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ブラックか否かの判断基準

ブラック企業という言葉がありますが、私が新人だった1996年前後にはまだ存在しない言葉でした。この言葉が生まれたのは2001年。当時の2ちゃんねるで生まれた言葉と聞いています。

この頃はITブラック四天王なんて言葉もありました。

 富士ソフトABC
 ソフトウエア興業
 トランスコスモス
 東京コンピュータサービス

もちろん今では当時と全く異なる企業となっているところもあると聞いています(ホントかどうかは知りません)。そういえば2年目に四天王へと転職した同期がいましたけど彼は元気なのでしょうか…。

また、ブラックだからという理由ではありませんでしたが、その四天王の一角であるソフトウエア興業が破産したときは業界的にも一部で騒然としたものです。

このニュース直後には一部で

富士ソフトABC「ソフトウエア興業がやられてしまったか…」
トランスコスモス「ククク……奴は我ら四天王の中でも一番の小物」
東京コンピュータサービス「倒産するなどブラック四天王の面汚しめが」

なんてアテレコまで流行ったものです。懐かしい。

ブラック企業とは必ずしも

 「従業員を過剰に働かせる」

だけの存在とは限りません。生産部門の従業員としても、その従業員をサポートする間接部門の従業員としても改めてブラックの定義と言うものを知っておく必要があります。

なぜなら、今のご時世を生き抜く企業であるためにコンプライアンスを理解し、徹底することは最低限の義務として今一度強く認識する必要があるからです。特に上場企業であればなおさらです。

ブラック企業とは社員に何かしら無理を強いるだけでなく、必ずと言っていいほど法令に違反しています。

 「法令を知らなかった」

と言う人もいますがそれはまったく、これっぽっちも言い訳にはなりません。なぜなら

 「知らなかったら、何をしてもいいのか?」
 「知ろうとする努力をしたうえで、知らなかったと言っているのか?」

という質問に対して、YESと言える権限も資格も持っていないためです。


ブラック企業を見極めるにはどこが基準となるのでしょうか?

一概に「ブラック企業」と言ってもその判断は「解雇」「賃金不払い」「労働時間超過」「ハラスメント」「いじめ」などの側面から判断することになるため、その基準は膨大です。さらには企業体質ではなく部門体質や上司裁量で実施しているケースも多く、非常に多岐にわたると言えるでしょう。それでもあえて基準を設けるのであれば

 残業時間についての基準
 労働条件についての基準
 人事権についての基準
 ハラスメントについての基準

がポイントとなってくるかと思います。これらの基準に対して「どこまで基準を設けるか」ではなく、「どこまで基準を徹底させるか」でもなく、

 「どこまで基準に抵触しなくて済むプロセスを構築できるか」

がその企業のブラック度合いを測る指針となるのではないでしょうか。ゆえに経営者や管理職がこのことにどこまで真摯に向き合って、自ら姿勢を見せつけているか。これが大きなポイントとなってきます。

日頃、売上や利益しか見ようとしていないようでは、口先でどれだけ綺麗事を言っていてもおそらく現場では何も反映されていないのではないでしょうか。

総務や人事のような部門が如何に「現在、残業〇時間となっています!注意してください!!」みたいな活動をしていても、そもそも現場が残業をしなくてもいいような計画、プロセス、リーダーシップ、マネジメントとなるよう取り組んでいなければ結局「ビジネス都合」によって板挟みにあい、挙句サービス残業をせざるを得ないような状況に陥ってしまうだけです。

そんなものは何一つ改善できているとは言いません。
所詮ブラック以外のなにものでもありません。


労働問題に詳しい社労士によると、次のようなものがあげられるそうです。

①長時間労働や休日労働が当たり前の社風を持っている
②残業や休日労働をさせるが、適切な残業代の支払い等が無い
③入社3年以内の社員の離職率が極めて高く、偽りの数字を提示する
④過労での病気や休職者、死亡者を出したことがある
⑤業務と関係のないこと(経営者の私事等)にも社員を使用し、手当等の支払いもない
⑥業務上のケガや病気であるにもかかわらず、労災保険を使わず隠している
⑦経費の請求を会社にすることができず、社員が自腹で行っている
⑧求人広告の情報や説明会などでの情報がコロコロ変わり、採用時に採用条件の明示を行わない
⑨社員が自分の意見を言うと、すぐに給与が減額させられてしまう
⑩社員を減給や降格、転勤などによる恐怖で管理している
⑪会社の資金を自分の財布だと考えている管理職または経営者がいる
⑫経営者の個人的判断によってすぐに解雇されてしまう
⑬ミスを犯した社員を、見せしめのために他の社員の前で非難する
⑭就業規則や業務マニュアルが整備されておらず、社員に見せないよう隠している企業、またはそれらの規則等がない
⑮社員のほとんどを管理職にすることで、残業代の支払いをしていない
⑯人事考課が社長一人または数人の幹部のみの裁量で自由に行われている
⑰定時の就業時間にタイムカードなどを打刻させ、その後労働させる
⑱退職が決まった社員に冷たくする、また退職後の社員に必要書類等を交付しない
⑲会社の勝手な都合により、平気で雇止めをする
⑳経営者の口利きで採用され、正規の手続を経ずに入社した社員がいる
㉑国籍・信条などによって採用拒否や解雇などを行う
㉒労働関係諸法令に違反している
㉓労働安全衛生や、個人情報(機微情報)への意識がずさんになっている
㉔労働のルールや仕組みについての説明責任を怠っている

厚生労働省|新規大学卒業者の事業所規模別卒業3年後※の離職率の推移

⑨や⑩などは私が最も嫌うケースですが、だからこそ礼節をわきまえた範囲内でこうしたことにも真摯に対応したいと思っている部分です。

⑬などは、プロジェクトや活動の振り返りを行う際に、「誰の」せいにするのではなく「何が」原因で結果が紐づいたのかを吟味するよう徹底できていなければ一生改善されることはないでしょう。

人に問題がある場合、「人」そのものではなく人の「判断」や「行動」に問題があるのであって、その判断や行動を改めることで結果は改善されるのです。「人」に原因を求める場合は、

 改善しない/改善しようとしない

と言う仕事への取組み意識においてのみ言及されるべきなのです。

もちろん、これらに該当するからと言って即ブラック企業と認定されるものではありませんが、少なくとも過去の判例などからこうした事例がもとでブラック企業としての認定を受けている、と言うことを理解しておきましょう。


ちなみに。
労働関係法令には次のようなものがあります(たぶん1/4ほどは中身もある程度知ってるなぁ)。

労働条件・賃金などに関する法律
・労働基準法
・最低賃金法
・労働安全衛生法
・賃金の支払い確保等による法律

雇用の確保・能力開発に関する法律
・雇用対策法
・職業安定法
・職業能力開発促進法
・障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)
・職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律(労働者派遣法)

保険・社会保険・年金に関する法律
・雇用保険法
・健康保険法
・厚生年金保険法
・労働者災害補償保険法

福祉・財産形成に関する法律
・勤労青少年福祉法
・勤労者財産形成促進法
・中小企業退職金共済法
・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)
・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)

労働組合に関する法律
・労働組合法
・労働関係調整法


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