内外製区分
なにかしらの生産活動にあたって、外部から適切な品質の資材を「必要な量」だけ、「必要な時期」までに、経済的に調達するための手段である『購買管理』はとても重要な要素です。
その購買管理と密接に関わりあいがあるのが『外注管理』 です。
ソフトウェア開発業のみならず製造業を含む、
なにかを作り、その作ったモノを売っている
業界であれば必ず存在するのが
内作(内製)
外注
の判断やその割合を戦略的に活用することですが、その『外注』を管理するということはモノづくりの一部または全部が、本当に社外の業者に任せて大丈夫かどうかを決めるポイントを押さえると言うことになります。
私たちIT業界の人間は、同じ業界だけでなく数多くの他業界を相手にする関係上、こうした業務知識は知っておいて損をすることはありませんし、むしろ知っておかないと開発活動に支障をきたすことがよくあります。
外注管理をするうえで重要なことは、
『内作にするか、外注にするかを決める活動』
いわゆる『内外製区分(JIS Z 8141-7105)』を決定すること
である、と言われております。
日本工業規格では『Z:その他』区分の中の『8141:生産管理用語』集の1つとして正式に定義されています。
「自分たちで作るか、外部の業者に作成を依頼して購入するか」の区分ですが内外製を決定するポイント…すなわち、外注を利用することによって成功するためのポイントは
の7点をしっかりと管理/把握することだと言われています。
ただ安ければいいわけでもなく、ただ技術力が高ければいいわけでもありません。外注展開をする場合、主にQ・C・Dにかかわることが中心となるのは確かです。
しかし、
納品まで責任を持って活動してもらう
安定供給をしていただく
問題が生じた時に、責任をもって解決にあたってもらう
と言った観点から経営面や営業面も考慮する必要があると思われます。
もちろん与信(財務諸表からの収益性、安全性、生産性等)を分析する必要もあります。なんとなくソフトウェア開発の業界では
社内人材の活用はコスト高
外注利用はコスト安
になるという暗黙の認識がありますが必ずしもそうではありません。
原価(単価)はパフォーマンスに応じて決定されるものです。
よく、
『外注比率を上げて、コストを圧縮しろ』
『外注費が高騰するので外注展開はせず内製化しろ』
といった使われ方をしますが、なぜ「外注の割合をあげないと悪いのか」「外注展開をすることがよくないのか」を現場やチームの人たちに理解していただくことが重要です。
たとえば、エンジニアの平均単価が80万だとして、それらのエンジニアを率いてリーダーシップを発揮してくれる外注がいたら、当然エンジニアよりも高くなくてはいけません。
かと言って1人月あたりの平均単価75万×10人月の仕事を受注したとして、原価90万の外注を10人月利用し続ければ、150万の赤字となってしまいます。
能力が高くても、赤字を容認し続ければビジネスにはなりません。
逆に、単価80万のプロパーを使い続けても50万の赤字になるところを、単価70万の外注に依頼すれば50万の黒字に転換することも可能になります。
外注費に限らず、人件費が増額するということは製造原価が増額することです。ソフトウェア開発業のコストの大半が"人件費"ですから、パフォーマンスとコストのバランス調整はマネージャーの最も重要な仕事の1つになります。
これを無視したマネジメントを行うと、結果的に売上総利益(粗利益)が減額し、引いては営業利益が減額することになります。
製造原価の構成は一般的に、
材料費(=設備維持、環境構築費)
労務費(=人件費)
外注費
その他経費
となっており、当然のように「外注費」「労務費」が増額すると製造原価が増額します。労務費も外注費もどちらも人件コストなのは変わりませんが、人件コストは
単価 × 工数
で算出されますから、各人材のスキルなどによって「どの期間に」「誰(どのコストの人)を」割り当てるのか?と言うコントロールを上手にできなければとても業務や組織の運営は任せられません。
当然のことですが、外注費が増額してもそれ以外の費用(材料費、労務費、その他経費)が外注費の発生費用以上に低減していれば、製造原価は低減されます。
外注展開することは決して損益を悪化させることではなく、外注費が増額した以上に他の経費をコントロールすれば製造原価を低減させることが可能であると思います。
従って、一般的に『調達』と呼ばれる外注管理担当者、購買管理担当者のみならず、生産管理担当者や現場の人繰り担当者(技術部の管理職)の方々は、
損益計算書の構造を理解して仕事をする
損益計算書を頭の中で描きながら仕事をする
ことが重要であると思います。
上図はいい画像が無かったので建築業のものを流用していますが、IT業界におけるスケジュール管理においても同様に大半がガントチャートを用いている関係上、
誰が
何の作業を
いつからいつまで
するのかは管理していると思いますので、担当が決まれば単価が決まり、期間が決まれば工数が決まる以上、プロジェクトの詳細な原価管理は可能なはずです。
その内訳をしっかりと吟味しながら計画時点で赤字確定にならないよう、プロパーのみでは理想通りの運営ができないのであれば、外注利用を検討していく必要が出てくるわけです。
外注管理には、
アウトソーシング(外部委託)
ファブレス(自社で生産設備を持たない経営方式)
OEM(Original Equipment Manufacturer)
といった外部資源を活用した経営戦略も存在します。
ソフトウェア開発においては99%が上記のどれにも該当していないのではないでしょうか。外注を採用している多くのIT企業では派遣契約または準委任契約によって外部業者から人的リソースを提供いただき、プロジェクトチームのメンバーとして活動してもらっていることかと思います。
ごくわずかに優秀な企業の場合だけ、請負契約により外部委託を行っているでしょうが、この場合は発注側の『受入検査』体制をもって正しく評価できないと善管注意義務にも抵触することもあって、自社で品質保証ができる体制がないとあまり採用されていないかもしれません。
ファブレスについては海外ではAppleが有名ですが、国内ではキーエンスが成功を収めており、上場企業における平均年収ランキングは数ある大企業を抑えて常にトップ争いをしていますね。
内外製というのは「なんとなく」で考えるのではなく、「経営」という意味でも「業務の最適性」という意味も、どのように活用すべきかきちんと考えてみてはいかがでしょうか。
そしてそのためには、「単価 = 人の時間当たりの価値」というものときちんと向き合うべきなのではないかと考えています。
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