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プロジェクト計画の必要性

プロジェクトの計画というと、よく聞こえてくるのが

 「どーせ、計画通りになんて進まないし」

というセリフです。だから疎かにする人が多いし、だからまともなプロジェクト進行になりません。プロジェクトが計画通りにならない理由なんて、大別すれば2通りしかないのに、です。

もちろん、自然現象だとかはちょっと置いときましょう。それらを言い出したら色々と複雑になるので(まぁ、それすらもリスクマネジメントできれば完璧なんですけど)。ちなみに私は、プロジェクト発足当時に必ずリスクをズラズラーっと洗い出します。

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こんな感じで。
これは、年に一度見直しているテンプレートになりますが、このテンプレートを元に、プロジェクトで活用する際にはプロジェクトごとの再検討を行います。

でもまぁ、ここではあくまで人為的な原因だけに絞ります。大きくサマリーすると、究極的には

 1つは、「外的要因によって計画外の事象が発生する」ケース
 もう1つは、「そもそも計画精度が甘すぎる」ケース

の2つしかありません。図にすると色々細かいものは出てきますが、グループ化すれば、「紫三角」と「青四角」に分類されます。

紫三角は「社会・経済のリスク」と呼んでいます。直接的に関わることができない外部のリスクで、プロジェクト単位ではなく、企業単位の経営・業務のリスクを改善することで、一緒に解決していくことができるものが多いのが特徴です。

青四角は、私の中で「経営・業務のリスク」と呼んでいます。直接的に関わることのできる内部のリスクのことで、リスクの大きなものから改善し、プロジェクト運営そのものの品質を一定にする必要があると判断するものです。

前者はいいですよね。法改正だとか、仕様変更だとかそういうものです。コロナ禍もそうでしょう。「外的要因さえ発生しなければ絶対に計画通りに進んでいたのに…」と呼べるようなものです。でも、この場合ってよほどマネージャーがヘタレじゃなかったら期限調整や環境再編、追加請求などの相談がしようと思えばできますよね(お客さまや上司と、あらかじめリスクについて意識あわせをして合意を得ておくことが前提ですけど)。

普通にプロジェクトマネジメントの概念で言えば、「変更管理」に適用すべき事案です。

きちんとマネジメントできるマネージャーであれば、慌てず

 ・影響範囲の調査
 ・類似点の確認
 ・スケジュールやコストの見積り
 ・顧客との調整

を経て再計画するので特に問題は起きません。問題が起きるのは、十中八九「契約や計画が杜撰」あるいは「変更管理を怠って「ハイ、ハイ」言うことを聞いて、スケジュールが破綻する」ようなケースです。

記録をきちんと残さなかったから、あとで「言った、言わない」なんて水掛け論で揉めるのもよくある事例ですね。


一方で、後者の「そもそも計画精度が甘すぎる」ケースでは、

 ・開始早々、スケジュールと進捗が合ってない
 ・メンバーの力量を把握しようとせず、どんどん遅延する
 ・考えていないから「まさか」が発生し、スケジュール通りにならない

と言った計画に対する"甘さ"が原因で、絵に描いた餅となってしまうような問題です。

私の身の周りでも、よくそう言ったことが起きて会話がかみ合わない人がいます。最近だと新人教育を進行しているのですが、緊急事態宣言が出たことがあって、リモートワークをしようと言う話になったんですけど「とにかく早くできるようにならないと」と言って、何も準備ができていないまま無計画に在宅させることばかり急かす人がいたんです。

ちょ待てよ、と。

そもそもリモートワークをさせたいんだろ?
ただ家で遊ばせておきたいだけなのか?

目的は「自宅でも、出社して行える教育課程と同じ水準の教育を進行させる」ことであって、「なにがなんでも家に閉じ込めておく」ことではないだろ?と。

でも、「とにかくやってから考えないと」「早くリモートさせないと」の一点張りで、言うことを聞かないわけです。話になりません。プログラムで言えば、

「異常系はおろか、正常系のアルゴリズムすらできていない状態で
 とにもかくにも実行したい」

と言い出しているようなものです。

計画とは、理想を実現するために、仮説の時点で成功する筋道を立てることです。仮説の段階で成功に至るまでのイメージが描けないなら、実際に行動したところで成功するわけがありません。できるとしたら、それは限られた天才だけです。

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計画の必要性について懐疑的な方は、次のことを自分自身に問いただしてみてください。この時、大前提に「計画は絶対必要であった場合」と仮定して無理やり理由を作ってみましょう。そして、その理由に対してそう思う根拠まで添えてみるのです。

計画は何のために必要なのか?

ここでは、計画することそのものの目的が問われています。

 「本当に必要なの?」
 「無いとダメなの?」
 「必要な意味が分からなければ、そもそも不要ってことだよね?」

と言われているのです。ここで答えが出ないようでは、おそらく計画を作っても意味はありません。

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目的、それは

 成功までの道筋を描き切ること
 その道筋に不安材料を残さないこと、そして、
 それらを記録化し、何度でも見直すことができるようにすること

です。「成功するかどうかはやってみなければわからない」。それは確かにそうなんですが、成功するイメージすらできないもの、その自信の欠片ものないものが本当に成功するものでしょうか?

みなさんの周りで成功した人たちは、始める前にまったくの無計画で実行した人たちばかりでしたか?

この動画では、孫氏が「7割の勝率」について触れています。

 「7割の成功率が予見できれば事業はやるべきだ」

とおっしゃっていますが、その7割は「なんとなく思う7割」ではなく、「絶対にいける7割」でなくてはならないとも言っています。では、その『絶対にいける』という根拠は何でしょう?

孫氏は「理詰めで」と語っていましたが、それが要するに計画的根拠のことを指しています。

「まず、こうするでしょ?
 次にこうするでしょ。
 そうするとこうなるよね。
 仮にならなくても問題はないので、次に進むとするじゃない?
 そしたら、こうすればいいよね。
 そうすれば、最低でもここまでは達成するよね。」
「ここまで押さえられたら、後はもう少し精度を上げていこうか」

と先を予測し、想定外の事案も検討し、そのうえで自らの行動を決めておくのです。そうすると実際にあらかじめ予想していたこと以外の事象が起きない限り、必ず予測通りに進めることができます。というか、そうなるような精度でなければ計画とは呼べません。

幼稚園や小学生、中学生の遠足や修学旅行は、園児や学生がよほど突飛なことをしない限り、ほぼ完璧に遂行されますよね。

てか、旅行計画は乗り物の時間などが分刻みで決められているので、仕事のスケジュールなんかよりはるかに精密にできています。もし、遠足や修学旅行の下見もせず、しおりも作らず、何の準備もしていなかったとしましょう。

みなさんが、学校の先生だとして、無事に遠足や修学旅行を実施し、成功で終わらせることができますか?

私は無理です。
計画があって、初めて成功するものだと思います。

仕事も同じです。

計画があって、初めて自信をもって成功させることができる、と言えるのです。想定外の事態さえも予測し、あらかじめ対処や準備をしておくのです。

少なくとも「計画」を軽視するのであれば、理想通りに行かなかったとしても他責するのは止めておきましょう。どうなることが、あるいはどうすることが理想なのかを考えない、語らないのであれば、周りは誰も理想通りに動いてくれるわけがないのですから。


計画は誰のために必要なのか?

マネージャーのためですか?
それともメンバーのためですか?
はたまたお客さまのためですか?

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答えは、全員のためです。

全員とは、言い換えるとステークホルダー(=利害関係者)のことを言います。わかりやすいところで、「お客さま」「上司」「プロジェクトメンバー」そして「自分自身」が該当しますが、その延長線上には、上司の先にいる企業全体(の収益)だって関わってきますし、外注を使っているなら、その企業にも影響を与えるかもしれません。自分自身に家庭があるなら、その家族にも影響を及ぼします。もちろん、メンバーの家族にもです。

成功するかしないかで評価が変わるなら、成功することで出世やボーナスに影響するかもしれませんし、失敗することで出世の道が遠のくかもしれませんしね。その結果として影響を受ける人たちは、すべてステークホルダーとなります。

どうです、マネージャーとして責任が重いという実感が出てきましたか?

もしも特定の誰かの分だけしかイメージしていなければ、その時点で計画はどこか杜撰になっているはずです。だって、関係者の将来を一切イメージしていないということなのですから。

無計画に進めて、そうそう簡単に失敗するなんて許されません。成功確度は極限まで上げておかなければならないのです。ギリギリまで計画精度を向上させると、当然ながら安心感が出てきます。信頼ができます。

先ほどの旅行の例で言えば、学校側がなんの計画もなく、準備もなく、多くの子供を預かって「就学旅行に連れていく」と言い出したら、みなさんが親御さんの立場だったら、許可しますか?しませんよね?

無計画なんて心配すぎて嫌なはずです。

だから、安心してもらうためにも、入念な下調べをして、精密な計画を立て、ちょっとした想定外のことにも対応できるように配慮し、『しおり』を作成して情報の共有を行い、最大限の安心をあたえるわけです。

これは、プロジェクトに関わるものとしての義務といっても過言ではありません。


計画には何が必要なのか?

じゃあ、計画を進めていくうえで、どんなことを押さえていかなければならないのか?というと、いくつかあります。

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あくまで一例なので、どんな特性のあるプロジェクトか?によっても変わるとは思いますが、最もシンプルなプロジェクトであればこのようになるのが一般的かも知れません(主要なポイントだけしか書き出していませんが)。

とりあえず適当にPowerPointで作っちゃったのでざっと書きましたが実際にはもう少し必要なものもありますね。

たとえば

 ・誰と合意しておかなければならないのか(ステークホルダーの特定)
 ・どんな力量の人材が「いつから」「何人」必要なのか(人的リソース)

とか、

 ・どんな資材、環境が整っていなければならないのか(資源)

とか。基本的に決められることはどんどん決めて、事前にわからない部分を埋めていくのが計画ですが、決める内容によって共有する相手が異なってくるのが上図になります。特に二重丸になっているものは、欠けていると計画とは呼べなくなってしまうので、必須だと思ってください。

たとえば、「何を作るのか」が明確になっていなければ何をすればいいかも特定できず、何をすればいいかがわからなければスケジュールの立てようもありませんよね。もうその時点で計画精度なんてあって無いようなものです。


作られた計画は実際にどのように使われるのか?

意外なことに、計画書を書かせてみても、書いたら書きっぱなしでその後一切使わないマネージャーをたくさん見てきました。それだけ計画を軽視していると言うことです。

ですが、実際には計画はいたるところで利用されなければなりません。

というか、使う気がないならもう計画なんて書かなくていいじゃん、どーせその通りにする気なんてさらさらないんだし…って思いますね。

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実際にはこうしたシーンで活用します。

先ほども言ったように

 成功までの道筋を描き切ること
 その道筋に不安材料を残さないこと、そして、
 それらを記録化し、何度でも見直すことができるようにすること

が計画の本来の目的です。当然、その目的が果たせるような使い方は、最低限するべきです。つまり

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ここは必ず必要になりますね。そして「次の計画精度を向上」させようと思ったら、

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このルートを通さないといけませんね。

PDCAはもう古いなんて人もいるようですが、残念ながらPDCAしなきゃ精度があがることはありません。PDCAを不要と言って、それでも成功する人は一握りの天才か、PDCAをさんざんやり尽くして、新しいやり方にたどり着いた人だけです。

また「顧客との具体的契約内容確認」は、実際にお客さま(スポンサー)との間で、

 「このように進め、成功させ、納品させますよ。」

という具体的な進め方を提示し、安心してもらうものです。あるいはお客さま側にも協力してもらわなければならない場合がありますが、そのような場合に具体的な期日や提供いただくものについて合意を得るためにも、詳細な計画が必要になってくるというものです。


こうした地道な「情報収集(インプット)」と「情報整理」そして、その「情報出力(アウトプット)」を行うことで、計画はより実現性の高い未来予測へと変わっていきます。

逆を言えば、計画なしに実現性の高いプロジェクト進行はどうしても無理です。よほど長年一緒にやってきて、「ツー」と「カー」でコミュニケーションができるメンバーとならできるかもしれませんが、通常はプロジェクトごとにメンバーが変わることの方が多いので、まぁまず無理でしょう。

だからこその「計画」なのだと私は考えています。

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