評価されることを考えているうちは、自分の適正はわからない。

初めての転職でベンチャー企業に入社した20代後半。若いうちに、社長も同僚もみんな同世代というオラオラ系ベンチャー組織で働いてよかったことランキングを作るとしたら、上位には間違いなく「自分の適性が知れたこと」が挙げられるだろう。

人からの評価を気にしているうちは、自分の適正はわからない

当時の評価面談で社長に聞かれたことがある。

スダちゃんは、0から1をうみだす開拓者?
それとも、その後ろを歩いて道を馴らす人?

その頃の私は、自分がどのタイプか自分でもわからなかった。
でも、0→1の人のほうが希少性が高いことを肌で感じて知っていたし、希少性があるほうが転職市場で高い価値になることも知っていたので、「0→1の開拓者でしょうかね~」と答えていた。

上位1%にあこがれて

ただし、労働市場の中で、どの人が希少性が高いかというと、それは”0→1”なのです。あくまでイメージだけど、0→1:1→10:10→100=1:9:90の感じだと思う。つまり、”0→1”は全体の1%、”1→10”は9%しかいない。

そう、0→1の人は、新しい価値を生み出す人。組織の1%程度なのだ。

年収でも同じことが言えると思う。
ベンチャー企業にいた当時、「女性で年収600万円を超える人は1%」と言われていた(男性の場合は1000万円超えが1%)。※2007年くらいのはなしです。

当時の私も、上位1%になりたかった。この企業でその金額をもらっている人はたくさんいて、この実力主義の会社で実績を出していければ、年収1,000万も手が届く世界だと感じていた。

「1%しかいないといわれている額を私も稼ぐよういなりたい」という思いと、「1%しかいない希少的なタイプになりたい」というのは、似た話だと思う。というか、1%しかないという希少価値だから、それに見合う額が社会から提示され、その額は結果として1%の人しかもらえていない額、ということでもある。

結果として、私はなれなかった。0→1タイプにも、20代年収上位1%も。
なりたいからなれるものじゃない、このまま続けるのは自分を殺した意地でしかない。ということに、ある時気が付いた。それに気が付いた瞬間、即刻リタイヤするべきだと感じ、レースを降りた。

なりたくて目指すんじゃなくて、気づいたらそうだった。というのが個人の適性。

ここで注意が必要なのは、”0→1”は華やかなイメージがあるからか、”1→10”や”10→100”の人から憧れのポジションに見えやすい。すると、自分は”1→10”なのに、もしくは”10→100”なのに、”0→1”ができる、もしくはできるようになりたい、と誤解したり、チャレンジしようとしてしまう。

まさしくこれ。
私も経験を重ねれば、できるようになると思っていたし、少なくともそのベンチャーでは0→1の人が高い評価をもらっていたから、私も高い評価を得るためにはそうでなければならないと思い込んでいた。
この頃の私は人から高評価されるために日々の行動を選択していたし、転職市場で価値ある人間になることが行動基準の一つだったように思う。

目指して行動したからこそ、違うとわかった

偽りの自分で生きているうちはなかなか苦しいし、今思うと恥ずかしいことばかり・・・。でも、やってみたからこそ、体でわかった。私はこの環境で求められるような0→1にはなれないし、自分に無理にしてまでは、なりたくない。

そう思ったのは、「スダちゃんが来期のマーケティングの責任者ね」って会社に言われた時だった。「嫌だ、絶対にやりたくない」と、即座に感じた。それが上位1%に通じる道なのに。その会社はとても優秀な人が集まっていたけれど、優秀がゆえにコロコロと当たり前のように変わる会社のペースに乗ることに、もう疲れていたのだ。

「この環境にもう疲れた」と自分の気持ちを認められた時、私の強迫観念に似た「1%になりたい」はその程度だったんだ、と気持ちが軽くなったようにさえ感じた。お金は大事だけど、それ以外にも大事なものがある。大切なものの順番が少し見えた気がした。

志向することやチャレンジすることは自由だけども、餅は餅屋、あなたは世界に一つだけの花。自分が最も活躍できるフィールドで活躍することが吉だと、個人的には思う。

私は「1→10」が楽しい

私は「1→10」を楽しむ人だ。
0→1の人が話すアイディアを聞くときは、「それ、現場の運用無視してるよね」とか「いや~●●の側面から見てどうかね」みたいな感じのネガティブなことばかりが浮かんでしまうし、だから尖がったアイディアを押し切る強引さも大胆さもない。

だけど、はじまってしまったことに対しては寛容だ。そもそも0→1タイプの人はアツイ人が多いので、その目的や情熱に共感さえできれば、よりうまくいくためにはどうしたら?とか、多くの人を巻き込むときにどうしたらよいか?という両者に寄り添った感じでバランスよく思考して、どこに調整が必要か、次の手を計画できる。柔軟に動けるジェネラリストになり、より現実的に、より深く、点と点を結びつけることができる。

渦の発生源ではないけれど、できた渦を大きくしていく推進型だ。この仕事の本質は「調整」だと思っていて、私はそれがとてもうまいし、うまくまわったときにはとてもやりがいを感じる。

「一応、Webディレクターと言う名前がついてますが、まあ何でも屋ですよ、ハハハ」

1→10タイプは、はまさしくこれ。
向かう方向は決まっているけど道は見えないって最高。

適性が分かったからといって適所にいられないハナシ

適性が分かったからと言って、自分が適所にいられるかは別のはなしだ。
誰かに適所を用意してもらう年齢は過ぎた。自分で環境を作るか、求めて出歩くかしかない。0→1タイプになれないからこそ、お互いを補っていける。

自分の道を歩こう。自分の適性を楽しもう。


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