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「経験」ではなく「応用力」を見る

企業が、あるいは管理職が求めている人材の要素の1つに「即戦力」がありますが、そういった人たちの間で言われている即戦力とは一般的に

 「自分たちが何もしなくても、勝手に動いて、成果を上げてくれる人材」

のことであって、自分たちが楽をするための道具が欲しいと言っているだけに過ぎませんので、まぁよほどのことがない限り無視して良いと思います。

気持ちはわからんでもないですけど「同じことされてうれしいか?」と言われて自分を見直せなければもうそれまでかな…と思うわけです。


だからと言って「即戦力」を養わなくてもいいというわけではありません。本当の意味での「即戦力」は確かに必要です。

ですが、「経験」や「実績」だけでは「即戦力」につながりません。「経験」や「実績」は、あくまで"あるシチュエーション""ある条件下"においてのみ得られたものであって、全く同じシチュエーションや全く同じ条件でなくなった時点で、同じ成果が得られないようなものは「即戦力」とは呼ばないからです。

たとえば中途採用の場合、企業の求める人物像として「即戦力」であることが求められます。求職者も経験した職種に応募する時に使うことが多い言葉かも知れません。では、この「即戦力」とは具体的にどのようなことを意味するのでしょうか。

本当に求められる即戦力

一般的に「即戦力」とは、応募先に入社後、教育・訓練などを行わず業務を行うことができることを言いますが、職場・企業が変わればそれまでの知識や経験が100%活かせるとは限りません。

たとえば「経理事務」と一口に言っても、入社後に行う業務は企業ごとに様々であり、企業の扱う商品や売上金額はもちろん、取引先や職場の環境も違う訳ですから、同じ「経理事務」でも具体的な業務の内容は企業ごとにそれぞれ違います。

ITサービス産業におけるエンジニアリングの場合は特に、前職や前経験が100%活かせる環境と言う方がおかしいのです。なぜなら、ソフトウェア開発におけるプロジェクト活動においては常に

 (プロジェクトの)不確実性

がついて回りるからです。
プロジェクトというものは、2つとして同じものはありません。全く同じものであれば、ただの量産作業…ソフトウェア開発の場合であれば、ファイルをコピペするだけで終わってしまいます。そんな単純なことでは終わらないから、1からチームを組んで、全く同じではない何かをおこなうのです。

全く同じ条件で作る仕様も環境も時間軸も存在しませんし、同じ相手に同じものを売りつけることも絶対にありません。そのため、前職や前経験が100%活かせると言うことは、物理的に存在しません。まぁそれでも技術要素に限って言えば、数年遅れの技術でない限り、活かすことはできると思いますが、それでも100%活かすと言うのは無理でしょう。

常にそれが「当たり前」と言う心構えを以って、経験を活かしつつも、過去とは異なった如何なる条件にも対応できるフットワークの軽さを磨いておかなければ、即時戦えるような力は宿りません。

では、具体的に即戦力と言うのは何かというと、以前の経験を活かして、現在の環境に適用させることのできる

 「応用力」

の有無や適用範囲の広さを指しています。

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どんなに経験を積んでも、どんなに過去に輝かしい実績を持っていても、環境、条件、人間関係、etc.…何かが変わった時点で使い物にならなくなるようでは、ただ過去を踏襲しているだけで新しい環境において即戦力として期待することはできません。これはむしろ同じ経験を積めば積むほどリスクが増加します。


つぶしの利く人材になろう

こうしてできた人材を

 つぶしがきかない

人材と呼ぶことになります。「つぶし」とは、金属製品のように、溶かして別の物にすることができる・再利用することができる状態を指します。つぶしがきかない、と言うのは、もう一度潰し、溶かして、別のものに再構築や再利用することができない状態、すなわち、再利用性がないと言う状況を指すのです。言い換えれば

 既存の特性(スキルや知識、経験など)の応用がきかない

状態を指します。

過去の実績や経験、栄光などにすがっていると、あっという間につぶしがきかなくなります。本当に自身の価値を向上し、かつ維持したいのであれば、1つのことに執着するのではなく、様々な環境、様々な顧客、様々な条件などを経験し、臨機応変な適応力/応用力を身につけなければなりません。

ある特定の業種、ある特定の顧客、ある特定の技術、etc.…しか使えないと言うのであれば、それはもうすでに「つぶしがきかない人材」予備軍の予兆です。もしも、市場や景気の変化によってその条件が1つでも狂った場合、自分自身の価値を捻出することは非常に困難となっていることでしょう。

もちろん、協力会社/外注の人材を選定する場合などでも、実務経験のあるなしにかかわらず、「即戦力」を求める時に見るべきなのは「経験」ではなく「応用力」です。

同じ職種でも具体的な業務内容は企業により様々なので、単にその職種の「経験」があるというだけでは、業務がこなせるという理由にはなりません。業務内容を詳しく・具体的に知ることで、求めるスキル・人物像と自分の経験との「重なり」や「近さ」を知ることができますので、そういった部分に着目できるかどうかがポイントとなってきます。

たとえば

・前プロジェクトで担当した「仕訳伝票」の業務の仕事の経験が、
 今プロジェクトの金銭出納帳の業務に活かせる
・前職で身に付けた「初対面の人とのコミュニケーションの取り方」は、
 顧客提案に活かすことができる
・「生産管理」システムの開発に従事していたため、
 製造業系の一般的な商流や業務知識が豊富で、要求仕様の整理に活かせる

など活躍してもらうのに、どのような経験を活かすことができるかを見ることが大切になってきます。


ちなみに私は、情報のインプットとアウトプットの収集、整理と分析が得意で、かつそう言った活動にばかり駆り出されていたため、様々なシチュエーションにおける豊富な解決ノウハウを持っています。

もちろん、様々な問題や課題に対して、唯一解や最適解であるかどうかはわかりませんが、「何も対策が浮かばない」「何もわからない」と言うケースはまずありません。多くは何かしら提案できるバックボーンがあります。おそらくは全く未経験の業種の企業であっても、ほとんど苦労することなく対応できると思います。

なぜなら、問題解決や課題解決のノウハウそのものは、抽象化してしまえばどの業界のどんな業務であっても変わりませんし、そのために必要なプロセスが滞らない限り必ず真因の特定が可能だからです。"真因(問題の根本原因)"が特定されてしまえば、解決策(是正策)は大別すると2つです。

 ・原因そのものを潰す(発生頻度を下げる)
 ・問題が起きても、困らないようにする(影響度を下げる)

です。どちらかをゼロにできるのであれば、両方対応する必要はありません。片方をゼロに出来さえすれば、被害は発生しないからです。

これを属人的な方法ではなく、客観的再現性の伴う「仕組み」とすることができればそれが一番良いのですが、なかなか機械的な仕組みにすることに抵抗を持たれる方も多いので、あとは少しずつ折衷案を出しながら、落としどころを見つけていくだけです。

私の場合、この抽象的活動に特化して長けているのだと、自己認識しています。

そして、ITとはユーザーの「困った」をソフトウェア開発の力を借りて「解決」するのが仕事です。ユーザーは困っていなければ、決して仕事を依頼しには来ません。ですから、実現方法の違いはあっても、

 課題解決/問題解決

に特化した私のスキルとは非常に相性がいいのかもしれません。結果、この業界か、この業界の業務スタイルと酷似した業界であれば、私はどこでだってやっていける…すなわち「つぶしが利く」のではないかと思っています。

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