草食獣)の禁断の恋!

情緒もへったくれもないまとめ方ですが、まぁ一言で言うとこうです。
ではなぜこの作品にそんなにハマったのか、分析してみたいと思います。

1、手垢のついてない恋の障害がまだあった!という衝撃

身分違い、年齢差、性別、国籍、距離・・・などなど、ラブストーリーに必要不可欠な恋の障害。いずれも擦り倒されているため、いかにディティールを変えて他作品との差別化を図るか勝負みたいになってますよね。
が、しかし。そこに来て肉食獣と草食獣の恋!!
そんな恋の障害がまだあったのか!!と驚きました。

2、私は【ディティールがよく詰められている異世界学園物】が大好物

もう単純に好みの問題なんですけど、私、ハリーポッター大好きなんですよ。
ダイアゴン横丁の描写だとか魔法使い家族の食卓の風景だとか、そういうストーリーの本筋に直接的に関係ないとこまで無駄にディティール凝ってる作品に弱いんです。それってだって、想像力だけで一つの世界を新たに創り出してるってことじゃないですか。そういう作品に出会った時、私は作者の人を創造主だなぁと感じるのです。
ディティールがよく詰められている異世界学園物という括りで言うと、貴志祐介の「新世界より」もそうですね。あとディティールの詰め方に関しては一段落ちますが、樋口橘の「学園アリス」も好きでした。

補足になりますが、【肉食獣は強すぎるので草食獣に対して配慮して生きねばならない】ということに反発心を抱くトラやメスオオカミが登場するのですが、(これってハリポタで言うところのスリザリンだなぁ)と思いました。「じきに肉食獣が敬われる時代がくるわ!」と言うメスオオカミは、「魔力を持つ我々が、なぜマグル達に隠れてコソコソ生きねばならんのだ!?」とフラストレーションを抱えるヴォルデモート支持者と重なる部分があります。
強く生まれたことは罪ではないはずなのに、弱者に歩みを合わせねばならない息苦しさ。持てる者、持たざる者、それぞれの苦悩が描かれている点が好きです。

3、キャラがどれも魅力的

そもそもBEASTARSは、「BEAST COMPLEX」というタイトルで連載されていた短編オムニバスでした。各話異なる動物が主人公で、それぞれの動物の特徴を活かした物語が一話完結で描かれていました。これが好評を博したため、主人公をしっかり据えて長期連載化したのが「BEASTARS」だったのです。
そもそも動物という時点で既に各キャラの個性が確立されているので、いい題材選んだなぁ〜と思うのですが、脇役でも1冊書けそうなくらいそれぞれ奥深い身体的特徴と性格を持っている点が本作の魅力だと思いました。
何と言っても主役とヒロインのキャラ設定が素晴らしいです!!箇条書きでその魅力を列挙したいと思います。

主役・レゴシ(ハイイロオオカミ)
・可愛さと格好良さの両立。一途さを拗らせて若干キモいが、それもまた良い。BEASTARSはなんというか、ザ・少年漫画!という感じではなく、人間の心の暗部にもスポットライトを当てようとしているのが良いんですよね。作者の少し斜に構えた性格がいい塩梅で見え隠れする感じが、同じく少々捻くれた人間からすると読み心地が良い。
・基本はピュアで目立たないチェリーボーイなのに、火がつくと途端に雄々しくなるギャップ。周囲からは誤解されがちでその魅力を知る人は少ないのですが、話が進むごとに段々人気になっていきます。なのに謙虚でその人気に無自覚なところもまた可愛い。
・ウサギのことが好きなのに、これ以上一緒にいたら食べてしまう危険性があるから離れようとする描写が切ない。『ダレンシャン』が1巻で妹の首に齧り付きそうにになった時に「もうこの家にはいられない」と悟り、人間としての人生と決別する場面を思い出しました。
・レゴシがウサギを好きになった理由は【遺伝的な異種族恋愛体質だった=フェチ!】と言うのが答えなのですが、それだけじゃあまりにもイレギュラーすぎるので他の理由も考えてみたところ、【相手の掴めなさに興味を持ち、惹かれた】のだということが分かりました。「他の人はきっと知らないけれど、自分だけは彼女のこんな一面を知っている…」という展開。非常に王道なラブコメ的展開ですね。だからこそ、間口の広い人気作になったのだと思います。

①捕食しようとしてしまった申し訳なさが強い感情を最初に抱くきっかけとなる
②それきっかけで相手のことをよく見るようになる
③他の人が気が付かない彼女の美点(弱いようで強い。丁寧に花を育てている。肉食獣の自分を怖がらずに一匹の雄として見てくれた。etc)を知る


ヒロイン・ハル(ドワーフウサギ)
・シルバニアファミリーに出てきそうな可愛い見た目。守ってあげたくなるような小柄さと、愛らしい童顔。にも関わらず!!めちゃくちゃビッチ。誘われればどんなオスとも片っ端から寝る。同性から睨まれイジメられても、そのスタイルを変える気はない。なぜこんなビッチになったかというと、「普段はか弱いウサギとして扱われるけれど、SEXしている間だけは対等な存在になれたと感じるから」だそうです。家庭に問題があった訳ではなく、良識あるウサギのご両親に愛情を注がれて育ったのにこうなったってところが安易じゃなくていいなぁと感じました。
・小さいコマに書き込まれていたのですが、ハルが読んでいた小説が「動物失格」だったんですよね。確かにこの子、人間だったら太宰読んでそうな拗らせ感がある。こういう細かい設定がニクいです。他にも、部屋の片隅に置いてある紙袋に「無印良獣」と書いてあったりと、隅々まで楽しめる作品でした。


あ、あと細かくは書きませんが、主人公とヒロインのラブ以外にもルイ(赤鹿)とのブロマンスも熱いです!!!

似て非なる作品、『ズートピア』

丁度連載が始まった前後に「ズートピア」が公開されたため、BEASTARSはズートピアのパクリだ!なんて声もあったようです。という訳で確認のためにズートピアを見てみたのですが、この2作品は一見似ているようでいて全くの別物だなぁと感じました。

ズートピアのテーマ:種族による決めつけは良くない!
BEASTARS:抗い難い本能を、理性と愛で乗り越える!

肉食獣と草食獣の共存社会という設定は似ているのですが、その設定を使って描こうとしているメッセージは大きく異なっていました。
ズートピアは「ウサギに生まれたって本人の努力や工夫次第で、ハードな肉体労働を伴う仕事にだって就けるよ!」という感じなのですが、BEASTARSの場合は「生まれた種族によって向き不向きはどーしたってあるよね」という感じで、もはや真逆の立場なのでは?とすら思います。
しかし、その上で「他者を理解し、偏見や決めつけのない共存世界を築こう」という結論に行き着くのは共通していると思います。

BEASTARSの1巻でレゴシがヒツジから「レゴシが食殺犯なのでは!?」と誤解されるシーンがあるのですが、これは人間社会にも容易に置き換えられる名場面でした。ヒツジはレゴシの親切を取り違え、偏見故に誤解してしまいます。レゴシの行動が実は優しさだったと知った時に申し訳なさを感じ、それと同時に己の差別感情を自覚する…胸がキュッと掴まれる名場面でした。


既に4000字近く書いたのですがまだまだ語り尽くせないので、次の記事に持ち越したいと思います。
次回は
【どハマりしました!「BEASTRS」②〜アニメと漫画比べてみた編〜】です!

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