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売上を理解する

売上、利益、経費、etc.…

経営やお金にまつわる仕事には必ずついて回るキーワードですが、当然リーダー層あたりからこうした観点からは離れられなくなります。そのままマネジメントを忘れお金だけに妄執するようになると、いわゆる無能な管理職や経営層になってしまいがちなのですが、仮に優秀な管理職や経営層になるとしても決して離れることはできない観点となります。

なにせ、プロジェクト運営とは最小単位の経営と大差ないからです。

お金をコントロールする大事さは「QCD」の『C』でも求められていることですので、毛嫌いしてはいけません。

では、そもそも「売上とは何か?」と言うと、分かりやすく言えば、

 商品やサービスを販売することによって得る代金の総額

のことです。もちろん諸経費も込みで販売するわけなので、それらを含んだ総額となります。ここから、さまざまな諸経費(変動費+固定費)と呼ばれるものを差っ引いた額が利益となります。

つまり

 利益 = 売上 - 経費

となります。
利益とは、企業や組織が成長するために必要な栄養分のようなものですから、この利益を一定以上確保するためにも、そのもととなる売上をあげることは企業の使命といってもいいでしょう。

しかし、これだけシンプルだと当然プロジェクトの運営はできません。

みなさんが見積りを行うときには必ず「経費(Cost)」から見積ります。
そうでなくては正しく見積れません。

ソフトウェア開発の場合、経費の大半は人件費(変動費)となります。

人件費とは通常「単価」という形で算出されますが、多くの企業では役割定義ごとに単価が設定されていることでしょう。そして売上とは、この単価(一月あたりでは"月単価"と呼びます)に工数(月単位で算出するのであれば、"○人月"と言う形)をかけたものとなります。

つまり

 売上 = 単価 × 工数 + 諸経費

で算出されるわけです。もちろん、諸経費の中には機器販や旅費、宿泊費等、他にも経費として積む分はいくらでもあるかも知れません。

そして、経費の観点からこれらをできるだけ正確に予測する作業を"見積り"と言います。工数とは作業量を表す概念のことで、次元で表すと 工数 = 時間 × 人 となります。
工数を表す単位には慣例的に秒、分、時、日など時間の単位がそのまま使われますので、

 "○人日"(ある仕事を1人が従事するのに、要する日数)
 "○人月"(ある仕事を1人が従事するのに、要する月数)

といった使われ方が一般的です。

この工数は作業見積り…つまり「実際に必要とする人の数と時間」から算出するためこれがそのまま経費となるわけです。これによって「実際にどの程度(経費が)かかるのか」を算出するからこそ、そこから「これが売上の最低ラインとして、ここからどの程度利益を生み出すか」が検討できるわけです。

仮に、単価60万の人が2ヵ月従事するとして

 見積金額 = 60万 × 2人月

とした場合、これをこのまま提出してしまうと、1ヵ月働けば60万、2ヵ月働けば120万稼げるということになります。

しかし、このままだと単価=原価ですので、

 利益 = 売上(見積金額) - 経費(≒原価)

ですから利益は±0となってしまいます。
そこで、利益を向上するための対策としてすべての企業では

 ①単価UP(売上を上げる)
 ②原価DOWN(経費を下げる)

という単純な2択を考えることになります(その他、工数に上乗せして売上をあげる企業も多いと思いますが、その方法はそもそも「見積根拠を崩す」行為でしかありませんので個人的にはあまり推奨しません)。

①単価UP

これは一言でいうと「付加価値を高める」方法です。

単価60万分の仕事しかできない要員をあてがう際、お客さまに「なんとか単価引き上げてもらえませんか?」と言っても当然上げてくれるわけはありません。60万の価値には60万の対価・・・当たり前のことです。

稀に常軌を逸して交渉するようなケースを見かけますが、プライベートで考えるとおかしいことが良くわかります。100円のお菓子を200円で売ってる店があったらみなさんは買いたくなるでしょうか。恐らく十中八九は買いたくはならないことでしょう。

そもそも単価60万と言うことは、1日あたり3万円分の仕事(の価値)を創出しないとなりません。そう考えたとき、みなさんは定時で「帰ろうかな?」と思った際にその日の仕事の成果に対して「3万円分の仕事を完遂した!」と胸を張って帰れますでしょうか。しかも、毎日。毎月。毎年。

そう考えると、単価交渉がいかに難しいかが良くわかります。

まずそこに従事する人が毎日3万円分の価値を創出しなければ、月あたり60万を請求する資格もないということだからです。エンジニア個々人が能力向上を図り、生産性を高め、価格に相当する価値を創出、提供し続けない限り、見合った対価は支払われるわけがありません。

ちなみに、給与と言うのは給与3倍則と言う言葉があるように、概ね稼いできた売上の1/3~2/5程度が給与となることを意味しています。

給与=人件費

私がここ10年程従事していた「品質保証」部門を含む間接部門(販管部門)の場合は「稼いでくる」ということ自体ができませんので、相当する価値を会社または従業員に提供し続けることが求められていることになります。

そのことを考えれば、ただ漫然と「仕事の中で努力する/頑張る」ではなく、「仕事で価値提供できる能力を鍛える」ことがどれほど重要であるかがわかってくることでしょう。

②原価DOWN

こちらは平易に考えると、思いつくのは「外注を活用する」です。

支払う費用を自分たちの単価より低く設定し、単価>支払う費用とすることで経費を抑える方法です。IT業界のみならずゼネコン業界などでも一般化している「多重下請け構造」はそうやって利益をあげるために行われた各企業の知恵といってもいいでしょう(まぁそのせいで迷惑をこうむるのは従業員やお客さまなんですけど)。

2000年頃から流行ったオフショアはこの流れのスケールアップ版と言えます。
こうすると、

 利益 = 売上(工数 × 単価) - 経費(人件費 + 外注に支払う費用)

分の利益が確保できるようになります。

しかし、外注活用には大きく2つの懸念が昔から言われ続けてきました。

  • 技術流出(または、正社員の技術修得の機会損失)

  • 企業文化の違いによる、予期せぬトラブル

後者は、オフショアなどで散々痛い目に逢ってきている企業も多いのでよくわかっている人もいるかもしれません。特に国文化や風習が異なるところへ仕事を依頼するのに、依頼する当の担当者たちは「日本風でおしつけるだけ」でいいと思っているのですから
失敗が増えるのは自明の理です。

中長期的に見た場合、②の選択は必ずしも企業のためになっているとは言えないケースもあります。目先の利潤としては比較的容易に達成できる理想的な手法であったとしても、正規社員の人材育成や技術修得、文化醸成などを遅延させる原因も多様に含むからです。

ですから、機械的あるいは単純作業として外部を利用することはあっても、コア技術の習得を『したくない』『(やりもしないで)できない』からといって外部に依頼することになるとその場限りの小銭しか稼いでこれなくなり、中長期的には企業が先細っていくことになるリスクも高まっていきます。

要は使いどころですが、②はそのあたりをしっかりと理解している管理者のみが正しく活用できる比較的高度な選択肢と言えます。

しかし、実はこれら以外にももう一つ、トップエンジニアや優れた管理者がよく実践する手法があります。それは

 仕事を効率化する

という手法です。

この方法は個人でも集団でも実践可能です。
個人の場合、自分に問いかけてみてください。

「今行っている作業は、世界中を見渡して
 『これ以上効率化できない』くらい効率的な手法か?」

もし「Yes!」と即答できなければ、それはなにかしらまだ改善の余地がある証拠です。

もちろん改善には「自分一人でできること」と「会社あるいは組織として取り組まなければならないこと」があるでしょうが、少なくとも個人レベルで限界まで改善しきれていない人には他人に何かを要求する資格はありません(いわば、GiveはしないくせにTakeばかり求めるような人だからです)。

仕事の効率化には、大別して

 ・ツールを使う
 ・仕組み化する

といった方法がありますが、どちらも本質的に同じ要素として属人化しないことが大前提とされます。属人化しないということは、「方法(やり方)を伝えることで、誰でもできる」ようになっているということです。習得に多少時間がかかるとしても「特定の誰かでなければできない」をなくすということです。

その"ツールを使う"うえで最も有効な手段が「適切なITシステムの導入」といえるでしょう。

そして、"仕組み化"とは当初のプロジェクト計画の際に行うものとしています。

 ・役割と権限と責任の設定
 ・ルールの策定
 ・基準の定義
 ・手順の明確化
 ・そしてそれらの共有 etc.

こうすることによって、一人ひとりがスムーズに仕事に従事できるようにすることが理想のプロジェクトマネジメントとされています(いきなり完璧を要求するのは無理でしょうから、改善を繰り返しつつ行う"PDCA"の概念が盛り込まれているわけですね)。

それを無視して誰かに依存した属人化は、そのまま組織活動において爆弾を抱えることになります。人一人ダウンしただけで組織活動が回らなくなると言うことだからです。

最初から、そんなことを想定した仕事の仕方というのは絶対にあってはなりません。
それは

「今現在(自分)さえよければ
 次代なんてどうでもいい」

と言っているのと変わらないからです。
どんなに苦しくても、属人化だけは絶対に避けねばなりません。

だから「自分だけが知っている」「自分でなければできない」と言って尊大になるのは、社会人として失格であると自ら公言しているのとかわらないわけです。

この先、人の流動性が高まった社会では絶対に通用しなくなっていくことでしょう。すでに転職率の高いアメリカなどでは、属人的な進め方など絶対に認められません。ゆえにプロセスアプローチが当たり前になっているわけです。

目の前に立派な模範があるのですから、日本もこの先できるだけ早くそのことに気づいていち早くプロセスアプローチを導入・徹底した企業だけが生き残っていくのかもしれません。

たとえば、こうしてnoteを利用して個人が持っている知識や情報を"誰でも閲覧できる"ように提供しているのも、知識の属人化を回避する1つの解決法です。

「売上を上げる」「利益を出す」と一言でいっても、そうすることについて深く考え、かつそれを実現するリソース(人材)の成長を視野に入れておかないと、

 目の前に餌が転がる → 食いつく

を繰り返しているだけでは事業の継続は図れないのではないでしょうか。

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