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エゴはリーダーシップの敵

一般的に組織で昇進するにつれて当然ながら地位や権力が増します。

それは仕事がやりやすくなる利点をもたらす反面、プライドという名の驕りが見え、独りよがりのエゴを助長することにもなりかねません。周囲の人たちは、これまで以上にあなたの話に耳を傾け、頻繁にうなずき、つまらない冗談を大げさに笑ってくれるようになるからです。

こうしたエゴは確実にリーダーシップの妨げになります。

実際には、

 重要な使命や目標を与えられた「役割」があるだけで、
 その「役割」に見合った「権限」しかなく、
 「役割」と必要最低限の「権限」を与えられた以上は、
 その「責任」を全うしなければならない

これが昇進・降格に基づく組織論の本質です。

リーダーシップは「責任」の名のもとにおいて実行しなければならず、その「責任」を果たさせるための必要十分な「権限」がなければ誰も言うことを聞かないし、いうことを聞かないから効果が出ません。

また権限も責任も、役割を果たすための必要最低限となっていなければならず、それ以上あっても害を為し、それ以下であっては成果は得られない…とされています。

部下に「役割」を与える時は、必ず「権限」と「責任」が必要十分であるかどうかを確認しなければ、企業としてあるいは組織としてちゃんと成果をあげることができません。

エゴが肥大化すればするほど、独りよがりの泡の中にいることに満足するようになり、同僚や企業文化、そして最終的にはクライアントとの触れ合いを失うリスクにいっそうさらされることになります。

このダイナミクスについて段階を追って分析するとこういうことです。

 ①人は昇進するにつれ、次第に権力を獲得していく。
 ②周囲はいままで以上に、あなたのご機嫌を取りたがるようになる。
 ③あなたの話に注意深く耳を傾け、より頻繁に同意し、愛想笑いする。
 ④これらすべてがリーダーのエゴをくすぐる。
  そして、エゴはくすぐられると肥大化していく。

元英国外務・英連邦大臣で神経学者でもあるデイヴィッド・オーウェンと、
デューク大学教授で精神医学と行動科学を担当しているジョナサン・デイビッドソンは、この状態を「ヒュブリス・シンドローム(傲慢症候群)」と称しました。「権力、特に圧倒的な成功に関連して、長期にわたって保有されている権力の保持障害」と定義しています。

抑制の利かないエゴは物の見方をゆがめ、価値観をねじ曲げかねません。
先輩やリーダーになった頃からこの症状は出始めます。

たとえば、新人が自分の下に就いた時、みなさんならどうしますか?

自分が新人だった時、知らないことを懇切丁寧に教えてくれる先輩と「これやっといて」と言って放置する先輩の2人がいたとして、それぞれにどんな想いを描くでしょうか。

自分に、"〇〇しても許される"と言う誤解が植え付けられてしまうと、大抵の人は、楽な方へ楽な方へと転がっていくようにできています。これも、先輩やリーダーと言う権限を与えられてしまったことによって発生するエゴの弊害です。そして、「もっと権力を」と渇望するエゴに乗っ取られると、自制力を失っていきます。

 エゴのせいで善悪の判断ができずに媚びへつらう。
 エゴのせいで他人に操られやすくなる。
 エゴのせいで視野は狭まり、態度は横柄になる。
 その結果、価値観に反した行動を取るようになる。
 エゴは、各自が掲げる標的あるいは目標のようなものです。

そしてあらゆる標的の例に漏れず、エゴ自身も大きくなるほど他人から命中させやすくなります。

肥大化したエゴは、他人に利用されやすいものです。エゴゆえにポジティブな注目を浴びたくてたまらなくなるので、逆に操られやすくもなります。エゴがわかりやすければわかりやすいほど、何を求めてどう動くかを他人が簡単に予測できるようになるからです。

この状態が人に知られると、エゴにつけこまれることになります。

偉大に見られたいというみずからのニーズに屈すると、結局は自分自身、周囲の人、そして所属組織に弊害をもたらしかねない意思決定をする羽目に陥ります。肥大化したエゴのせいで態度も横柄になるでしょう。

自分の成功における唯一の立役者は自分自身だと(誤って)信じるとき、無礼さや身勝手さに拍車がかかり、他人の話を遮る傾向が強まります。挫折や批判の矢面に立たされると、この傾向が顕著に現れるというデータもあります。

こうした思い上がったエゴのせいで、誤りから学ぶことができなくなり、心の防壁が築かれて、失敗から得られる豊かな教訓の真価を認めることが困難になるのです。

そして最後に、思い上がったエゴは視野を狭めます。

肥大化したエゴは、自分の信じたい事柄を確認できる情報を常に探すようになります。基本的にエゴが大きければ、強力な「確認バイアス」がかかります。

このため、全体像を見失い、結局はリーダーシップの泡の中に引きこもり、自分が見聞きしたいことだけを見聞きするようになっていきます。その結果、部下たちや自分が属する文化、そして究極的にはクライアントとステークホルダーとの関係を失うのです。

過度に守りを固めていたり、過度に思い上がっていたりする劣悪なエゴから抜け出して、リーダーシップの泡沫を回避することは重要でやりがいのある任務です。それには『無私無欲』、『内省』そして『勇気』が必要となります。

昇給や、個室のグレードアップ、簡単に取れる笑いなど、成功に伴ってエゴが膨張すると、リーダーであることへの不変の答えをあたかも見つけたかのように感じることが多くなります。

しかし現実には見つけてなどいないのです。

人をリードするための万能の"答え"を見つけたと信じたときこそ、本当の答えから遠ざかり、見失うことになるでしょう。

リーダーシップの本質は人への働きかけであり、人は日々変化します。「これ」と言った確定的な答えと言うものはありません。エゴの赴くままに見聞きして信じれば、将来得られるはずの成功さえも、過去の成功によって台無しにされるのを自ら許してしまったことになるのです。


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