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信頼されることは究極の動機づけ

皆さんはどのような時に管理職やリーダーの言動に

 「よし、やってやるぞ」

とモチベーションの昂りを感じるでしょうか。

難しい仕事を「君に任せた」といわれた時ではないでしょうか。新人や若手であれば、「うえぇ…」と思うかもしれません。そこまで自分の能力に自信が持てていないからです。

しかし、経験年数に関係なく、それなりにベテランと呼ばれる人たちは、「任される」ことである程度の強いモチベーションを感じることが統計的にも明らかになっています。

そういえば、私も今なら「ちゃんと結果を出すから、ある程度任せてほしい。」と思うこともしばしばあります。…あれ?私だけってことはないです…よね?

もし、経験年数に反比例してモチベーションが下がっているようであれば、
根っこの部分に自信が付くほどの実績や能力が身についていないのかもしれません。
 
社内マネジメント、主にプロジェクトマネジメントなどにおいては、基本的には「可能性を信じる」ことを強く推奨しています。人間には無限の可能性があり、機会を適切に与えれば誰であってもそれは顕在化するという意味です。

その際の鍵はエンパワーメントです。

エンパワーメントは『権限移譲』と訳されることも多いですが、同じく権限移譲と訳されることの多い"デリゲーション"とはやや意味合いを異にします。単に権限を委譲するだけではなく、最大限のパフォーマンスを出してもらうように適宜支援したり、コーチング〈問いかけにより、相手に考えてもらう育成方法〉による指導を行うのがエンパワーメントの鍵です。「能力開花」と訳されることもあるそうです。

エンパワーメントが求められている背景には、

 ・マネジメントによりスピードが必要になっている
 ・管理職不足のために後継者の育成が急務である
 ・社員の自律性を高め、自主的な能力向上を図りたい

と言った理由が見え隠れします。これらは、多くの職場で取り組むべき課題になっていて、しかも急務となりつつあります。

終身雇用、年功序列などの慣習が長く続いたせいで、ただなんとなくそこにいるだけでも、温情で昇格してしまった時代がありました。この時昇格した人の中には、まともな教育を受けていなかったり、あるいは管理職とはどのようなものかを知らないまま上司になってしまった人もいます。そして、彼らはそうやって昇格してきた都合上、部下や後輩に「管理職とは」を説明できません。

そう言う人たちが上位のポストを占めていくと、いずれ次世代への継承を考え始めた頃に経営者はふと気づくのです。

 「アッー!後継者いなくね?!」

管理者教育が追い付かないために、適任者の不在といった問題もあるでしょう。また、新卒入社から経営者の理念や方針などをじっくりと教育することも困難になっています。


ですが、エンパワーメントはただの権限移譲ではありません。それはただの丸投げです。

 ・本人の力量に合わない権限や責任は逆に委縮させてしまう
 ・組織のビジョンやミッションとのずれが出てくる
 ・上司や管理職が「知らないこと」が出てきてしまうリスクがある
 ・報連相の大原則が疎かになりやすい

といったデメリットが表面化するようでは、逆に組織改革は悪化していることでしょう。重要なことは「100%移譲しない」ことです。

たとえば、今まで「100%上司が判断していた」とします。これでは部下は、自分で考えることをしません。何をどう考えても、上司の言うことに一切反論することを許されませんし、自分の意見を言うことすら意味を持たされません。

かといって、「100%部下に権限を委譲する」と言うのは、ただの丸投げです。それができるなら、その上司は存在自体が不要ということになります。できないからこそ、上司がいて、部下がいるのです。

仮に「30%部下が提案や素案イメージを持ってきて、70%上司がGO/NO GOを決断する」としていたとしたら、この割合を逆転してみるのです。つまり、

 部下の意見や判断をできるだけ尊重する

わけです。部下のやり方に口を出したくなる気持ちは理解できますし、ミスをされると怒りたくなる気持ちもわかりますが、待つ時間やミスも含め、部下の判断を最大限尊重してあげてみてください。

これを繰り返すことで、部下の意思決定力や判断力が養われ、成長へと繋がっていきます。そして肝心なことは、部下の判断を尊重しつつ上司や管理職が良きアシスタントになり、部下の成長にとって良い環境づくりができるかどうかです。

つまり、

 『信じて任せる』+『放置せず支援する』

を共存させることが重要なのです。
 
エンパワーメントができないビジネスパーソンの特徴は、部下や後輩、あるいはアルバイトやパート、外注なども含め、多くの人達を信頼できていないということです。信頼していないからチャレンジングな仕事を与えず、結果として彼らのモチベーションもあがらず、未知/未経験のスキル定着もしにくくなっていくわけです。

逆に、信頼も信用もないまま、チャレンジングな仕事を与え、支援もコーチングもないまま「任せる」と「丸投げする」との違いもよく分からずにすすめ、結果として社内マネジメントが失敗するようでは、すでに組織として何かが修復不可能な状態になっている…ということの兆しと言えます。それだけは避けなければなりません。
 
信頼は相互に循環して好循環や悪循環の構造に至るという特性もあります。

信頼して仕事を任せる
 →フォロワーが自分を信頼してよい結果につながる
 →フォロワーが成長する
 →さらに信頼度が増し、よりチャレンジングな仕事を任せる

これが望ましい好循環です。若いビジネスパーソンにとって、自分よりさらに若い人やアルバイトやパートの人達、あるいは外部パートナーの可能性を信じることは簡単ではありません。最初のうちは結果につながらないことも多いでしょう。

そこで我慢し、適切な支援を与えることこそが、チームの生産性を中長期的に高めるのです。「このくらいはやってくれそう」という直感値の20%UPくらいのハードルを見越して仕事を任せると、任された側も成長することができ、成長してくれたおかげで上司も楽ができるようになり、結局はお互いにハッピーになるのではないでしょうか。

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