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ムービングターゲット

多くの場面では、

 「目標設定をすること」「計画をすること」

が重要だと教えられ、その上で行動することを要求されます。これ自体は私も同じように大事だと思っています。

PMBOKなどのプロジェクトマネジメントでも同様に重要性を説いていますし、そもそもPDCAでもそのフレームワークを活かすために最も重要な要素として扱われていますしね。

職場ではもちろんのこと、新年になると増える「夢をかなえる」「なりたい自分になる」というような場でも、目標設定と計画作成が大切だといわれます。

ですがこれは通常の登山のように、山もその頂も移動することなく、地図があって山頂に至るコースも事前に確認できるという状況で有効なもの…と一般的にはとらえられています。今の世の中は多くの不確定要素を抱えていながら変化しており、その変化のスピードもどんどん速くなっている状況だから、そのような状況には良いアドバイスとは言えないのではないか、という意見も多く出てきています。

プロジェクトマネジメントにおいては、先に契約ありきで目標が固定化されることが多いため、なかなかそういった機会に出くわすことはありませんが、それでも仕様変更の1つや2つは必ず発生します。計画を立てたからと言って、計画通りにすべてがうまく進むということは、原則ありません。

そもそも、変化の激しい世の中では、目標そのものがどんどん変わるはずです。地図もどんどん古くなってしまい役に立たないかもしれません。

こうした過ちに陥るのは、そもそもPDCAを基礎レベルしか扱えていないからです。基礎は所詮「基礎」なのですから、当然のことながら実践では適していないことの方が多いはずです。

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多くの場合、PDCAというと上図のようなサイクルを思い浮かべるはずです。実際、教科書的なサイトや書籍であればそのように描いていることも多いでしょう。「PDCAよりOODAだ!」と主張する人たちの多くも、PDCAとはその程度のものだという前提でPDCAを軽視しています。

でも、たぶん多くの人は気付いていません。

これって、少し視座を変えて図にすると、こういうことになるんです。

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プロジェクト中に、一切管理(監視、調整)をしないということです。それってもうマネジメント放棄ってことですよね。最後の最後に評価するまで放置しっぱなしなわけですから。そんなのPDCAフレームワークでも認めると思いますか?

 『ビジネスの常識』

に当てはめて考えれば、そんなことありえるわけがないことがわかります。先ほどのプロジェクトの終了まで「Check」や「Action」を起こさないマネジメントなんてマネージャーや管理職の存在意義を真っ向から否定するようなものです。

どう考えても、ビジネスのフレームワークは定期監視、定期見直しが行われているはずです。つまり

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こうするのが一般的となっているはずです。

どんなにダメなマネージャーや管理職でも、どんなに優れたマネージャーや管理職でも、マネジメントは上図のようなPDCAとなっているはずです。もちろん、「Check」や「Action」を実施しないマネージャーや管理職もたくさんいますが、サイクルとしてはこのようになっているはずです。

それでも問題が多発するのは、このイテレーションサイクルが人によって調整可能な力量の範囲内で行われていないケースが多いためです。つまり

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と言ったマネジメントだったり、あるいは

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といった状態のマネジメントに甘んじて、どんどんリスクや問題を先送りにするために、いずれ許容できるマネジメントを大幅に超えてしまって失敗するわけです。

もちろん、なかには

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と言ったように、評価指標となる「計画」そのものを作らずに適当に進めるマネージャーや管理職も未だにうじゃうじゃいます。

もし、このイテレーションサイクルを

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というようにコントロールできていれば、マネジメントが理由でプロジェクトが破綻することは決してありません。

イテレーションサイクルを決定する目安は

 『自分自身のマネジメントの力量において
  最長何日(何人日)の遅れまでリカバリー/フォローできるか』

に依存します。
たとえば、Aくんが体調不良で2人日の遅れを出したとします。2人日…すなわち16時間分の遅れを取り戻すにあたって、Aくん本人の技量がいきなり劇的に上昇するわけではありませんから、日中はそのまま通常の仕事をしてもらうとして、残業で16時間分を捻出するしかありません。

16時間の残業といっても、深夜残や徹夜、休日残なんかをさせてしまったら、平日日中のパフォーマンスにも悪影響が出て、より遅延が広がるかも知れません。

すると、1日あたり3~4時間程度が限界と言えるでしょう。
3~4時間/日…つまり、16時間分を取り戻すには4~5日かかるということです。言い換えれば

 『1週間かけないと、2人日分の遅れは取り戻せない』

ということになります。じゃあ3日遅れたらどうでしょう。翌週に跨ぐことになりますが、翌週も同じように3日遅れたらどうしますか?そもそも2日以上遅延した理由が「(力量不足や本人のやる気が低いなど)即時改善が難しい」ものであった場合、翌週に楽観的な予測は立てられません。

なんとなく

 プロジェクトマネジメントは週単位で進捗確認
 管理職は月単位で状況確認

するのが当たり前な風土になっている企業が多いと思いますが、本当にそれがあなた方のマネジメントスキルにマッチングした適切な感覚と言えるのでしょうか。

むしろ、私は毎日最新の情報を確認しています。

以前いた会社では、そうすることをアドバイスすると必要以上に噛みついてきて、「できるわけがない」「負担が大きい」「無理だ」と言い張る部課長がいましたが、私はそうは思いません。なぜなら

と思っているからです。

1週間単位での確認となると、一人ひとりの1週間分の進捗だけでなく、ペンディング(保留)にしていた課題や問題の改善状況だったり、その1週間の間に変化があった顧客や他社の状況など、色々なことを一気にテーブルに並べて吟味しなければなりません。しかも、最大で既に5日分も対策が後手に回っている可能性があり、その検討も早急に行わなければならず、とにかく時間がかかります。

ですが、毎日確認する内容って基本的に

 ・昨日確認以降から現在までの進捗誤差の有無
 ・たった1日で解決しなければならなかった課題/問題の状況
 ・新たに発生した課題/問題の有無

しかありません。たった1日、8時間のうちに起こったことだけでいいので情報ボリュームが少なく、その整理や検討にかかる時間も最小で済みますし、なにより発生した課題や問題にリアルタイムに対応できるため、後手に回る負担を最小限にとどめることが可能です。

実際、大きな問題が起きていなければ、日々の確認(監視/コントロール)なんて3分で済みます。

週に一度、何時間もかけて確認、整理、検討、再調整、etc.を行う負担を考えれば、日々数分費やしている方がよほど楽なはずです。楽なうえに、精度が圧倒的に高く、しかも対策コストを最小にできる。これで嫌がる理由が私にはわかりません。


このことは、ムービングターゲットという考え方からもとても重要なことがわかります。

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変化に適宜対応していくためには、イテレーションPDCAサイクルが絶対に必要ですし、そのサイクルの周期をどのように設定するかが成功/失敗の分水嶺になることは間違いありません。

「計画」そのものだけでなく、「目標」や「目的」だって変わることがあるわけですから、そのことを踏まえて計画(地図)はどうあるべきか、どのように活用すべきかを考えられなければ、マネジメントが正しく行えるわけがないのです。

そして地図(計画)が役に立たず、目標が動く状況下で大切になるのは、

 目標を追う行為そのものに「興味」を持つこと

であり、大事なのは自ら目標を追いかけるために必要な工夫や行動を生む「姿勢」や「在り方」です。これは「内発的動機づけ(モチベーション)」に他なりません。

 ・責任があるからやる
 ・大切だと思うからやる
 ・意味があるからやる

というモチベーションです。だからこそ、モチベーションを引き出すことを気分や根拠の曖昧な話に頼るのではなく、技術としてとらえ、その技術を身につけることが大切です。

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