見出し画像

他プロジェクトや他部署の支援活動から最大限の利益を抽出するためには

プロジェクトリーダーやマネージャーを担う人は、問題が発生し、深刻化した他のプロジエクトの支援を求められることがあります。

実際に、みなさんもそういう依頼や要請を受けたことはありますでしょうか。

ここで言う支援は個別部分的な問題の対処のためにメンバーの1~2名を拠出するようなものではなく、リーダーの指揮、統括するチーム(グループ)ごと、メンバー全員で応援にまわるようなケースを指します。

また、このような応援要請する側のプロジェクトは一般的に社内で主役級の扱いを受けるプロジェクトや、全社を挙げて注力する大規模なプロジェクトなどであることが多いでしょう。

そして支援の要請は、会社としてのまたは部署としてのトップからの指示ということになります。

実際、トラブルプロジェクトが発生すると

①そのプロジェクトだけで数百~数千万の赤字
②解決のために割かれた人員が本来の仕事ができなかった工数で数百~数千万の赤字

が確定してしまいます。後者はあくまで理論値でしかなく、実感が沸きにくいということもあってあまり顧みられることがありませんが、そうした事実を見ると多くのSI事業を担っている企業では中小で年間数千万~1億弱程度、大企業ともなれば数億~数十億程度はかるく棒に振っているのかもしれません。

実際、私が知っている範囲ではある大手SIerのある年では①だけで60億以上と当時の部長級の方に聞きましたから、②の潜在的な機会損失も含めるとおそらくは200億以上となっていたのではないでしょうか。

そうした現場に昔から呼び出されて支援する…ということが多かった私ですが、これは本来

 「自分の進め方の何が悪かったのかを理解するため」
 「自分たちで作っているものに責任意識を持つため」

と言った観点から開発部門内で協力し合って解決しなければ、根本的な問題はずっと残ったままです。ゆえに起きてしまった場合は速やかに鎮火するため、プロジェクト内外に対しても相互に密な連携をとった応援や支援がとても重要な役割を担います。

しかし、こうした支援活動を行うにあたってはいくつかの問題が生じます。

特に、メンバーのモチベーションの低下が重要な問題です。

できれば、要請に応えたくないというのが大方のリーダーあるいはメンバーの本音でしょう。なにせ心身ともに疲弊する可能性が高いことがあらかじめわかっているわけですし、日ごろから口では綺麗ごとを述べていても結局はわが身が可愛いという人も多いでしょう。可能であれば関わりたくないと思う気持ちもわかります。

しかし、会社または部署・部門としての指示ですから応援要請には従わざるを得ません。そうであるなら、プロジェクトへのネガティブな影響をできる限り抑えつつあえて応援要請を受け入れ、しかし応援活動を行うこと(苦境を助けてやること)から何らかの果実(自分たちの利益)を得る…という実利的で柔軟な姿勢で臨むことが重要になってきます。

いわゆる

 ピンチはチャンス!

というヤツです。

誰よりもまずリーダーが腹を括って応援に前向きになる

応援要請が会社や部署・部門としての決定であり、トップからの指示であるからには従わないわけにはいきません。そうであるならリーダーは、腹を括って応援要請を受け入れることが重要です。リーダーがいつまでも応援要請に納得せずグズグズしているとそれは言動に顕れ、メンバーに伝わります。

メンバーにとっても、プロジェクト途中での他プロジェクトのへの応援には喜んで参加するという気持ちにはなれないところに、リーダーの後ろ向きな姿勢が伝わるとますますやる気を失くしてしまうでしょう。

そうすれば応援・支援自体が成立せず、グズグズしているとより大きな被害に発展しかねません。

そうでなくても、応援の作業に身が入らなくなるおそれがあります。これでは社内、部署内での信頼を失ってしまいます。どうせやらなければならないものであるなら、応援の作業はできるだけ早く済ませて元のプロジエクトに戻るのが最上です。そのためには作業に身が入らない状態でダラダラと行うのではなく、正確、迅速に応援作業を完了させなければなりません。

チームのメンバーが、仕事として適確に応援作業を遂行する気持ちにさせるためにまずリーダーが腹を括って応援要請を受け入れ、前向きな姿勢でメンバーに指示することが必要です。


メンバーのモチベーション低下を阻止する

他のプロジェクトの応援にいくことは、現在の活動を強制的に一時中断されることです。そのためメンバーはそれまでのモチベーションを低下させてしまうおそれがあります。

加えて、進行中のプロジェクトを中断してでも他のプロジェクトの応援に行かせるのは、会社や部署が自分たちのプロジェクトに「それほど期待していない」「軽視している」とメンバーが感じてしまうおそれがあります。

それは、メンバーのモチベーションを低下させます。

元のプロジェクトに戻ってもそれほど頑張る必要はないのではないかと考え、作業に身が入らなくなってしまいます。特に、応援先のプロジェクトが主役級の扱いを受けるプロジェクトや全社を挙げて注力するプロジェクトなどである場合には、メンバーは日ごろからそのプロジェクトに比べて自分たちのプロジェクトが脇役的な扱いを受けていると考えているでしょうから一層強く自分たちのプロジェクトの価値が低いと感じ、モチベーションを大きく低下させてしまうおそれがあります。

リーダーは、ブロジエクトを元どおりに着実に進行させるために、メンバーのモチベーションの低下を阻止しなければなりません。


応援活動から本来の作業に戻る際に区切りを付けさせる

応援活動を終えたメンバーの気持ちは沈滞しています。
少なくとも、フレッシュな(または高揚した)気持ちで戻ってくることは稀でしょう。

そこで、応援活動から引きずってきた気持ちを一度リセットさせ、リフレッシュして本来のプロジェクトに取り組めるようにする必要があります。

そのためにリーダーは、メンバーが応援の作業を完了させて本来のプロジェクトでの活動に戻る際に、メンバーの気持ちに区切りを付けさせることが重要です。つまり、応援の作業と本来のプロジエクトでの作業の間でメリハリが付くようにするのです。

それにより、メンバーの気持ちを『再起動』させることを第一義とします。

このとき、単に言葉で「リセットしよう」と伝えても、それほど効果は上がらないでしょう。言葉だけでなく物理的な何か、何らかの行動・活動を伴うと区切りが付きやすくなります。

たとえば、メンバーすべてが参加して何らかのイベントを行うのも効果的ではないでしょうか。リーダーは、チームやメンバーの特徴、性格を考慮して効果的な区切りの付け方を見い出し、適切なタイミングでそれを実行するようにします。

いただいたサポートは、全額本noteへの執筆…記載活動、およびそのための情報収集活動に使わせていただきます。